第四十三話 (サブリナ視点)
「この度はシーリャ様、私の申し出に快く応じて下さってありがとうございます」
騎士団の裏庭、一番森に近い場所。
そう頭を下げながら、私は内心思う。
……ここまで容易く呼び出せるとは思わなかったと。
「いいえ。全てを話してくれるんでしょう?」
そのシーリャの声を聞きながら、私は顔を上げる。
そこにいたのは、シルドアの時とは違い令嬢の姿をしたシーリャだった。
その姿を見ながら、私は思う。
……どうして、私はこの人に勝てると思ってしまったのか。
シルドアの頃から圧倒的だったが、今のシーリャはまさしく格が違う美しさだった。
そして私は知っている。
シーリャは頭脳の方でも、格が違うと。
そう分かっていて、けれど私はこのまま大人しくされるがままではいられなかった。
そこまで考え、私は思う。
……もう、引き返すことなど無理なのだろうと。
「シーリャ様、これは内密の話にしていただいてよろしいでしょうか」
「ええ。だから、私だけしかいないじゃない」
「……セドリック様がいらっしゃいますよね?」
確証はない。
ただ、ほとんど私はそのことを確信していて、そして正しかった。
「……セドリック様。この場から立ち去ってほしいです」
次の瞬間、その場にセドリックが現れる。
その姿は隠す気のないほど不機嫌で、私は理解する。
……セドリックは、欠片たりとも私のことを信用していないと。
「シーリャ様、無理です」
「いえ、これは命令です」
「ですが」
「大丈夫ですわ。いざという時になればいつもの使いを出しますので」
そう言いながら微笑むシーリャに、セドリックが一瞬目を見張る。
「ですので、使いを探してきてください。シーリャが呼んでいたと」
「……かしこまりました」
シーリャの言葉に、セドリックが去っていく。
そのセドリックの背中を見ながら、私は千載一遇のチャンスが訪れたことに気づいていた。
シーリャの話ぶりを聞く限り、今この場には私とシーリャしかいない。しかし、少しすればシーリャの使いが戻ってくるだろう。
──その前に、全てを終わらせよう。
「本当にありがとうございます。シーリャ様」
そうほほえみながら、私は少しでも効果があるように森の方に近づく。
そして、それを。
──魔獣を呼ぶ笛を取り出した。
「そして、申し訳ありません」
次の瞬間、私は力強く笛を鳴らした。




