第三十四話
「それで、先行きはどんな様子だい?」
サブリナを追いつめた日の夜。
いつも通り、私に進捗を聞きにきた兄様の姿に私は小さくつぶやく。
「……使いなんて出さなくても連絡できてしまうのよね」
「シーリャ?」
「いえ、私の行動もサブリナのことをいえないなと思って」
とはいえ、嘘をついた訳ではないのだが。
「そろそろ何か進展があったのかい?」
「はい。サブリナの不正の証拠を握ったので、近々バロランド伯爵家当主とやりとりすることになりました」
「……ごめん、もう一回言ってもらっていい?」
「サブリナの不正の証拠を握ったので、伯爵家当主とやりとりすることになりました」
私の言葉に、兄様は額を抑えるのが見える。
「まだ一週間も経っていないんだけどね」
「今四日目だから誤差ですよ、兄様」
「……シーリャにこんな話をしてもどうしようもないか。今から忙しくなるね」
そういって、顔を上げた時。
そこにいたのは、フランシスコ家次期当主だった。
「それで、どんな不正だった?」
「わからないです」
「……ほう」
「私が発見したのは確実に不自然なお金の流れくらいです。それを基にサブリナにはバロランド伯爵家との面会、金の流れがわかる書類を要請しています」
私の言葉に、兄様が顎に細い指を当て考え込む。
「……まるで状況がわからないな。シーリャ、君に不正の種類の想像はついているかい?」
「はい」
「ついているのか!」
「確証を得るのはこれからですが」
「……君はサブリナの行っている不正をなんだと思っている?」
「金貸しです」
私の言葉に、兄様が目を見開く。
それもそうだろう。
私だって、想定外だったのだから。
「不正の証拠を探している中、最近バロランド伯爵家が金貸しの後ろ盾になっているのを発見しました」
そういいながら、私も今日の今日までその金貸しのことなど忘れていた。
「今日、事務方の令嬢の書類を処理している中で、雪狼騎士団の金額を超える範囲の計算と、金貸しの利息の計算らしき書類がありました」
それも、大量の書類の中に数枚だけだが。
私でさえ、不正があると知っていなかったら気づかなかったかもしれない。
「……確かに、雪狼騎士団の預かっている金額すべてを金貸しの資金にしたとすれば、その利息だけで莫大な金額になる。だが、そんな大がかりなことをすれば、ばれない訳がない」
「ええ。だから、ある程度儲けた途中で、利息分だけの運用に変更したのでしょうね」
「そうすれば、それ以降の運用で足が着くことはない、か」
話しながら、私の頭に浮かぶのは感心だった。
雪狼騎士団の金の預かりは近年できた仕組みとはいえ、誰も有効活用しようと考えた人間はいなかった。
故に、思う。
「サブリナは、私の知る限り一番の奇才ですね」
兄様も想定していた以上の事態になっているのか、押し黙っている。
「その上で一つ、兄様にお願いをしたいのですが、よろしいでしょうか」
そんな兄様へと、私はにっこりと微笑んだ。




