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真実の愛のその後〜元婚約者に味方がいなかった件〜  作者: 影茸
第二章 雪狼騎士団

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第二十七話

 疲れきって屋敷に帰った後。

 私は少し休むと、フランシスコ家の図書室の中から書類を取り出し眺めていた。

 それはラドリーの婚約者だった時に見ていた、アズドリア伯爵家の書類。

 その事務に関する書類に、私は目を通していた。


「帰ってきて早々に勉強かい?」


「……兄様」


 呆れたような声に顔を上げると、そこにいたのは苦笑した兄様の姿だった。

 その表情には、私へのわずかな心配があることに私は気づいていた。


「今日は大丈夫だったかい、シーリャ」


「いえ、思ったよりきつかったです」


「……ほう」


 その瞬間、兄様の表情が変わる。


「サブリナ・ブロランドを私は軽視していました。あの令嬢は間違いなく才女です」


「……シーリャがそう認めるか」


 私の言葉に、兄様の表情が曇る。


「いくらシーリャといえど、何の情報もなくサブリナの元に行かせたのは間違いだったか」


「おそらくサブリナ側に情報が漏れてますね。一度、部下を精査した方がいいと思います」


「もう狐は捕まえている。……悪かったね、シーリャ」


 申し訳なさそうにそう告げる兄様に、私は首を横に振った。


「いえ。私も久々にいい刺激になったので。でも、何故私を事務方にいれたのですか」


 それは仕事をしながら、私の胸にずっとあった疑問だった。

 確かにサブリナは性格的に、使いにくい人材だ。

 けれど、その能力は決して低くないどころか高い。


「──私を事務方に入れたということは、何かサブリナの弱みを見つけて欲しいからですよね」


「ああ、そうだ」


 その私の言葉を、兄様は肯定した。


「雪狼騎士団の預り金の管理はフランシスコ侯爵家が管理すべきだ。だが、それをサブリナ・ブロランド。いや、ブロランド伯爵家が邪魔している」


「その権限を強引に奪い取るには、サブリナに非が見あたらない、というところでしょうか」


「ああ。実際に、当初雪狼騎士団の金預かりの仕組みは、サブリナ嬢が居なければ回らなかっただろうしね」


「……それならばいっそ、サブリナ嬢に権限を集めるとはならなかったのですか」


 わずかに、顔をしかめて兄様が吐き捨てる。


「──サブリナ嬢がブロランド伯爵家に預かった金額を横流ししていることが判明したからね」


 その言葉に、私は思わず書類から目を上げる。

 ……兄様の言葉が正しいなら、それは重罪だった。


「横領の証拠があるのですか?」


「ああ。ブロランド伯爵家に不明な金の流れがあったことを私が確認している」


「なら、それを理由に権限を凍結すればいいではないですか」


「……それができないから、シーリャを頼ったんだよ」


 兄様の言葉から、これが本題だと理解した私は顔を上げる。


「不明な金の流れはある。だが、預かっている金額に齟齬はなかったんだ」


「え? 確実にブロランド伯爵家は横領しているんですよね。それなのに、預かっている金額は少なくなっていない、と?」


「ああ。まるで、預かっているお金が増えたかのようにね」


「……勘違いの可能性は?」


「ない。この一年、明らかにブロランド伯爵家の羽振りが良くなっている」


「つまり、私にその魔法の理屈を見抜けと」


「ああ」


 その言葉に、私は思わず額を抑える。

 我が兄様ながら、面倒なことを頼まれたものだと。


「……言っておきますが、すぐに解決するとはいえませんよ」


「分かっている。無茶を言っていることもね」


「……本当に無茶だと思っていますか」


「思っているよ。でも、私は自分の妹が世界一可愛くて賢いことを知っているからね」


 そう言いながら、頭をなでてくる兄様に思う。

 ……本当にずるい言い方だと。

 ただ、実のところ私に断るつもりはなかった。


「分かりました」


 そう言いながら、私の頭に浮かんだのは兄様にすり寄るサブリナの姿だった。

 ……理由は分からない。

 ただ、サブリナがああやって、兄様の側に寄るのはいやだった。


「ありがとう、シーリャ」


「でも、本当に時間はかかりますからね!まず、事務方の立場を強くして、サブリナ以上の発言力をもって周囲の令嬢達の信頼も得る必要があるので。手品探しはその次です」


 そう言いながら、私は改めて思う。

 兄様は私にだけ甘いし、どこか過大評価している節がある様に感じる。

 しかし、今回の相手のサブリナは想像より手強かった。

 万が一にでも、勘違いをしないようにしないと。


「分かっているさ。ところで、まずサブリナ以上の発言力を持つまでにどのくらいかかりそうかい?」


「……本当に分かっています?」


 何故かにやにやと聞いてくる兄様に私は不安になりながら、私は口を開いた。


「── 一週間はかかりますからね!」

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