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真実の愛のその後〜元婚約者に味方がいなかった件〜  作者: 影茸
第二章 雪狼騎士団

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第二十三話 長い一日

「ここが、事務方……」


 セドリックが不安を隠せない様子で去り、私は事務方の部屋に通される。

 そこに広がっていたのは、疲れ切った令嬢達が一心不乱に書類を片づける異様な景色の部屋の中だった。

 想像もしなかったその部屋の光景に、私は思わず言葉を失う。


「ようこそ、シルドアさん。私達の仕事場所へ」


 そんな私の姿に、サブリナはにっこりと微笑む。


「これは……」


「ここが雪狼騎士団の事務方。預かった金額を調整する事務方よ」


 その言葉を聞きながら、私は思う。

 ……もしかしたら、私は目の前のサブリナという令嬢のことを見誤っていたのかもしれないと。


「ねえ、貴女この数字はなぁに?」


「っ! さ、サブリナ様!」


「一桁数字が間違っているじゃない? 以前も指摘したはずよね? どうして分からないの?」


 サブリナの指摘に顔を真っ青にする令嬢。

 その光景は、この場所でサブリナが圧倒的なボスとして君臨していることを物語っていた。

 異様な光景の中、私は理解する。

 サブリナの才は親の七光りや、忖度などではない。


 ……その才能は本物である、と。


「それじゃ、貴女にはこれをしてもらいましょうか」


 一瞬あっけに取られた私の前に置かれたのは、明らかに異常な量の書類だった。

 周囲の疲れ切ったどの令嬢でも、処理していないような量の書類。

 それを指し、サブリナは笑顔で告げた。


「さあ、始めなさい」


「待ってください、やり方は」


「は?」


 笑顔のまま、けれど部屋の中の空気は凍り付いていた。


「貴女、ハイド様の秘書よね?」


「はい」


「そんな人間が、こんな書類も処理できないの?」


 それは明らかに無茶ぶりだった。

 何せ、どういう処理をしてこの書類を処理しているのかさえ、私は聞かされていない。

 そんな状況でこんな書類を処理するなど、難易度が高すぎる。

 明らかに、これは初めての新人である私にぶつけるものではなかった。


「何? 私は貴女以上の書類をこなしているんだけど?」


 しかし、私が意見することをサブリナは許さなかった。

 自分の机の上にある、異常な量の書類を私に見せつけ、彼女は笑う。


「この程度の書類もできずに、ハイド様の秘書ができるだなんて。本当に貴女は運が良かったのね、素敵」


 そこで、初めてサブリナの笑顔が消えた。


「今日はこの書類が終わるまで帰ることを禁じるから」


「……はい」


 明らかに他の令嬢より粗末な机に座り、私は隣の令嬢達をみる。

 しかし、その中の一人として私を助けようとする人間はいない。


 そして私の事務方での長い一日が始まった。

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