表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真実の愛のその後〜元婚約者に味方がいなかった件〜  作者: 影茸
第一章 婚約破棄

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/46

第十四話 (バランド視点)

「私はいつからここまで不器用になったのだろうな」


 そう私、バランドが語りかけるのは一枚の絵画だった。

 それはもうこの世にはいない妻の肖像画。

 もう口を開くことはないその絵画の妻へと、私は話しかける。


「……私のしてきたことは娘、シーリャにとって正解だったのか」


 これが意味のない思考である事くらい私は理解している。

 そんな思考をしている位なら動くべきであると思うし、実際私は今までそうして動いてきた。

 ただ、今娘が婚約破棄をしたことで少しだけ、迷っていた。


「アズドリア家の長男が弱いことは理解していたし、こうなることも理解していた。それでも、私はシーリャを止めなかった」


 その決断の責任はシーリャにあり、親である私には介入することはできない。

 そう知っていたから、私はあえて介入することはなかった。

 しかし、それは本当に良かったのだろうか。

 久しぶりに目にした娘の弱った姿に、私はそう自問自答し、しかしすぐに笑った。


「……戻っても同じ道を歩むのに、迷う素振りも意味はないか」


 弱りながら、それでも立ち直りつつある娘の姿を思い出しながら、私は思う。

 娘は私が思うよりもずっと強いと。


 ただ、そう知りながら思ってしまう。

 それでも、もっとうまくやる方法はなかったのかと。


 娘の打ちのめされている姿を見たとき。

 本当は今までの父の姿など投げ捨てて、娘を抱きしめてやりたかった。


「せめて私が話を聞いてやることができていれば」


「大丈夫です、間に合っています父上」


 風情を台無しにする声が響いたのはその時だった。

 次の瞬間、本棚がずれ隠し通路からハイドが姿を現す。


「……ノックぐらいしろ」


「意味がないでしょうに」


 そう半笑いで、ハイドは防音の分厚い扉をたたいて見せる。

 全く音のならない扉を。

 その姿を見ながら、私は思う。

 いつからハイドもこんな食えない青年に育ったのだろうかと。


「父上の教育のせいです」


 心を読むなとばかりににらみつける私に、ハイドは肩をすくめて見せる。

 本当に立派に次期当主になったものだ。

 その姿にいらだちを覚えつつも、同時に私の心には安堵もあった。

 立派に次期当主として、ハイドを育てきったという。


「間に合っている割に、シーリャが婚約破棄を真っ先に相談してきたのは私だったな」


 それはそれとして、やり返すが。

 私の言葉に青筋を立てるハイドの姿に溜飲を下げた私は、改めて口を開く。


「で、私をこの部屋に呼んでまで密会を取り付けた理由は何だハイド」


 そう聞きながら、私は大体の用件が理解できていた。


「父上に一つお願いがあるのと、今後について話し合わねばと思いまして」


「……今後か」


「はい。今回の婚約破棄の後始末。ラドリーの今後について」


 にっこりと笑うハイド。

 しかし、その笑みが激情を覆い隠しているにすぎない事を私は知っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ