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真実の愛のその後〜元婚約者に味方がいなかった件〜  作者: 影茸
第一章 婚約破棄

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第十一話 (ラドリー視点)

「ラドリー、お前は自分が何をしたのか理解できているのか?」


 抑え切れない怒りが漏れた声。

 いつになく厳しい表情の父を見ながら、僕の心にあったのは疑問だった。

 なぜ、こうなったのだろうか、という。


 数時間前、マリシアに想いを伝えたその瞬間は今も僕の中に残っている。

 それは幸せな瞬間だった。

 ずっと思っていた事をとうとう伝えられた。


 ……その想いが残っているが故に、今の僕は地獄にいるような気分だった。

 こうして家族に囲まれて怒られるのは一体どれくらいぶりか。

 その事に対する恐怖は胸の中にある。

 しかし、それ以上に僕の胸にあふれるのは怒りだった。


「なぜ、僕はこんな目に遭わなければならないのですか」


 そう、僕はとうとう自分の思いを達成できたはずだった。

 シーリャに気持ちを伝えることもできず、必死に迷った日々。

 それは僕の中に今も残っている。

 それでも何とか気持ちを伝えられたのにも関わらず、どうして祝うべき家族からこんな目に遭わないといけないのか。


「……お前は自分が当主を失う事も理解できていないのか」


「そんなこと関係ありません! 真実の愛を見つけた僕には覚悟がある! たとえ、当主の立場を失っても僕はマリシアを……」


 ばちん、という音と共に頬に衝撃が走る。

 父に殴られた、と気づいた時、僕の中から怒りは消えていた。

 初めて父に殴られた。

 衝撃に固まる僕に、父は叫ぶ。


「お前は、どうして。お前が当主になるためにどれだけの人が、あの方が」


 それは血を吐くような怒りの叫びだった。

 こんな父は初めてだった。

 何も言えなくなった僕に、父は哀願するような声で告げた。


「どうしてだラドリー。……どうして貴様は、シーリャ様の恩情に応えようとしなかった」


「違う!」


 瞬間、僕は叫んでいた。

 全員が、全員僕にそう叫ぶ。

 全て、シーリャのお陰だと。

 そうでなければ、僕の今の立場はなかったと。

 シーリャの恩情に僕は応えるべきだと。


 ──そんなことありません、全てラドリー様の頑張りです。


 そんな僕を唯一見てくれたのがマリシアだった。

 ずっと、僕の頑張りを見てくれていた女性。

 彼女との未来を得るために、僕は叫ぶ。


「シーリャが何だ! 僕を見てくれたのはマリシアだけ」


 ぱちん、と僕の頬をはたく音が響いた。


「黙りなさい。ラドリー・アズドリア」


 僕の頬を張ったのは、涙を一筋流した母だった。


「これ以上その方を、我が家の恩人シーリャ様を愚弄するのは私が許しません」

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