■第1話
思い付きで書いた作品です
それでも良ければ読んでいただけるとありがたいです
それを見つけたのは、ただの暇つぶしだった。
実家の蔵を片付けることになって、奥の方に積まれていた古い箱や道具を適当に外へ運び出していた。
埃だらけで、ほとんどがもう使い物にならないようなものばかりだったけど、たまに妙に状態のいい物が混ざっている。
問題のそれも、そんな一つだった。
木で出来た、小さな箱。
手のひらより少し大きいくらいで、表面は寄せ木細工みたいに細かく組まれている。色の違う木片が組み合わさっていて、妙に目を引いた。
他の物と違って、ほとんど埃をかぶっていなかった。
「これ、何?」
独り言みたいに呟いて、手に取った。
その時、少しだけ違和感があった。
見た目のわりに、重い。
中に何か入っているんだろうと思って、軽く振ってみた。
……音がしない。
詰まっている感じはあるのに、何も動く気配がなかった。
からくり箱みたいだな、と思った。
表面には細い継ぎ目がいくつもあって、押したり引いたりすれば開く仕組みになっていそうだった。
試しにいくつか触ってみたけど、びくともしない。
やけに固い。
長い間放置されて固着しているのか、それとも——
そこまで考えて、やめた。
別に開ける必要もない。
ただ、なんとなく気になった。
綺麗だったし、捨てるのももったいない気がした。
結局、それだけの理由で、持ち帰ることにした。
自分の部屋の棚の上に置いて、すぐにそのことは忘れた。
その日の夜。
夢を見た。
暗い場所だった。
どこか分からない。
壁も天井も見えないのに、閉じ込められている感じだけがあった。
その中で、音がしていた。
最初は、何の音か分からなかった。
よく聞いて、やっと分かった。
泣き声だった。
子供の。
一人じゃない。
何人も、重なって、ぐちゃぐちゃに混ざって、泣いていた。
近くで聞こえているのに、どこにいるのか分からない。
探そうとした瞬間、足元で何かを踏んだ。
柔らかかった。
目を凝らして見ようとして——
そこで目が覚めた。
喉がやけに乾いていた。
しばらく天井を見たまま、動けなかった。
嫌な夢だった、というだけじゃない。
妙に、現実感があった。
部屋の中は静かだった。
窓の外から、たまに車の音が聞こえるくらいで、いつもと変わらない夜のはずだった。
それなのに、耳の奥に、まだ残っていた。
さっきの泣き声が。
気のせいだと思いたかった。
水を飲もうと思って、ベッドから起き上がった。
そのとき、ふと視線が棚の方に向いた。
あの箱が置いてある場所。
暗くてよく見えなかったけど、なんとなく違和感があった。
電気をつけるか迷って、そのまま近づいた。
そして、分かった。
箱の位置が、少しだけずれていた。
確か、もっと奥に置いたはずだった。
落ちると嫌だったから、棚の端には置いていない。
それなのに、今は——
指一本分くらい、前に出ていた。
自分で動かした覚えはない。
そもそも、触ってもいない。
気のせいだと思おうとした。
でも、どうしても気になって、手に取った。
ひやりとした。
さっきまで触っていたときより、明らかに冷たかった。
……いや。
違う。
冷たいんじゃない。
さっきは、もっとぬるかった。
まるで、人肌みたいに。
その瞬間、変な想像をしてしまった。
これ、中に何かいるんじゃないか。
馬鹿らしいと思って、すぐに打ち消した。
そんなわけがない。
ただの木の箱だ。
そう思いながら、もう一度振った。
やっぱり、音はしなかった。
でも——
気のせいかもしれないけど。
さっきより、重くなっている気がした。
その日は、それ以上何も起きなかった。
ただ、眠りは浅かった。
何度も目が覚めて、そのたびに耳を澄ました。
何も聞こえなかった。
はずだった。
でも、朝方。
ようやく少しだけ眠れたとき、確かに聞いた。
遠くで。
床を擦るような、小さな音。
ゆっくりと、近づいてくる音だった。
ありがとうございました。
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