旅の仲間
旅の仲間
その日の偵察はマモルがブルキング族の集団を全滅させた以外は何も見つからなかった。派遣部隊は『千眼峡谷』を行軍し、マモルたちソール隊は崖の上から部隊と平行に進むことにした。一日目を無事に終えソール隊は野営地を設けた。
「ブルキング族はどこに向かおうとしていたのかしら?」
カオルがマモルに訊ねた。
「さあ、俺たちと反対側に進んでたということは戦場かもしれないな。とにかく俺たちは部隊がこの峡谷を早く抜けられるようにしてあげないとな。後二日もあれば峡谷は抜けられるが、その後は険しい山道になる。伝令鳥に輜重車が通り易いルートを聞いたら、かなり長い道程になるらしい。目的地まで後七日ってところかな」
マモルは説明した。その時ファルがポコの実のスープをスプーンで掬ってマモルの口に運んだ。
「これ沢山飲んでね。栄養が豊富で疲労回復にいいわよ」
ファルはマモルが口を開けたのでその中にスプーンを入れた。それを見ていたカオルは自分もスプーンで掬ってマモルの口に運んだ。
「私が食べさせてあげるわ。ほら、マモル、口開けて」
マモルは素直に口を開けた。
「おいおい、隊長、美人二人に挟まれて面倒見て貰うなんて羨まし過ぎる」
副隊長のウヌスは干し肉を歯で引き千切りながら言った。
「じゃあ、隊長、私も食べさせてあげる。アーンして」
クインクが向かい側からスープの入ったスプーンを差し出した。マモルは苦笑して口を開けた。
「何だよ、クインクも隊長を狙ってるのか?」
カトルが左隣りに座ってるクインクに訊ねた。
「べ、別に…私は純粋に隊長に憧れてるだけです」
クインクが頬を染めて言った。
「おい、あそこに何かいるぞ!」
セクスが地面に置いてあった法剣を構えた。続いて隊員たちはそれぞれ武器を構えて彼の視線の方を向いた。
「何か小さいな。動物の子供じゃないのか?」
トレスが目を凝らして前屈みになって言った。
「ホントだな。白い虎の子供だ」
ドゥオが言った。
「あら、プエルじゃない! こっちいらっしゃい!」
カオルが手招きをした。するとプエルは立ち上がって四足になってトボトボと皆の方に近寄って来た。
「何なの、その子可愛いわ!」
クインクが笑顔で言った。
「お腹空いてるんじゃないか?」
カトルが言った。
「ほら、これ食べなさい」
カオルは金属の皿にポコの実のスープを装ってプエルの前に置いた。彼はそれを慌てるようにして夢中で舌で舐め始めた。
「何だ、お前、何も食べてなかったのか? じゃあこれでも食べろ」
マモルは自分の持っていた乾パンを皿の横に置いた。するとプエルはそれを口に食わえて慌てて貪った。
「あははは! よっぽど腹空いてたんだな」
ウヌスが大声で笑った。
プエルは食べ終わるとマモルを睨んだ。
「何だ、文句でもありそうな顔だな」
マモルは彼を見つめた。
「昼間は良くも虐めてくれたな。お前なんか大っ嫌いじゃ!」
プエルはそう言って舌を出した。
「お前はホントに懲りない奴だな。もっと素直にならないと皆に嫌われるぞ」
「放っとけ! オラは好かれたいなんて思っとらんわ」
「そうか、だったら好きにしろ。俺はそういう奴に興味はない」
「ふん! 好きにするわ、どアホ!」
プエルはそう言ってそっぽを向いた。
その夜は崖を吹き抜ける風も穏やかだった。マモルは疲れで横になるとすぐに寝入ってしまった。ファルはいつものように彼の胸の上で眠ったが、夜中に一度目を開けるとプエルがマモルの横で丸くなって眠っていた。
「ウフフ…」
ファルは小さく微笑んで再び寝に就いた。




