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アルビトリウム  作者: 新条満留
第六章 旅立ち
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同居

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


旅立ち


 険しい山々 風が吹きすさぶ大地

 獣たちが 荒野を駆け抜け 肉を求めて彷徨さまよ

 歌が足取りを軽くする 希望だけが心を支える

 旅人は歩き続ける 遠い目的地を目指して

 

 

同居


 人族が妖獣王バンロウの大軍を撃退したことで大東原には暫く平穏が続いた。しかし妖獣族は大東原の制覇を諦めた訳ではなかった。各地で諸族と妖獣族の小競り合いは続いていた。

 ステラが帰って来たという噂は大東原に様々な形で伝わっていた。しかし誰も正確な情報を知る者はいなかった。それを知っているのは人族の長老修道会とマモルのごく親しい仲間たちだけである。マモルは力を取り戻してきているが、ファルに言わせれば半分くらいだという。そして記憶はまだ殆ど戻っていなかった。

 一方、カオルはファルの話を聞いてから少しの間だけ、おかしくなりかけたが自分らしさを徐々に取り戻していった。そして彼女はあの決心をしてからというもの、力を急速に取り戻していった。それは恐らく彼女が過去の自分を知り、その心の奥底にあった無意識の不安を自覚したことで、自分の問題と向き合うことができたからではないかと彼女は自己評価していた。そして彼女は力を取り戻しつつあることを評価されマモルが隊長を務める憧れの『ソール』隊のメンバーに加えられた。

 マモルとカオルは元の仲睦なかむつましさを取り戻していた。そしてカオルは独身寮を出てマモルの邸に引っ越した。彼は驚いたが、彼女は大きな屋敷に一人で住むというのは良くない、という根拠のない理由を付けて押し切った。ファルは抗議したが、カオルはいくら幻霊であるとは言え人間にもなれるファルが、マモルの彼女である自分を差し置いて二人だけで暮らしているのはおかしい、というもっともらしい理由を付けて強引に引っ越しを断行した。

 しかしカオルとファルは一緒に暮らすようになると、元々馬が合うためか仲良く家事を分担して行い、マモルの心配を取り除いた。二人のことで迷いのあるマモルとしては、一番心に掛けている二人が意気投合して、彼の側を常にウロウロしているというのは複雑な心境だった。でも彼は常に言い争い合っているよりはいいだろう、という前向きな考え方で自分を納得させていた。

 だが大東原は表向きは平穏に見えても、水面下では波乱を含む情勢が着々と進行しつつあった。

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