安らぎの春
過去
人と人が出会う時
互いに想いが生まれる
心に秘めた想いが
時に現在を動かす
過去は現在を変え
現在は未来を塗り替える
安らぎの春
マモルは戦功により長老修道会から『紅星の館』と呼ばれる邸宅を与えられた。それは城塞区で一番見晴らしが良く、大東原が一望できる広々とした高台にある三階建ての大きな屋敷だった。広い高台がそのまま敷地になっていて、その中には広い露天風呂が設けられていた。そこは元々宮殿だったという。これからマモルが快適に住めるように改修工事が行われることになっていた。
彼はカオルを邸に招待した。彼らは玄関を入り大広間を通って、三階にある彼の部屋に向かった。
「こんな邸に住めるなんて羨ましいわ」
カオルは部屋に面した広い露台へ続く扉を開け放った。彼女は露台の端まで歩いて行きそこから大東原を眺めた。
「でも大き過ぎて逆に落ち着かないんだ」
マモルは彼女の隣りに立った。
「そんなの住んでる内にすぐに慣れるわよ。でも、あの戦い振りは本当に凄かったもの。当に英雄って感じ。これはそれに対する当然のご褒美よ!」
カオルは彼の方に顔を向けて言った。
「何だか、カオルからそう言われると照れるよな」
「ウフフ! でも私も嬉しい。そんな英雄が私の彼だなんて!」
カオルは彼の方に向き直った。
「ありがとう。でもカオルも遠くまで使いに行ってたんだろ? お前が同盟を取り付けてくれたお陰で人族は戦争に勝つことができたんだ。お前の功績の方が大きいんじゃないか? 俺はただお前を助けるついでに戦っただけだしな」
マモルも彼女の方に身体を向けた。
「ありがとう、マモル。私はどんなにこの日を待っったことか。もう嬉しくて嬉しくて。私、今とっても幸せよ、マモル」
カオルはそう言って彼の胸に顔を埋めた。
「俺もさ。ずっと会えなくて寂しくて何度も挫けそうになった。でもこうして会えたことが信じられないくらい嬉しいんだ」
マモルは彼女の背中に腕を回して抱き寄せた。暫くそうして抱き合ったが、やがて彼らは向かい合って口づけを交わした。それから二人は互いに見つめ合ったまま動かなかった。
大東原は春を迎えていた。暖かいそよ風が花々の香りを運んで二人を祝福するように包み込んでいた。




