手料理
手料理
マモルとカオルは二人で居住区に買い物に出かけた。マモルはこの城に来てそこで買い物をするのは初めてだった。今夜はカオルが手料理を作ってくれるということになり、その食材を買いに来ていた。
「今まで買い物に出かけたことがないなんて、よっぽど忙しかったのね」
カオルはそのことを聞いて驚いていた。
「忙しかったというより、考える余裕がなかったんだ」
マモルはキョロキョロと店頭の品を見回しながら言った。
「まあ、仕方ないのか。戦い方を覚えなくちゃならなかっただろうし、実戦にも出なくちゃならなかったり、私もここに来たばかりの時はそうだったかも。もう三年以上も前だから余り覚えてないけど…」
「ちょっと待て! 今三年って言ったよな?」
マモルは慌てて彼女の言葉を遮った。
「言ったけど、それが何かあるの?」
「いや…何か…ってことは俺がここに来て一年以上になるってことだよな…」
マモルは思案顔になって何かを思い出そうとした。何か引っ掛かるものを感じた。
「うーん…そうなるのかな…私の一年後にハルカが来た筈だから、あなたはその次の年の同じ日よね? ってことは間違いないわね。うん、一年以上は経ってるわ!」
カオルはそう言ってポンと両手を合わせた。
「ふむ……まあ、いいか。思い出せないってことは大したことじゃないんだろ!」
マモルはそれでも何かが頭に引っ掛かり、それからも時折考え続けた。そして二人は買い物を済ませるとマモルの邸に戻った。
一階にある食堂でマモルとカオルは広いテーブルに向かい合って座った。テーブルには彼女が腕に縒りを掛けて作った料理が並べられていた。彼らは早速それらを頂くことにした。
「凄く旨い! でも初めて食べる味だ!」
マモルは美味しそうに次々とその料理を口に運んだ。
「ここの食材はマテリアと同じ物もあるけど、あっちにない物も沢山あるの。今日はあなたにそんな物を味わって欲しくて私がここに来て覚えた料理ばかり作ったの。あなたにいつか食べさせたいなって思って色々と覚えたわ。あなたが今食べてるのは『ガリヌラのクアメン和え』という名前の料理よ。この世界にいる鶏に似た鳥の肉なの」
カオルは得意そうに説明した。
「へえ、カオルって料理上手だったんだな。マテリアにいた頃は作ってくれたことなかったもんな」
「だって付き合ってたと言ったって一ヶ月くらいだったし、作る機会がなかっただけよ」
「そうだよな。でもホントに美味しいよ、これ」
マモルはそう言ってどんどん口に運んだ。
「お褒めに預かり光栄にございます、ソルジャー殿!」
カオルは戯けた調子で言った。
「あははは!」
マモルは彼女が巫山戯るのをあまり見たことがなかったため可笑しくなった。
「ウフフ!」
カオルも口に手を当てて笑った。
「そう言えばさ、ハルカさんはどこにいるんだ? ここにはいないのか?」
「彼女はエルフ族だからここから遠い南の樹海城にいるわ」
「へえ、彼女はエルフ族だったのか…そう言えばファルがそんなことを言ってたような…言ってなかったような…」
「ファル……あっ、そうだ! 私も思い出した! あなたあの時、妖精みたいなので私のこと直してくれたでしょ! あれは何だったの?」
カオルはずっと訊きたかったことを思い出した。
「それは私のことかしら?」
ファルが突然マモルの肩の上に現れた。




