戦場の二人
戦場の二人
戦場に勝利を喜ぶ雄叫びが上がった。
「ウォオオオ!!!」
「勝ったぁああ!! 敵に勝てたぁあ!」
「ソルジャー、バンザイ!!」
「エイ、オー、エイ!!」
兵士たちは抱き合いながら喜び、武器を天に掲げて涙を流して喜んだ。
導師テオはマモルの方にゆっくりと馬を進めて近づいた。
「よくやったの、マモル。おめでとう、そしてありがとう」
彼は満足そうに微笑んだ。
「いえ、こちらこそ、ありがとうございます。あなたの言う通りでした。お蔭で俺はカオルと会うことができました」
マモルはそう言って軽く下げた。
「いやいや、礼を言うのはこっちの方じゃ。お前がいなかったら、これほどの大勝利にはならなかったであろう。本当にありがとう。私たちはもう引き上げる。お前たちはゆっくり再会を喜び合うがよい。私は城に帰って勝利の報告をして、今夜の祝賀会の準備をしなくちゃならん。もうこの近くには敵もいない。ゆっくりしてから城に帰って来い。それまでにご馳走を用意しておこう」
テオは満足な笑顔を浮かべてそう言うと馬を返して兵士たちに帰城命令を下した。
兵士たちは全員戦場を後にした。いつの間にか辺りは夕暮れを迎えようとしていた。夢幻の台地に霧が立ち込めて辺りを幻想的な雰囲気で包み込んだ。
ファルはいつの間にかマモルと融合して姿を隠していた。戦場にはマモルとカオルだけが残されていた。
マモルはカオルの方に身体を向けた。彼女も彼と向き合った。お互いに歩み寄り何も言わずに暫く見つめ合った。
マモルの頬を涙が伝っていた。彼は今、カオルが『マテリア』でいなくなってから今までの長い時間を思い返していた。
悩み苦しんだ『マテリア』での年月、そして『アルビトリウム』でカオルを捜し求めた月日に起こった出来事がマモルの脳裏を過ぎった。考えてみればカオルと『マテリア』で二人で過ごしたのは一月だけだった。それがマモルの人生を大きく変えた。そしてやっと幸せな時間をこれから築いていける。そう思うと涙が止まらなかった。
カオルも泣いていた。今まで経験したこともないほどに涙が止め処なく溢れてきた。彼女は全身でマモルを感じていた。懐かしさと彼への愛が彼女の中で渦を巻いていた。 「この日をどれだけ待ったことか」
カオルは溢れる思いにそう思うのやっとだった。
「もう絶対に離れない。絶対に! あなたの傍にずっといる。もう恐れるものは何もない。二人だけの時間を過ごしたい。私はあなたについて行く。いつまでも、永遠に!」
マモルとカオルはどちらからともなく抱き合った。強く熱い抱擁だった。言葉はいらなかった。今彼らはやっと一つになった気がした。
「他には何もいらない。必要ない」
二人は互いにそう思っていた。そして彼らは再び見つめ合い、一言だけ言葉を交わした。それだけで十分だった。マモルが口にした言葉は
『ただいま』
そしてカオルが返した言葉は勿論
『おかえりなさい』
二人は口付けを交わした。いつ終わるとも知れない熱いベーゼだった。
『夢幻の台地』の霧が二人を優しく包み込んでいた。
〔第一部 開かれる世界 完〕
〔次章より第二部 波乱の大東原〕




