作戦
作戦
白仙城に集結した三族連合軍に出撃命令が出された。遂に妖獣族が南下し始めたという斥候からの報告があった。『煮炎の洞窟』は白仙城の北北西に位置し、歩兵の進軍速度で七日ほどの距離にあった。
妖獣王バンロウ率いる群れは四万体を超える大軍だった。それに対する連合軍は三万人に及ばなかった。当然のことに苦戦は避けられないと誰もが予想した。進軍は途中で伏兵に合うこともなく予定通りに行われた。そして事前に予想された通り進軍速度から推定される戦場は白仙城の北方の『夢幻の台地』付近になると考えられた。
『夢幻の台地』は朝夕は霧が発生しやすい土地だった。そのために会戦は霧が晴れる日中の方が連合軍には有利になる。それは妖獣族は夜行性の者たちや霧の中でも嗅覚や触角などの器官を使って相手の位置や動作を感知できる者たちが多いからである。連合軍の勝利への鍵は短期決戦しかなかった。長期戦になれば敵が夜襲を仕掛けて来て混乱を来す可能性があるからである。敵と遭遇する時刻を連合軍に有利にするため進軍速度が調整された。
そしていよいよ連合軍の先鋒隊が『夢幻の台地』に差し掛かろうとしていた。先鋒隊を務めるのはエルフ族の『射族』三千五百人の部隊である。『射族』は弓矢や投擲などの遠距離物理攻撃を得意とする種族だった。身体能力に優れ、身軽で反射神経が良く、素早い動きで相手を翻弄する。但しエルフ族は近接格闘戦に弱いという弱点があった。彼らを先鋒隊に配置した目的は弓隊による遠距離射撃で先制攻撃を仕掛けるためである。彼らがそれでどれだけ敵を倒せるかにその後の連合軍の攻勢守勢の展開が決まる。
もしそこで攻勢になればその後方に配置した人族の一万四千人の戦士で構成された騎乗部隊を突撃させて戦局を有利に展開できる計算だった。そして最後尾に配置してあるのが総司令官を務める導師テオがいる本隊である。仙獣族七百人、エルフ族の『精霊』三千五百人、そして人族の魔道士七千人からなる混成部隊で、彼らが後方から騎乗隊を支援して一気に敵を殲滅するという三段構えの作戦だった。
一方、連合軍の斥候の調べでは妖獣族は近接格闘戦を得意とする部隊が先鋒隊を務めるということだった。一万体を超える力性と耐性に優れた『魔狼族』と、やはり一万体を超える『妙術』を得意とする大ムカデの『トビズ族』の混成部隊である。そしてその背後には妖獣王バンロウ率いる本隊が控えている。それは牛の頭部と人の身体を持つ『ブルキング族』のおよそ二万体で構成されている。『ブルキング族』は二足歩行の大きな妖獣で長い柄の大斧を使った攻撃をしてくる。力が非常に強く身体が硬くて普通の剣ではかすり傷程度の傷しか与えられないという恐ろしい種族だった。
台地にあった霧が晴れると両軍は距離を置いて対峙した。これから人族の命運を懸けた一大決戦が始まろうとしていた。




