ソール
ソール
マモルがたちが出陣して一日目の夜、マモル小隊は河原の草叢でキャンプすることにした。太陽は西に傾き空は紅色に染まっていた。ファルはいつものように人型になってテントを張った。彼女は小隊全員分のテントを準備した。
「幻霊って初めて見ました。大きくもなれるなんて。南方の『諸族の城』には沢山いるって聞いたことがありましたが本当にいるんだな」
副隊長で斧戦士のウヌスが言った。
「羽根からテントをを作るなんて信じられない」
金属の長杖を持つ女魔道士カトルが言った。
「導師テオ様が今回はキャンプ用具は要らないって言ってた意味がやっと分かりました」
金色の円形法具を持つ女魔道士クインクが言った。
「私はマモルだけの幻霊だけど、マモルが隊長を務める時は特別よ」
ファルはそう言って隊員たちに微笑んだ。
テントはすぐに用意でき、ファルは地面に魔法陣を張りキャンプ地を外から見えないように隠した。
「一体、どんだけ!! こんな事ができるなんて、エルフ族の精霊みたいだ!」
槍戦士のドゥオは感嘆の声を漏らした。
「私たち幻霊族の力はエルフ族と似てるけどちょっと違うのよ。エルフ族は大昔に私たち幻霊族から分岐して、大東原に移住して自立することを選んだ種族なの。彼らは時代を経るにつれて次第に『霊術』の力が弱まってしまい法具などの道具を使わなければ、自分の能力を引き出せなくなってしまったの」
ファルは再び羽根を抜き取り隊員全員分の食器を並べながら言った。
「そう言えば、そんなことを歴史の授業で聞いたことあるな」
金属の短杖を持つ魔道士トレスが言った。
隊員たちは食事の準備が整うと火を囲んで食事を始めた。
「この干し肉は保存食の割にはまあまあの味だな」
銀の法剣を持つセクスが言った。
「ファルさんありがとう。あなたのお蔭で妖獣たちの夜襲の心配をせずに安心して食事ができます」
水色の瞳と髪のクインクが笑顔で言った。
「ウフフ!」
ファルは彼女に笑顔を返した。
「ところで訊きたいことがあるんだけど、遠征する時は小隊編成が普通なのか?」
マモルはずっと疑問に思ってたことを訊ねた。
「そうだなぁ、敵の規模にも依るけど、大体は小隊編成が多いかな」
緑の瞳と髪を持つウヌスが答えた。
「へえぇ…ということは今回は敵が少ないってこと?」
マモルはウヌスに顔を向けた。
「報告だと敵の数は数百体くらいだって聞いてるけどな」
ウヌスは思い出すように斜め上に顔を向けた。
「ちょ、ちょっと、マジですか!?」
「何で驚くんだ? そんなの少ない方だよ。あんた隊長だろ? しかも幻霊を持ってるってことは『テネレ』の称号を戴いてる筈だ。だったら妖獣王も倒したことのある相当の腕っこきなんだろ? かつて大東原にいた『ステラ』ほどじゃないだろうが、腕っ節を見せて欲しいもんだね」
藍色の目と髪のカトルが言った。
「おい、カトル、隊長にそんな口の利き方するな! それがお前の悪い癖だ。誰にでも突っ掛かるような言い方をする。すまんな、隊長。こいつはいつもこんな感じなんだ。俺たちはあんたのことを少しだけ導師テオ様から聞いた。記憶を失くしてしまったらしいな。どんな事情かは知らないが、俺たちはあんたを信じてる。だからして欲しいことがあったら何でも言って欲しい。あんたの記憶が早く元に戻るように祈ってる」
副隊長のウヌスが笑顔で言った。
「ウヌスの言う通りですよ、隊長。何でも言って下さい! 俺たちは人族の特選部隊『ソール』なんです。『銀狼族』のような雑魚が相手じゃビビったりしません。
砦の兵士たちがやられたのは恐らく不意を突かれたんだと思いますね。それに砦の守備兵は魔道士が多いんです。魔道士は近接格闘戦に弱くて、接近戦に持ち込まれると脆いんです。つまり魔道士は戦士との連携攻撃でその力が初めて発揮されるんです。
今回の戦闘は一般戦術書に書いてある通りの戦い方で大丈夫です。俺たち三人の戦士が前衛に立って盾となり、四人の魔道士が後衛で遠距離攻撃の魔法を繰り出す。まあやってみればすぐに分かりますよ」
茶色い瞳と黒髪のドゥオが言った。
「ありがとう、皆。すまない、頼りにならなくて。俺はきっと昔を思い出す。それまでどうか俺を助けてくれ!」
マモルは涙を浮かべていた。
マモル小隊『ソール』は十数日の行軍の末、いよいよ敵のアジト『猛禽の草原』に到達した。




