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アルビトリウム  作者: 新条満留
第四章 愛戦士
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述懐

述懐


 マモル小隊へ下された命令は銀狼族のアジトである『猛禽もうきんの草原』を急襲し、敵をそこから追い払うというものだった。そうすることで『東森砦とうしんとりで』の防衛線を維持できることになるという。

 マモルは戦争いうものを全く知らなかった。これまで考えたこともなかった。それでも感覚的に『アルビトリウム』の戦争は『マテリア』とは違うという感じはしていた。

 『マテリア』の戦争は人間同士、つまり同族同士の戦いで、主義主張、宗教、そして欲望など内面的な問題で行われる。そして兵器を使用してボタンを押したりや引き金を引いて行われる戦闘だ。

 だが『アルビトリウム』の戦争は弱肉強食の生きるために殺されないために戦っているという生々しい感じがしていた。そして自分の持つ能力ちからで敵と向かい合って行われる戦いだ。

 『アルビトリウム』の戦いが原始的だとは言えないと思った。何故なら個々の持つ能力が『マテリア』の人々とはあまりにも違うからだ。かつて『ステラ』と呼ばれた自分の能力はもしかすると兵器よりも恐ろしい力なんじゃないかと思うこともあった。

 でもそれは生きるために、殺されないために、そして何かを守るために戦っていたと思えた。だからアルビトリウムの人々は彼を待っていた。だったら自分は早く能力を取り戻さねばならない。そしてその上でその強大な能力の使い方を選ばねばならない。彼はそう思った。

 でも今はそこに辿り着くために流れに任せて進むしかない。彼はそう思った。


 この時の彼はそんな述懐をした。だがこの時の彼はまだ知らなかった。本当の自分がどんな過去を背負った存在なのかを。そしてこれからそれを身を以て嫌というほど味わうことになるのかを。それを知る者はこの時には誰もいなかった。彼の過去をよく知るファルでさえも。

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