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アルビトリウム  作者: 新条満留
第三章 アルビトリウムの光
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グラディウス

グラディウス


 マモルはファルから『グラディウス』の力の秘密を教えられた。『グラディウス』はその持ち主の力に応じて強くも弱くもなる剣だという。そして強い力を持つ者が手にした時、『グラディウス』はその力を吸収して力を炎に変えて敵を焼き尽くす武器となる。但し吸収する力が大き過ぎると力が持ち主の身体に逆流し、その命を奪いかねない両刃の剣だということだった。そこでマモルに与えられた課題は『グラディウス』への力の送り方を制御することだった。

 「ふむふむ。大分上達したと思うけど、もう少し力を加減しないといけないわね」

 ファルはマモルを特訓していた。

 「難しいな。振り回しただけで凄い炎が出たり、出なかったりその時の状態が自分でも分からないから困る」

 マモルは剣を見つめながら言った。

 「まだ余裕がないからだわ。きっと雑念が多いのよ。剣を握ったらまず剣から送られて来る敵の規模と強さを感じ取るの。そして今度は無心になって剣にそれを倒せるだけの力を送り込む。そして敵との距離を見極めて剣を振り下ろすの。そうすると敵に向かって適度な火力を打ち込むことができる」

 ファルはそう説明した。

 「理屈は分かるんだけど、なかなか難しいな」

 マモルは苦笑して言った。

 「マモルと剣が一体になることが大切なの。まだあなたが剣の心を読みきれてないんだと思うわ」

 「剣の心か……」

 「今日はもうこれ位にしておきましょう。明日から実戦を通して訓練に入るわよ」

 「いきなり実戦と言うのも怖い気がするけどな。まあ、やってみるしかないか」

 「そうそう、その意気よ」

 ファルは笑顔で言った。

 その日は近くの河岸でキャンプすることにした。ファルは翼から羽をひとつ抜き取るとそれに念を入れてテントを張った。マモルはそれを初めて見た時その力に驚いた。

 「幻霊って凄いんだなぁ」

 彼はそんな感嘆の声を漏らした。テントの中は良い香りがして心地よく暖かかった。彼にはファルの心の暖かさのようなものを感じられた。

 「なあ、ファル…」

 マモルはテントの中でファルが入れてくれたハーブティのような味の飲み物を飲んでいた。

 「なぁに、マモル?」

 ファルは河原で摘んできた花を活けていた。

 「いつも俺の傍にいて大変じゃないか?」

 マモルは気になっていたことを訊ねた。

 「全然。それが幻霊の役目だし特に嫌と思ったこともないわ」

 ファルは花を整えながら言った。

 「そうなんだ。不思議に思ってたことがあるんだけど、幻霊って俺以外の人間に付いているの見たことないんだけど、見えないだけなのかな?」

 「ううん、違うわ。幻霊を授かるには資格が必要なのよ」

 「資格って?」

 「幻霊は『テネレ』の称号を授かった者にだけしか持つことができないの」

 「『テネレ』って何だ?」

 「それは義であり、勇であり、仁であると認められ、そして妖獣の王を一人で倒した者にしか与えられない」

 「妖獣の王……そんな物がいるのか?」

 「妖獣の王は妖獣の群れをを支配しているおさのことよ。この『アルビトリウム』にはそんな妖獣の王が沢山いるのよ。そしてどの王も強力で一人で倒すことは並の戦士では不可能なの」

 「そうなんだ。俺ってそんなに強い戦士だったのか。今はとても信じられないけどな」

 「焦ることはないわ。これから少しずつ力を取り戻せるようになるわ。試練を乗り越えることでそれを早めることができるの。今は早くこの世界に慣れることが大切よ」

 「そうだな」

 マモルはそう言ってファルの羽で作ったマットに横になった。それは寝心地がよく身体が疲れていることも手伝って彼はすぐに寝入ってしまった。

 ファルは幻霊の姿に戻って彼の胸の上で横になった。

 「大変だなんて思うわけないでしょ。あなたが好きなんだから」

 ファルはそう呟くと心地良さそうに眠りに就いた。

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