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アルビトリウム  作者: 新条満留
第二章 アルビトリウムへ
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繋がり

繋がり


 護がファルと出会ってから三日後、真司から彼に電話があった。

 「元気か?」

 真司は元気な声で訊ねてきた。

 「ああ、何とか…」

 護は張りのない声で答えた。

 「何とかって……何かあったのか?」

 真司が心配そうに言った。

 「まあな…ちょっと色々あって頭が混乱してる感じだ」

 「そっか。困ったことがあったらいつでも相談してくれ。一人で悩むのは身体に毒だ」

 護は感動して涙が出そうになった。真司はさらに言葉を続けた。

 「ところで約束だから電話したんだけど、何か用でもあるのか?」

 「おっ、そうだったな」

 護は彼との約束をすっかり忘れてしまっていた。

 「おいおい、忘れてたな。ヒデェな。お前から言ってきたのに」

 真司は不貞腐れた口調で言った。

 「悪かった、悪かった! 謝るよ。それで今日会えるか?」

 護は彼と話して少し元気を取り戻した。

 「ああ、いいぜ。ついでにお前の悩みも聞いてやる」

 「ありがとな! じゃあ、一時間後に駅前で落ち合おう」


 外は残暑が厳しかった。歩いているだけで身体から汗が噴き出して来た。

 「こうして歩いている間もファルはどこかから俺を見ているのだろうか?」

 護はそんな風に思ってキョロキョロと辺りを見回してみたが、どこにも彼女の姿は見つからなかった。彼はあんなに綺麗な女性ひとに見られてるかと思うと気恥ずかしかった。

 彼が約束の場所に近づくと真司はもう約束した場所で待っていた。真司は彼にすぐに気づき手を上げていた。

 「悪かったな。約束忘れててさ」

 護は謝罪した。

 「気にすんな。そういうこともあるさ」

 真司は爽やかに言った。

 「そこのファミレスにしよう」

 護が店を指差しながら言った。

 「オッケー!」

 店の中はエアコンが程よく効いていて汗ばんだ身体に心地良かった。彼らは一番奥のボックス席に向かい合って座った。護は話が話なので食事が終わるまで本題に入るのを避けた。真司はそれを心得ていて彼に話を促すことはしなかった。二人とも食事を終えてコーヒーを飲み始める頃になってようやく護は話を切り出した。

 「お前に話したいことっていうのは実は香のことに関係があることなんだ。俺の悩みというのもそれに関することなんだ」

 護はそこで言葉を切るとコーヒーを口に運んだ。

 「どういうことだ?」

 真司は不思議そうな顔をして訊ねた。

 護はできるだけ彼に理解して貰えるように香の死から今までの経緯を話して聞かせた。護は全てを信じて貰えるとは思っていなかった。しかし少しだけでも真司に分かって貰えればいいという思いで話を進めていった。護は話を極力短くするつもりだったが、思ったより長い話になってしまった。それはどういう訳かこの話に真司が興味を持って質問してきたためだった。

 護は話を終えると真司の反応を窺った。すると真司が意外な言葉を口にした。

 「そうか、そういう事だったのか。あれにそんな秘密があったとは知らなかった」

 真司はそう言ってコーヒーを飲み干した。

 「え?」

 護は不思議そうに彼を見つめた。

 「お前に見せたい物がある」

 真司はそう言うとポケットから何かを取り出してテーブルの上に置いた。護はそれを見て驚きのあまり目を丸くした。それは『クラヴィス』だった。

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