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アルビトリウム  作者: 新条満留
第二章 アルビトリウムへ
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幻霊

幻霊


 護はファルと別れると思考が混乱したまま帰宅した。自分の部屋に入ると彼女が最後に言った言葉を思い出した。


 『クラヴィス』の力で帰すことができるのは一人だけ。それはこの世界に十年間置かれても、その力が働くのはこの世界にそれが来た同じ日だけ。あなたの『クラヴィス』は香のそれと同じ日に来たから、彼女と同じ日に同じ場所に来てくれれば『アルビトリウム』に帰れます。その時に私もあなたと一緒に帰ります。


 そう言えば、さっきの話にあなたのことが出てきませんでしたが、一体あなたは誰なんです?


 私はあなたの『幻霊』です。


 ゲンレイ…って一体何です?


 私はあなたと契約を交わしていて、あなたを守護するのが私の役目です。絶えずあなたに付き従い、あなたをお守りします。

 私はあなたと一緒にこの『マテリア』に落ちて来たんです。でもこの世界に来た時にあなたと引き剥がされてしまって、帰ることもできずにこの世界であなたを見守りながら彷徨さまよっていました。『アルビトリウム』の者はこの世界では姿を自由に消すことができるの。だから必要な時以外は姿を現さないようにしてあなたを見守っていたのです。そして『アルビトリウム』に帰れば、私は再びあなたの『幻霊』に戻ってあなたを守護します。それではその日まで私はあなたの前から姿を消して見守り続けます。


 ファルはそう言うとだんだん姿が薄くなり闇の中に消えてしまった。


 「マジか……」

 護は驚いて暫くの間呆然としていた。

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