疑問
疑問
護の頭は混乱していた。今聞いた話をどう捉えていいか分からなかった。そんな事が現実にあるとはとても思えなかった。悪い夢なら早く覚めて欲しかった。何もかもが分からなくなった。しかし香も遙も現に不可思議な死を遂げている。それでも今の話を信じろというのは無理な話だった。
「少しだけ確認しておきたいことがあるんですが、その『アルビトリウム』という世界に帰るのに『クラヴィス』があればいいとしたら、どうして今まで連れ帰ろうしなかったんですか? もっと子供の内に連れ帰っても良かったんじゃないですか?」
護は怪訝な顔をして訊ねた。
「それはあなたが敵から狙われているからよ。もし子供の内に連れ帰れば、今あなたがこの『マテリア』で過ごしている姿で帰ることになるの。そして本来ならここで一生を過ごさなければ帰れない者を強制的にアルビトリウムに帰す場合は、『クラヴィス』を十年間この世界に置いておかなければならない。この世界の持つ波長に『クラヴィス』を同調させるためにこの世界で十年の年月が必要なの。あまり早く渡してしまったら、『アルビトリウム』に帰った時に身体的に劣っているあなたは妖獣たちの格好の餌食になってしまうわ」
ファルは答えた。
「もう一つ訊かせて下さい。香たちはどうして俺を追って来たんですか? 『アルビトリウム』で俺を待っていても良かったんじゃないんですか?」
ファルは彼の顔をじっと見つめた。
「それは二人ともあなたを愛していたからよ」




