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アルビトリウム  作者: 新条満留
第八章 冥塔の三王
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炸裂する力たち

炸裂する力たち


 マモルたちは扉の前に立った。隊員たちは臨戦態勢になり武器を構えた。

 「いいか、俺が壁を突き破る。この先がどうなっているのかは分からない。皆そのつもりでいてくれ」

 ティグリスが言った。

 「よし! やってくれ、ティグリス」

 マモルが言った。

 ティグリスが少し後退して助走を付けて扉をち破った。壁が消魂けたたましい音をを立てながら崩れ、大きな穴が開いた。彼らの前には塔の大広間が広がり、大勢の妖獣たちが武器を構えて出撃を待っていた。部屋は反対側が霞むほど広く、ほぼ正方形の部屋に見えた。妖獣たちがどれ位いるのか検討も付かないほどウヨウヨと群れていた。少なくとも三、四万はいそうだった。

 ティグリスはそのまま中に突入しマモルも彼に続いた。シンジとアイルは開口部の右側、カオルとハルカは左側にそれぞれ陣取り、前衛のティグリスとマモルの支援に当たった。妖獣たちは思わぬ敵の乱入に慌てて一斉に後ろを振り返ると、マモルたちに向かって突撃して来た。

 ティグリスは躊躇ちゅうちょせず敵に立ち向かって行った。そして左右に蛇行しながら進み、敵を前足で殴り飛ばしながら敵を集め始めた。案の定、敵はティグリスに襲い掛かった。彼の身体は物理攻撃を全く受け付けなかった。彼の周りに夥しい数の敵が群がった。彼はそんなことを気にも留めず敵を殴り飛ばし、踏み潰して敵の中を左右に蹂躙じゅうりんして行った。

 「まさかいきなり敵の本隊っぽい奴らと戦うって、アタイたち運がいいのか悪いのかどっちなんだろね?」

 アイルが言った。

 「さあね、だがこれでゴチャゴチャ考えないで済むってもんだ。覚悟を決めるしかないんだからな!」

 シンジが矢を放ちながら言った。

 「いいねぇ、そういうの! あんた悪くない性格してるよ! じゃあ、アタイは本気だすよ!」

 アイルはそう言って詠唱を始め、双頭の獅子『オルトロス』を召喚した。高さは人の三倍以上はあり、体長はその三倍くらいはありそうだった。立派なたてがみを持ち全身が黄色い体毛で覆われ緑色の炎に包まれていた。

 「…こ、これはまた……凄い物を…こんなのも出せるのか?」

 シンジは閉口した。

 「まあね、アタイが捕まえた奴さ!」

 アイルが得意そうに言った。

 「幻獣って捕まえるのか?」

 シンジが訊ねた。

 「ああ、そうだよ。幻獣族っていう種族がちゃんといるんだ。ずっと南方の火山地帯にね。アタイたち人型はそこで自分の欲しい幻獣を手に入れるのさ。アタイたち人型は幻獣を手懐てなずける魔法を生まれつき持ってる。その魔法が強ければ強いほど、より強い幻獣が手に入れられるのさ。

 幻獣族は本来実体を持たない。アタイたちの物質世界とは違う時空の揺らぎの中に存在してるんだ。でも一度魔法に掛けられたら、召喚に応じて時空を越えて実体化して現れるんだ。たぶん人型でこんな幻獣を持ってるのはアタイだけさ。これがアタイの自慢なんだ」

 アイルは説明した。

 「すげぇな、人型って! 仙獣王があんたたちを寄越した理由が分かったよ。俺も負けてられないな」

 シンジは感服した。

 「さあ、行って来い、『オルトロス』! 妖獣族を蹴散らすんだ!」

 アイルが命じると、『オルトロス』は妖獣族の中に突撃して行った。その足で蹴られた妖獣たちが何十体も宙を舞っていた。アイルはベネヌムを詠唱して敵に向かって放った。彼女の放った毒気の塊が敵の群れの中に飛んで行き、妖獣たちは悶え苦しんで倒れていった。

 シンジも負けずに矢を連射し、時々フレキンベルで数百体の敵を床に沈めていった。

 カオルは自分の周りに物理攻撃防御用の無数の盾を発生させた。万一、矢が飛んで来た場合の対処のためである。

 魔道士は火、水、土系の三種類の魔法を出すことができる死角のない魔法攻撃の専門家である。カオルは狭範囲攻撃を連射しながら広範囲攻撃をその中に織り込んだ。広範囲魔法は体力を消耗するため何度も撃つことができないからだ。広範囲魔法の種類は三種類、敵の頭上に炎の雨を降らせる『ディメントフラマ』、敵を凍結させて粉砕する『コキュートス』、そして敵の頭上に巨大な岩石を落とす『アダマント』である。今彼女はこの三種類の攻撃を駆使することができた。それら全てを使えるのは魔道士の中でも彼女だけである。しかし、彼女がまだ思い出せずにいる究極の魔法がある。彼女はまだその存在を知らなかった。

 ハルカはカオルの隣りに立って前衛の支援をしていた。そしてカオルと同様に物理攻撃防御用の風の盾を自分の周りに生じさせた。霊型は回復や支援魔法を得意とするが、風や雷撃による攻撃もできる。ハルカもカオルと同じように狭範囲攻撃に広範囲攻撃を組み入れた。広範囲攻撃の種類は二種類、既に発したことのある『テンペスト』と敵の頭上に雷撃を落として感電死させる『トニトルス』である。攻撃力ではカオルに劣っても回復や支援もできる万能性という観点では彼女の方が上である。

 プエルはある意味幸せであった。恐ろしい戦場で怖い体験をしながらも世界最高峰の戦い方を見ることができる。力が全ての弱肉強食の世界アルビトリウムでは、こうした体験は生き抜くためにはとても重要なことだった。

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