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アルビトリウム  作者: 新条満留
第八章 冥塔の三王
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ティグリスの力

ティグリスの力


 洞窟の中は奥に進むに従って冷たい空気と悪臭が強く漂い始めていた。地面は歩き心地の悪いゴツゴツとした岩肌だった。

 「後ろから何か近づいて来るわ!」

 カオルが言った。小さな叫び声が聞こえてきた。マモルたちは振り返って武器を構えた。

 「何で後ろから……?」

 マモルがそう言った時、今度は洞窟の奥から、再び彼らに向かって近づいて来る足音が響いていた。

 「しまった、挟み撃ちか!」

 マモルは焦った。

 「隊長は後ろを俺が前を守る!」

 ティグリスが言った。

 「分かった!」

 マモルはそう言って、エンシャソードに力を送った剣身が激しい炎に包まれた。カオルとハルカはそれぞれ背中合わせに詠唱を始めた。シンジとアイルも背中合わせになってそれぞれ前後を警戒した。

 「…ぁぁぁあああ!!!」

 マモルの前から聞こえてくる声は何か泣き叫んでいるようだった。

 「子供か…?」

 声の主の姿が視界に入って来た。プエルだった。

 「ウワァアアア、マモルぅ!!」

 プエルは泣きながら彼の胸に飛び込んだ。

 「お前…どうして…付いて来たんだ。城にいなくちゃ駄目じゃないか!」

 マモルは困り顔で言った。

 「お前を助けに来てやったぞ!」

 プエルは涙目で言った。

 「泣き叫びながらか?」

 マモルは苦笑した。

 「隊長、こっちは本物だぞ! 皆構えろ! それも今度はかなりの数だぞ」

 ティグリスが言った。沢山の足音がもう近くまで来ていた。

 「ギョイイイ!!!」

 甲高い威嚇するような叫び声が響き渡った。彼らの視界におびただしい数の先ほどの小魔人たちが見えてきた。カオルとハルカはそれぞれ炎と風を繰り出した。数十体の小魔人たちの身体が炎に包まれ、風に身体を切り裂かれ、或いは吹き飛ばされて洞窟の壁に叩き付けられた。それでも続々と後から小魔人たちが彼らに向かって来ていた。

 ティグリスは彼らに向かって走り出した。彼の四本の足は炎に包まれていた。一蹴りで身体三つ分は進んでいた。

 小魔人たちは彼に向かって弓を放ってきた。だがそれらは全て彼の硬い身体に弾かれて突き刺さることはなかった。彼は前足で敵を殴り飛ばしながら敵中へ進んで行った。剣を持っていた小魔人たちが彼に斬り付けていたが、彼の身体に傷一つ負わせることができなかった。はたから見ているとプルボッコにされているようにみえる。でも彼のお蔭で敵は彼の周りに群がりマモルたちの方には近づいて来なかった。次から次に小魔人たちがティグリスに殴り飛ばされ、壁に叩き付けられてペシャンコになっていた。

 ティグリスは敵中深く入った所で、竿立さおだちになり前足を高く挙げて地面を叩いた。大きな地響きと衝撃波が発生した。小魔人たちはそれによって空中に飛ばされ、壁や天井に嫌というほど叩き付けれ身体が圧し潰された。マモルたちも衝撃波で身体が吹き飛ばされそうになり、身体を前傾させて足を踏ん張って身体を支えた。もう立っている小魔人たちはいなかった。圧死あっしした者たち、身動きが取れなくなって呻いている者たち、そして身体を這わせて何とかその場から逃げ出そうとしている者たち。そんな凄惨せいさんな光景が広がっていた。

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