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アルビトリウム  作者: 新条満留
第八章 冥塔の三王
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小魔人

小魔人


 「俺が先頭に立つよ、隊長」

 ティグリスが先頭を歩くマモルに言った。

 「別にいいけど…何かあるのか?」

 マモルが不思議そうに訊ねた。

 「俺たち獣型の身体は他の種族よりも頑丈にできてる。この暗い洞窟で何かあっても俺なら盾替わりになる。魔法攻撃にはそれほど強くないが、物理攻撃なら隊長より耐性がある」

 ティグリスが答えた。

 「だけど鎧を付けてるからそんなに変わらないんじゃないか?」

 マモルは再び訊ねた。

 「鎧が全身を覆ってるなら別だが、空いてる部分もあるだろ? そこに攻撃を当てられたらいくらお前でも怪我くらいはするんじゃないのか? まあ隊長の素早さなら攻撃を当てられることはないだろうが、ここにいる全員がそうじゃない。特に人型のアイル、カオル、そしてハルカは魔法攻撃には耐性があるが物理攻撃に弱い。身体能力も敵の攻撃を避けられるほど素早くはない。それを考えての措置だ。俺は攻撃を当てられてもそれほど痛く感じないから絶対に避けない。心配しなくて大丈夫だ」

 ティグリスは説明た。

 「ふむ、成る程。じゃあ、そうしてくれ!」

 マモルは笑顔で言った。そしてこう思った。

 「種族によって色々な特性があるのは知ってたが、こういう混成部隊になるとそうした特性を活かした役割分担ができるんだな。ステラもそうしたことを考えて戦ってたんだろうな。これは今後の小隊編成や作戦行動を考える上で、攻撃や防御方法の幅が広がってくるな。これから強い敵とも戦っていくことを考えると、それは重要な要素かもしれない」

 洞窟の中はマモルたちの足音だけが響き、他に何の物音もしなかった。たまに水の雫が地面に落ちた音が聞こえるくらいだった。

 だがこの洞窟には魔物が住んでいると言われている。誰もその正体を確かめた者はいなかった。ただ昔からこの洞窟は『瘴地の冥塔』の内部に続いていると言われてきた。一か八かの賭けになるが、これ以外に城内に潜入する方法がなかった。

 マモルたちは洞窟の奥へと進むに連れて、異様な気配が強くなってくるのを感じていた。何かがいるという気配が段々と強くなっていた。彼らは視界の利く範囲を見回しながら、何かが隠れていないかを確かめながら進んだ。

 「何かが来るぞ! 気を付けろ!」

 ティグリスが突然叫んだ。小さな幾つもの足音が物凄い速度で近づいて来るのが分かった。

 マモルは二振りのエンシャソードの鞘が仄かに赤く光っていることに気づいた。

 「一体、何だ!? どうして光ってるんだ!?」

 マモルは剣を鞘から引き抜くと、剣の剣身が赤く光を放っていた。

 「敵を感知する剣ということなのか? …それなら益々助かる! いい剣だ」

 マモルは両手に剣を構えた。その時、マモルの左側から声がした。

 「……『テンペスタス』!」

 ハルカが詠唱していたのだ。彼女は両腕を前に突き出し、それを中心に激しい風の渦が発生していた。やがてその風は洞窟の奥に向かって飛んで行った。

 「ギャアアアア!!!!」

 異様な多くの叫び声が聞こえてきた。足音はもう聞こえてこなかった。再び沈黙が洞窟の中を覆っていた。

 マモルたちはどうなったのか確認しに洞窟の奥へ歩を進めた。そして暫く進んだ所で何か小さな物体が地面にたくさん転がっているのを見つけた。彼らはそれらに近づいて何なのかを確認した。そしてそれを見て思わず背筋が寒くなった。

 それは人の背丈の半分くらい大きさで姿形は人に似ていたが、その容貌を見ると顔は緑色でしわだらけだった。目が異様に大きく瞳がなかった。大きく開いた口は耳の当たりまで裂けて黒い液体が口の端から流れていて、鋭い牙がその中に納まっていた。

 それを見たカオルとハルカが小さな叫び声を上げた。あまりにもおぞましいい光景に誰もが萎縮いしゅくした。

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