作戦要諦
作戦要諦
安獣城に駐留していた人族の中隊は、長老修道会からエルフ族の援軍としての任務を授かり、マモルたちが城を出発してから十二日後に樹海城に向けて出発していた。マモルたちが樹海城に到着して十日後にその部隊が入城した。既にソール隊もエルフ族の派遣軍も城に到着していた。そしてエルフ族の軍備も整い、エルフ族軍総勢三万を超える部隊は西へ向けて出撃した。
『瘴地の冥塔』は、妖獣族の領土である『骨片の砂漠』から大東原に少し食い込む形で建てられた妖獣族の要塞である。アルビトリムでは厳格な国境線が決められている訳ではなくの自然地形によって大凡の境界が決められている。だからこれが領土侵犯ということにはならない。だがエルフ族にとってはこの塔が最もエルフ領に近く昔から懸念の対象だった。
しかしこの塔の主である三王アンブラー、エスクーロ、ウンブラは決死の覚悟で挑まなければ勝てる相手ではなかった。そのためこれまで放置しておくしかなかった。
だがこれまでの妖獣族の活発な活動から、ここを拠点に妖獣族が樹海城を襲撃するのは時間の問題と目されていた。そうした情勢からエルフ族は先制攻撃を仕掛けて一気に叩いてしまおうという計画を立てた。ここを落とせれば、妖獣族の勢力が大きく後退することになるのは間違いなかった。
『瘴地の冥塔』は堅固な要塞で難攻不落とされていた。何十段もの階層が重なり合う階段状の石造りの層塔で城壁は高かった。
作戦は投石器による城壁破壊、射型による空中からの矢弾や投擲攻撃などの物理攻撃で先制を掛ける。敵が城門を出てくれば、射型と霊型が一斉に物理と魔法の集中攻撃で敵を一掃する。
だが敵もそうした攻撃を予想している筈で、対策を講じている可能性が十分にある。最初は互いに様子見の腹の探り合いになるだろうと予測していた。
攻城戦は戦争で最も難しいとされる戦い方である。城を落とすには敵を遥かに上回る戦力が必要とされる。しかしそれを僅か三万の軍勢で戦争に踏み切った理由は、秘策があったからである。
マモルたちソール隊、仙獣族の精鋭二人、そしてシンジとハルカによる別働隊が城内に潜入し城内の敵を撹乱殲滅することが真の目的だった。つまりこの戦争は攻城戦と見せかけた攪乱殲滅作戦であった。
この作戦が成功するかどうかの鍵は、攻城部隊が如何に本気と見せ掛けた攻撃ができるかどうかに掛かっていた。多くの犠牲が出ることも覚悟の上での陽動である。
開戦は目前に迫っていた。兵士の誰もが緊張を隠せなかった。




