優心村
優心村
マモルたちは優心村という村に立ち寄った。夕暮れを迎えるまでにはまだ時間が早かったが、次の町がかなり離れた所にあるため行程の調整のためにそこで宿泊することになった。
そこは仙獣族とエルフ族が共存している三、四千人ほどの人々が住む小さな村だった。版図は仙獣族に属しているが、エルフ族との境界も近い場所にあるため、この近くにはこうした諸族の共存している町が散在していた。
マモルたちは宿を取って荷物を下ろすと村の中を散歩することにした。マモルたちは歩いて行く内に村の中を流れる川に行き当たり、川沿いの散歩道を進んで行った。
「ここは戦いとは無縁の土地って感じね」
カオルは道端の花を眺めながら言った。
「そうね。これくらい平和な村にいると外で戦いがあったことなんて嘘みたいね」
ハルカは彼女の隣りを歩いていた。
「あーあ、アタイは城を出てから平和すぎてボケちゃいそうだわ」
アイルは欠伸しながら言った。
「平和が一番さ! 皆が無事ならそれでいいじゃないか」
マモルが笑顔で言った。
「一番ボケてる奴にしてはいいこと言うわい」
彼の隣りを二足で歩いているプエルが言った。
「誰がボケだ! このガキンチョめ!」
マモルがプエルを追い駆け出した。
「まったく、あの二人はいつも喧嘩ばかりね」
カオルは笑いながら言った。
「仲がいいのよ。毎日、同じベッド並んで寝てるし、よく一緒に歩いてるし、まるで親子ね」
ハルカが微笑みながら言った。
「子供っていうのは自分を成長させてくれる人を敏感に感じ取るらしいからな。きっとプエルにとってあいつはそういう存在なんじゃないかな」
シンジは摘んだ花の匂いを嗅ぎながら言った。
「なるほどな。俺もそう思うよ」
ティグリスが同意した。
彼らが道の途中で町中へと続く分かれ道に差し掛かった時、カオルとハルカは買い物をするために皆と別れた。
カオルとハルカは旅に必要な物を色々と買い漁りながら町中を歩いていると、大きな公園に行き着いた。その中央には石像が建っていた。
彼女らは興味を惹かれその石像の前に立った。
石像は仙獣族の虎族の男性の両側にエルフ族の女性が寄り添うように立っている姿を表していた。その像は何か光を帯びているように見えた。
「なんて綺麗な像なんだろう」
ハルカがその像を見上げて言った。
「そうね。まるで生きてるみたいだわ」
カオルもハルカの横に並んでそれを見上げた。
「それは当然じゃよ」
突然彼女らの後ろで声がした。彼女らが驚いて後ろを振り返ると、仙獣族の長い鬚を蓄えた白い虎族の老人が立っていた。
「あなたは?」
カオルが訊ねた。
「ワシか…フフフ…まあワシのことはどうでもいい。じゃがな、この像は生きていた者たちがそのまま石になったんだよ。つまり生きた石像なんじゃ」




