交錯する想い
交錯する想い
旅は順調に進み何事もなく数十日が過ぎた。その間に仲間は結束が強くなっていき、プエルも仲間として皆にすっかり馴染んでいた。
カオルはシンジの失言によって、ハルカもマモルのことを好きかもしれないという疑いを持つことになったが、それを本人に改めて問うことはしなかった。それを聞くことで仲の良い双子の姉妹という関係がおかしくなるのを避けたかったからである。だがハルカのマモルへの接し方や態度を見れば、彼女の気持ちは問い質さなくても一目瞭然だった。彼女はハルカが間違いなくマモルを好きだと確信していた。
彼女は思慕川の河原でマモルとファルの会話を、盗み聞きしてしまったことを彼には内緒にしていた。彼女にとってはただ彼との関係をおかしくさせる内容でしかなかったからだ。彼女は今では彼との関係が変わらないままであって欲しいと願うだけだった。
ハルカはカオルに自分の気持ちをもう知られても構わないと思っていた。彼女は焦燥に駆られていた。カオルとの関係がおかしくなるの嫌だったが、マモルに自分のことを早く知って貰う必要があったため遠慮などしていられないと思っていた。そして彼との距離を縮めることで、彼にとっての彼女の存在をカオルと対等になるまで持っていきたいと思っていた。
カオルとハルカは複雑な関係になりつつあった。気持ちの上ではまだ双子の姉妹であったが、既にこの世界に来た時に肉体的には血縁関係が切れてしまっている。そして記憶の戻り方によってはその双子だという気持ちさえ失うことにことになりかねなかった。そのことを二人とも分かっているだけに、それぞれのそうした状況に対する解釈の違いで二人だけにしかわからない微妙な対立と友好関係が築かれていた。
ファルはカオルやハルカと一緒に旅するようになってから、彼女らがマモルのことで微妙な対立関係にあることを察していた。しかし自分は彼女らと一緒になって争うつもりはなかった。なぜなら彼女は幻霊であり、自分の恋の成就は契約に反することになるからである。
契約で主との恋愛を禁じている理由は、その気持ちが成就しなかった時、或いは成就しても関係が破綻してしまった時、それによって主に対する守護の役目が疎かになることを危惧しての措置だった。
彼女は彼の気づきによって自分の気持ちを打ち明けることになってしまったが、彼との関係を自分から積極的に昇華させるつもりはなかった。彼女はただ母親のような気持ちで彼を見守ろうと決心していた。
当のマモルは自分が徐々にステラに近づいていることを自覚していた。能力の上でも気持ちの上でもである。
ある時、突然ある記憶だけがはっきりと蘇ってきた。それを自覚した時、彼はそれがステラの一番強い気持ちだったのではないかと思った。だが同時にそのことを誰にも言うべきではないと考えた。
今は彼を取り巻く色々な状況を何も変える必要もないと彼は思っていた。自分に求められているのは早く能力を取り戻し、大東原の平和を守れるような存在になることである。だから自分の気持ちを優先させることは許されないのだ。
そしてそんな彼らのそれぞれの想いを大きく揺り動かす出来事が起こった。




