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アルビトリウム  作者: 新条満留
第七章 封印
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小さな追跡者

小さな追跡者


 マモルたちのルートは樹海城に到達するまで幾つかの町があった。仙獣族、エルフ族、少数部族、そして諸族が共存している町である。皆が英雄であるマモルを野営させないで済むようにと考えてくれたからであった。

 「なーんかさぁ、平坦な道をただ歩いて行くっていうのも、詰まらないわねぇ」

 アイルは両手を後頭部で組んで退屈そうにして言った。

 「何言ってるんだ。皆の安全が一番だろ」

 ティグリスがたしなめた。

 「まあね…そうなんだけどさぁ…」

 アイルはそう言って少し前を歩いているマモルを見つめた。彼の両側をカオルとハルカがくっ付くようにして歩いていた。

 「何であんなにくっ付いてるんだろう?」

 アイルは不思議に思った。そして彼女は道の両側にある木の茂みを見回して怪しい物がないかどうか確認した。すると左側の木の茂みの中に自分たちと同じ方向に動いている小さな物を見つけた。

 「何かがアタイたちを付けてる!」

 アイルはそう思って少し歩を緩めて一行から徐々に距離を置くようにした。そして頃合いを見て白豹に変身すると、茂みの中に入り込んだ。そして気づかれないようにそっとその小さな物に近づいて行った。少し薄暗かったがそれが仙獣族の子供だと分かった。

 「おい、ガキンチョ! コッソリとアタイたちを付け回して何してんのさ?」

 アイルはその子供の上を飛び越して、その前に立ちはだかった。

 「!!」

 その子供は白い虎の子供だった。それは慌てて逆方向に逃げ出そうとしたが、アイルは素早く右の前足で子供の身体を押さえ付けた。

 「おい、訊いてんのに何逃げようとしてんのさ」

 「おい、コラッ、放せ!」

 虎の子はもがいて叫んだ。

 「何だ、獣型か! 仕方ない」

 アイルは人型に戻るとその虎の子の首を右手で摘んでマモルの所に連れて行った。

 「こいつがアタイたちの後を付けてたよ。どうする?」

 アイルは訊ねた。

 「あっ、お前は!」

 マモルはその虎子こじを見て驚いた。

 「あら、プエルじゃない! どうしてこんな所にいるの!?」

 カオルが笑顔で訊ねた。

 「……」

 プエルはしょぼくれていた。

 「まあ、可愛いのね! 知り合いなの?」

 ハルカが傍に来て訊ねた。

 「うん。ちょっとね。行軍中に妖獣族に捕まってたのをマモルが助けたのよ。城に預けて来たんだけど、付いて来ちゃったのね」

 カオルが説明した。

 「何だ、あんたたちの知り合いなのか?」

 アイルはそう言うとプエルを地面に置いた。

 「…付いて来ちゃ悪いか?」

 プエルは俯いて呟いた。

 「ううん。別に――」

 カオルが言い掛けるとマモルが口を挟んだ。

 「ああ、悪い、悪い! いいか、俺たちはこれから戦いに行くんだ! 遊びに行くんじゃないんだぞ。そんな所に付いて来るつもりなのか?」

 「そんなこと分かっとるわい! だから一緒に行ってやると言っとるんじゃ」

 プエルはマモルを睨んで言った。

 「はあ? お前も戦うつもりなのか?」

 マモルは呆れ顔で言った。

 「ああ、そうじゃ! オラがお前を助けてやろうと親切心で言っとるのが分からんのか!」

 プエルは次第に勢いを取り戻して得意気に言った。

 「ほお、お前、一体何ができるんだ?」

 マモルは馬鹿にするように言った。

 「こういうことじゃ!」

 プエルはそう言うとマモルの左足に思いっきり噛み付いた。

 「イッテぇええええ!!! こいつ、また噛みやがった!」

 マモルはそう言ってプエルを追い回した。

 二人の様子を見てそこにいた全員が大声で笑い転げた。

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