アイルとティグリス
アイルとティグリス
王宮を出たマモルはソール隊と中隊長を呼び王との会見の内容を伝えた。マモルは出発の準備を終えると、カオルを誘ってシンジたちに会いに行くことにした。彼らが宿舎を出ると町中でちょうどマモルたちに会いに向かって来ていたシンジたちに出会した。
彼らは歓喜して再会を喜び合った。そしてマモルはシンジにカオルを紹介した。
「いや、こうして並んでみると驚くほどそっくりだな。もし同じ種族だったら見分けるのが大変だったな」
シンジは彼女らを交互に見比べて言った。
「そう言えば俺もこうして並んで見るのは初めてだ。もしマテリアで二人一緒に出会ってたら困ったことになってたな」
マモルは冗談めかして言った。
「あら、困ったことって何かしら?」
カオルは目を細めてマモルに言った。
「えっ…それは…ほんの冗談で…」
マモルは思わぬ突っ込みに困惑顔になった。
「お前、それシャレにならん冗談だぞ! 二人の気持ちを知ってるんだろ?」
シンジが苦笑して言った。
「えっ!? どういうこと?」
カオルが戸惑った様子をして訊ねた。
「あっ! あれっ? カオルさんは知らなかったの? 俺、不味いこと言っちゃったかな?」
今度はシンジが動揺した。
「……」
四人の間に少し気まずい雰囲気が漂った。
その時、突然彼らは声を掛けられた。
「やあ、あんたたち!」
マモルたちに近づいてくる二人の仙獣族の姿があった。一人は獣型の大きな白い虎の姿を持つ男性、もう一人は人型のポニーテールの黒髪の女性だった。
「あなたたちは?」
マモルが訊ねた。
「聞いてるだろ? アタイたちはバンライ王の命令で、あんたたちと同行することになった二人さ。アタイは人型のアイル、支族は豹族だよ。そしてこのデカいのが獣型のティグリス、見た通り虎族さ。よろしく頼むよ!」
アイルと名乗った女性が自己紹介した。
「ええ、話は聞いてます。こちらこそよろしくお願いします」
マモルが言った。
「人族はこういう時、『手合わせ』の挨拶するんだろ? 一度やってみたかったんだ。ね、やろうよ」
アイルはそう言って右手を顔の高さに挙げた。マモルは左手を彼女の手に重ね合わせた。
「ウフフ! やったぁ! いいよね、こういうのがあるって、仙獣族は支族が多いから決まった挨拶がないんだ。だからこういうのが凄く新鮮なんだよね。
ところであんたが『ソルジャー』でしょ? 今度の戦争あんたのお蔭で仙獣族は助けられた。ありがとう! 色々噂は聞いてたけど凄いよね。あのハイロウを一人で倒すなんてさ。もう仙獣族の間ではその話で持ち切りでさ…でも想像してたのと違うわね。もっと屈強な大きい男を想像してたんだけど…そうねえ…美的感覚が人族と違うから、あんまり人族の男性をカッコいいって思ったことないけど、あんたまあまあカッコいいんじゃない!」
アイルはマモルをジロジロと見ながら言った。
「おいおい、初対面なのにそんな失礼なこと言ったら駄目だろ、アイル!」
ティグリスという獣型が言った。
「あら、いけない! ついいつもの癖で。エヘヘ! まあ、気にしないでね、悪気はないのよ! アタイっていつもこうなんだ。ごめんね!」
アイルはちょこっと舌を出して謝った。
「すみません、こいつが失礼なことを、どうか気にしないで下さい。あなたみたいな英雄と一緒に旅ができるなんて私どもも光栄です。どうかよろしくお願いします」
ティグリスはそう言って頭を下げた。
「いえ、そんな…気にしないで下さい。俺たちもあなた方と一緒に旅ができることを嬉しく思います。よろしくお願いします」
マモルたちは全員で頭を下げた。
それからマモルは彼らにカオルたちをそれぞれ紹介した。
それからマモルは樹海城に向かう全員を集めて樹海城までの行程を確認しあった。
そして色々な意見が飛び交った末、途中で妖獣族に襲われないようにするためには、兵士だと悟られないようにした方がいいということになった。そこで旅の服は平服とすることに決まった。そして大人数でゾロゾロと歩けば怪しまれることにもなるということで、色々と揉めた末、ソール隊はマモルたちとは別ルートで行くことになった。そして彼らには二人のエルフ族の兵士を案内人として同行させることになった。千人余りいるエルフ族の派遣軍の兵士たちは幾つかの部隊に分かれて遠回りになるが安全なルートで帰城することに決まった。そしてマモルはカオル、シンジ、ハルカ、アイル、そしてティグリスと行動することになった。
マモルは全ての意見が纏まった時、こんなことを思った。
「誰と一緒に行くかでこんなに揉めるとは思わなかった」




