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ゴリラの皮を被って  作者: 彩羽やよい


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8/20

8ウホ目:ゴリラとおすし

 ゴリラは寿司が好きだ。

 おいしいから。


 ゴリラは酸っぱいものも好きなので、お酢が好きだ。

 酢飯においしいものを乗せてあるなんて、おいしいに決まってる。


 えびとサーモンが好きだ。えんがわとかハマチとか、穴子なんかも好きだ。

 ゴリラの味覚は子どもである。

 わさびは好きだけど、入れすぎると鼻が痛いので慎重だ。


 お寿司が好きなこだわり屋さんには、何をはじめに食べるかや、食べる順番をやたら厳しく定めてくる人がいる。

 でもゴリラは、基本的にはそんなこと気にしない。

 欲望のままに食べる。

 ちょっと気にするのは好きなものを先に食べるか、あとで食べるか。そのくらいだ。


 子ゴリラのときは、好きなものをさっさと食べていた。

 しかし大人になったゴリラは、好きなものをあとに残してみたり「このネタで終わりにしたい」などという小技を身に着けた。


 結果、締めたいネタに辿り着く前に、途中でお腹いっぱいになったりもする。

 ゴリラはそこまで計算ができず、未来のお腹を読めないのである。

 好きなものは、好きな時に食べたほうが良い。

 ゴリラはそうして、日々いろいろと学習している。


 ちなみにゴリラは、おうちで寿司を握ってみたこともある。

 酢飯を作って、ネタを切って、準備を進めた。

 意外とそれっぽくて、テンションが上がった。


 動画を見たりしながらふむふむと握り、ネタを乗せて、できた!と食べた。

 最初の一貫はめちゃくちゃ感動した。

 「ゴリラでも、お寿司握れるんだ!」と大喜びした。


 だが、二貫目あたりから、

 「……これ、めんどくさいな」

 という気持ちがひょっこりと顔を出し始める。 

 三貫目。

 「……まだ握らなきゃいけないのか」

 四貫目。

「……おすしやさん、すごいな」


 味は別としても、案外見た目はうまくできて、ちょっと笑ってしまったので、それで満足した。

 おにぎりみたいなドでかいのを握ってしまったり、めちゃくちゃになってしまった方が、ある意味面白かったかもしれない。

 

 だが、買うことと、家で握りたてを食べることの労力は、まったく釣り合っていなかった。

 ゴリラは、やろうと思えば寿司も素人なりに握れるのだとわかったので、もうそれでよかったのだ。

 それと同時に、

「おいしくて綺麗なお寿司を提供してくれるおすしやさんはえらいなぁ」

 と思い知った。

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