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ゴリラの皮を被って  作者: 彩羽やよい


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17/20

17ウホ目:ゴリラとじどうはんばいき

 お金を入れるとおいしい飲み物が出てくる、自動販売機。

 便利なものだ。ゴリラも知ってる。


 だが、ゴリラにとって自動販売機は、ただの機械ではない。

 重要なのはその高さである。

 一般的な自動販売機の高さは、183cmだそうだ。

 自動販売機よりも推しの身長が高いか低いか、そんなことを考えているのはオタクだけだという。

 えっ、じゃあゴリラ、オタクってこと?


 いや、ちょい待ち。

 別に、推しが自動販売機よりも大きいのか小さいのかを知りたいわけではないのだ。

 自動販売機という、そこらへんにある物体を見た時。

「これ、あのキャラが横に立ったらどんな感じかな~」

 そう思ってしまうだけなのだ。


 ……同じことでは?

 それを世間では、オタクというのでは?

 いやいや。


 自動販売機って、かなり身近な物体である。

 道端にも公園にも、駅にも。いろんなお店の近くにも。

 つまり、身長を想像するための比較対象として、非常に優秀なのだ。


 たとえば、身長2m近い男が自動販売機の横に立っていたらどうだろう?

 そりゃあでかい。

 ものすごくでかい。

 自動販売機だって別に小さくはないのに、その横に立った途端、

「あれ? 自販機ってこんなに小さかったっけ?」となるなんて。


 それでは逆に、身長160cmくらいならどうだろう。

 自動販売機のほうが、ずっと大きく見える。

 それもそれでいい。

「推し、自販機よりこれだけちっちゃいんだね……。かわいいね」

 と思う。


 いい。

 サイズ感がはっきりわかる。

 推しの身長というものは、数字で書かれていても、いまいち実感が湧かない。

 たとえば、195cm。

「ふーん、高いね」と思うだろう。


 ところが、そこにちょっと自動販売機を置いてみよう。

「自動販売機より10cm以上高い」

 ほらね、急にわかる。

「なるほどねぇ……。でっかいねぇ」

 と、急に目の前に推しの輪郭がはっきりしてくる。

 脳内に推しを立たせるには、自動販売機くらいの具体性がちょうどいい。


 ゴリラは今日も、自動販売機を見る。

 飲み物を買うついでに、いろんなキャラクターを横に立たせる。

 自動販売機は何も知らないで、おいしい飲み物を出してくれる。

 あったか~いのもつめた~いのも、自由自在。

 ゴリラだけが、勝手に身長を測っている。

 便利な世の中である。

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