14ウホ目:ゴリラと、SとかMとか
12ウホ目の『ゴリラと長距離走』で、ゴリラは追い込まれるのがわりと平気だと書いた。
ではゴリラはマゾなのかと聞かれると、否定はできない。
だからといってゴリラが誰にでも痛めつけられたいかというと、そういう単純な話でもない。
ゴリラは自分を追い込むのが好きだ。
もう無理だろというところまでやってみて、苦しくなる。
なんでこんなことしてるんだ、と思いながら、それでもやる。
これはまあ、Mっぽい。
しかしゴリラは、相手を追い込むのも嫌いではない。
もちろん、相手が嫌がっているのに、無理やり何かをするという意味ではない。
相手が「これくらいならいける」と言っているなら。
「じゃあ、もうちょっといけるね?」と背中を押したくなる。
ゴリラパワーでぐいっと。
ゴリラはMなぶん、相手に奉仕したい気持ちが強いのだと思う。
だから「思い切りやってくれ」と言われたら、ゴリラはたぶん躊躇しない。
なぜならゴリラは、頼まれた以上は全力を出したいからである。
ゴリラはそういうところだけ妙に真面目だ。
だからゴリラは、たぶん両刀なのである。それも極端な。
ただし、ゴリラには苦手なタイプのSがいる。
いわゆる「自称ドS」というやつだ。
「俺ってぇ~、ドSってよく言われてさ~、女の泣く顔とかめっちゃ好きなんだよね」
とか言ってくるくだらんタイプの人間のことである。
だいたいそういうやつは、それを口癖のように繰り返す。
Sって、相手を傷つけたり怖がらせたりすることそのものが目的なのだろうか。
ゴリラは、そうは思わない。
相手がどういう反応をするのかを見極め、相手が何を望んでいるのかを読む。
そして「じゃあ、こうしてあげよう」と思う。
そこにSだのMだのという分類が、あとからついてくるだけなのではないだろうか。
本当に強い人は、わざわざ「俺はSです」などと自己申告しないのではないか。
必要なときに必要なことをして、相手の反応を見る。
そこでやめることも、もう少しやることもできる。
そういう人のほうが、ゴリラはずっと怖い。
そして、たぶん好きだ。
結局のところ、相手の意思を無視して「俺はSだから」と振る舞う人が、ゴリラは苦手なのだろう。
ゴリラ自身は、相手が何を望んでいるかを見たうえで、「それじゃあ、ゴリラがやりましょう」となるタイプだ。
相手が望むなら、全力で応えるし、嫌ならやらない。
もういいと言われたら、ちゃんと止まる。
つまりゴリラのSは支配欲というより、相手の望みに全力で応えるためのものなのだと思う。
ゴリラのSは、奉仕型Sなのである。
そしてゴリラは、自分も追い込まれたいし、相手も追い込みたい。
やっぱり両刀である。
ゴリラはそりゃもう、欲張りなのだ。




