13ウホ目:ゴリラとおうまさん
ゴリラは小さいころから、馬が好きだ。
大きくて、すべすべしている。しっぽとたてがみはさらさらしている。
触れるとはっきりとわかる筋肉と、動物らしい熱。
人を乗せてくれたり、荷物を運んでくれたり、昔から人間のために働いてくれている。
そして何より、あの優しい目が大好きだ。
見てるのも好きだし、乗せてもらうのも好きだ。
お馬さんのあの大きな背中に乗って、地面がふっと遠くなる瞬間のドキドキ。
お馬さんが歩みを進めるたび、身体を揺さぶられる。
それなのに、どこか安定していて、不思議と落ち着く。
たまんないのである。
お馬さんの背中に乗せてもらっているときは、
「あー今このお馬さんが全部嫌になって暴走したら、私はなすすべなく落下して、大怪我で済めばいい状態になるんだろうな~」
とか考えている。
そう、お馬さんにはそれだけの力がある。
ゴリラなんて、ちょっと蹴られたらたぶんおしまいだ。
それどころか、乗っているゴリラを振り落とす気になれば、いつだってやれる。
そんな力を持ったお馬さんが、私のようなもんを背中に乗せて、大人しく歩いてくれる。
ちゃんと人間のことを見て、こちらの指示を聞いてくれる。
すっごい。お馬さんてすごい。
ただ大きくて強いだけではない。
大きくて強くて賢くて、人間を受け入れてくれる。
この「圧倒的な力を持っているのに、こちらに力を振るわない」というところに、ゴリラは弱い。
餌をあげるのも好きだ。
大きなお顔を突き出して、ちょうだいちょうだいとにんじんをねだる。
なんてかわいらしいのだろう。
ちょっとお顔が崩れるくらい歯をむき出しにしてねだる子もいる。
さっきまでのクールな表情はどこへいったのだ。
でもそれもかわいい。その落差が良い。
「おい早くよこせよ」
と言わんばかりに厩舎の扉を蹴る子だっている。
バーンとすごい音が響く。ちょっと怖いけどそれはそれで最高。
お馬さんはかわいくて、かっこいい。
優しいけど、ちゃんと怖い。
その全部が好きだ。
人間よりずっと大きな身体を持っていて、人間よりずっと強い力を持っている。
それでも、人間を背中に乗せてくれる。
にんじんを差し出せば、ものすごい顔でねだってくる。
たまに扉も蹴る。
そういうところまで含めて、ゴリラはお馬さんが大好きだ。




