11ウホ目:ゴリラと妹
ゴリラには、大好きな妹がいる。
ゴリラと妹は、わりと仲がよかった。
いや、かなり仲がよかったと思う。たぶん妹側にも異論はないはずだ。聞いてないけど。
あまり喧嘩もしなかったし、たとえ喧嘩したとしても、気づけば仲直りしていた。
というか、ゴリラは喧嘩をしてしまったときに何日も口をきかない、といったことが苦手である。
だって、好きな相手とおしゃべりできないなんて寂しいし。
ゴリラは、黙っているくらいなら、だいたい先に喋ってしまう。
だから、ゴリラの方から何もなかったかのように話しかけて、仲直りしていた。
学校で友達が「兄弟と喧嘩して何日も口きいてない」などと言っていると、器用なことするもんだな、と感じたものだ。
よく一緒にゲームをしたし、ゴリラがゲームをしているのを、妹は後ろから見ていることも多かった。
ゴリラはゲーム中わりとやかましいので、よく耐えたものである。
「だから今でも実況動画とか好きなのかも。ゲームしてるの見るのが好きなんだ」
と、思えば彼女は、ゴリラに言ったことがあった。
妹は、ゴリラのことをよくわかってくれている。
彼女がくれるプレゼントはいつも嬉しいものばかりだし、選んでくれる化粧品は、ゴリラの肌によく馴染む。
ゴリラ本人より、ゴリラに似合う色や、肌のことを理解している可能性がある。
妹は、イライラしているのを隠せないタイプだ。全部、顔と態度に出る。
母はそうしたところが気に食わないようで、今更あーだこーだ、「そういうとこがお父さんにそっくりで」などと文句を言う。
ゴリラは、「そういう言われて嫌な言い方をするからこじれるんだよな」と思いつつ、まぁまぁ。ととりなす。
ゴリラはそうして、仲裁をがんばってみたりもする。
けれど妹は、寂しいときには寂しいと言わない。
できるだけ涙を見せないようにして、隠れて泣こうとする。
ゴリラはそうした彼女の性質をよく知っている。ゴリラにはなんでもお見通しだ。
今は、ゴリラは妹と離れて暮らしている。
妹が辛いと思ったとき、寂しいと思ったとき、ゴリラは、すぐに駆け付けてあげられるようなところには住んでいない。
それがゴリラには、ひどく歯がゆいときがある。
それでも今はいい時代なので、離れていても一緒にゲームができる。
直接会えなくても、話は聞けるし、ゴリラの話も聞いてもらえる。
だからまぁ、今のところは大丈夫だろう。たぶん。
ちょっとぐらい楽観的にならないと、ゴリラとお姉ちゃんの両立はやってられない。




