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ゴリラの皮を被って  作者: 彩羽やよい


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10/20

10ウホ目:ゴリラとライチュウ

 今日のゴリラは、ポケモンの話をしたい。

 ゴリラはな、ライチュウが好きなんだ。

 ピカチュウじゃなくて、ライチュウが好きなんだ。

 いや、ピカチュウも好きなんだけど、それよりもっともっと、ライチュウが好きだ。


 ゴリラがいつも作業をしているデスクのすみっこには、ライチュウのぬいぐるみが置かれている。

 いつもそこから、ちょっと微笑みながらこっちを見ている。

 ゴリラはちょっと疲れたときや悲しいとき、それから別に理由がなくても、ライチュウを手に取って腹を撫でる。

 胸に抱きしめ、ふかふかする。

 かわいい。


 あのおててが良い。

 ピカチュウのときよりまあるくなって、こっぺぱんみたいである。

 ちゃんと手なのに、どうにも食べものっぽい。

 あの手をぐいっと上に掲げて喜んでいたりすると、すごくいい。


 足もしっかりしている。

 ピカチュウよりもずっと「立ってますよ」という感じがする。


 そしてやっぱり、まあるいお腹。

 ピカチュウのときよりもまんまるで、白い模様がついている。

 よけい丸くみえる。かわいい。


 ちゃんと強そうなのもいい。

 耳や尻尾はなんだかとんがっていて、電気まで出す。

 字面だけ見れば物騒な生き物だ。


 なのにどうだ。実物を見てみると丸い。

 強そうなのにまるく、立派なのに、かわいい。

 ちゃんとしてるのにかわいいのだ。


 ピカチュウはそりゃかわいいよ。文句なしにかわいい。

 でもライチュウは、かわいいだけではない。

 ちょっと大きくてまるくて、足がしっかりしていて、ピカチュウよりもずんぐりしている。

 なんだか、頼もしい。

 隣にいてくれたら、きっと心強いだろう。


 しかも、ライチュウはピカチュウよりずっと大きい。

 ピカチュウは高さ0.4m、重さ6kg。

 ライチュウになると、高さ0.8m、重さ30kgになる。


 でっかい。

 体長は2倍、体重は5倍である。

 進化ってすごい。

 のしかかられたら「重いよー」と言いたくなるくらいには、ちゃんと重い。

 でも、それがいい。のしかかられて、困りたい。

 多少重くたって、抱きしめたい。


 ライチュウはピカチュウの進化形なのに、どうしてもピカチュウの影から完全には抜け出せない。

 進化したのに、主役の座はピカチュウのものだ。

 普通なら進化系って、上位存在なのではなかろうか。


 なのにライチュウの場合は、ピカチュウがあまりにもピカチュウだから、進化したって二番手だ。

 別にライチュウが不人気なわけでも、弱いわけでもないのに、お前はピカチュウの次だよね感が永遠について回る。


 それでも本人はそんなことを気にしている様子もなく、丸い腹を晒し、しっかりした足で立っている。

 ライチュウはいつでもライチュウで、丸くてピカチュウよりでっかくて、立派だ。

 たまらない。


 ゴリラは、一番になれないものに弱い。

 だからゴリラは、今日もライチュウのまあるい腹を撫でている。

 かわいい。君は、それでいい。

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