10ウホ目:ゴリラとライチュウ
今日のゴリラは、ポケモンの話をしたい。
ゴリラはな、ライチュウが好きなんだ。
ピカチュウじゃなくて、ライチュウが好きなんだ。
いや、ピカチュウも好きなんだけど、それよりもっともっと、ライチュウが好きだ。
ゴリラがいつも作業をしているデスクのすみっこには、ライチュウのぬいぐるみが置かれている。
いつもそこから、ちょっと微笑みながらこっちを見ている。
ゴリラはちょっと疲れたときや悲しいとき、それから別に理由がなくても、ライチュウを手に取って腹を撫でる。
胸に抱きしめ、ふかふかする。
かわいい。
あのおててが良い。
ピカチュウのときよりまあるくなって、こっぺぱんみたいである。
ちゃんと手なのに、どうにも食べものっぽい。
あの手をぐいっと上に掲げて喜んでいたりすると、すごくいい。
足もしっかりしている。
ピカチュウよりもずっと「立ってますよ」という感じがする。
そしてやっぱり、まあるいお腹。
ピカチュウのときよりもまんまるで、白い模様がついている。
よけい丸くみえる。かわいい。
ちゃんと強そうなのもいい。
耳や尻尾はなんだかとんがっていて、電気まで出す。
字面だけ見れば物騒な生き物だ。
なのにどうだ。実物を見てみると丸い。
強そうなのにまるく、立派なのに、かわいい。
ちゃんとしてるのにかわいいのだ。
ピカチュウはそりゃかわいいよ。文句なしにかわいい。
でもライチュウは、かわいいだけではない。
ちょっと大きくてまるくて、足がしっかりしていて、ピカチュウよりもずんぐりしている。
なんだか、頼もしい。
隣にいてくれたら、きっと心強いだろう。
しかも、ライチュウはピカチュウよりずっと大きい。
ピカチュウは高さ0.4m、重さ6kg。
ライチュウになると、高さ0.8m、重さ30kgになる。
でっかい。
体長は2倍、体重は5倍である。
進化ってすごい。
のしかかられたら「重いよー」と言いたくなるくらいには、ちゃんと重い。
でも、それがいい。のしかかられて、困りたい。
多少重くたって、抱きしめたい。
ライチュウはピカチュウの進化形なのに、どうしてもピカチュウの影から完全には抜け出せない。
進化したのに、主役の座はピカチュウのものだ。
普通なら進化系って、上位存在なのではなかろうか。
なのにライチュウの場合は、ピカチュウがあまりにもピカチュウだから、進化したって二番手だ。
別にライチュウが不人気なわけでも、弱いわけでもないのに、お前はピカチュウの次だよね感が永遠について回る。
それでも本人はそんなことを気にしている様子もなく、丸い腹を晒し、しっかりした足で立っている。
ライチュウはいつでもライチュウで、丸くてピカチュウよりでっかくて、立派だ。
たまらない。
ゴリラは、一番になれないものに弱い。
だからゴリラは、今日もライチュウのまあるい腹を撫でている。
かわいい。君は、それでいい。




