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転生者ふたり

 私以外に転生した人がいる。フラグ管理を気にする令嬢が、そこら中にいてたまるか。

 はやる気持ちを抑えながら辺りを見回すと、都合よく声の持主と目が合った。

 男爵令嬢アメリー・イザベル・ド・モンフォール。父が一代で築き上げた大商家は王都でも人気の取引先だ。

 私のドレスもモンフォール家の専門店で制作された。

 これだ、これを切り口に話しかけるのだ。


 「アメリー様? 今回は素敵なドレスをありがとう。王女らしく、しかも場を乱さない程度の豪華さの仕上がりだわ」


 「恐れ多くも王女様。職人たちの励みになります」


 「ところで、フラグとは?」


 ぶっこみ過ぎた。あまり冷静ではなかったらしい、私。


 「あ、あのぅそれは……」


 「ずばり貴方も転生してきた者ね?」


 アメリーの息を飲む仕草が何よりの答えだった。


 「ちょっと別室で話しましょう、貴方とは特別仲良くなりたいわ」


 半ば無理やりアメリーの手を取るが、アメリーも一緒に歩き始めた。そうでしょうそうでしょう、この世界で偶然にも出会えた転生者同士、情報交換したくて堪らないはずだわ。

 ちらりとレオを見たら、こちらを凝視していたように感じられた。アメリーへの冷たい視線のように思われる……いったいどうしたのだろうか。


 

 ここはやはり直球一本勝負。マリアには打ち取られた経験があるが、今度は同年代の女子。


 「私はテレジア、名前は思い出せないわ。でも14歳で、つい最近、令和の日本から転生してきたことだけ分かってるわ。貴方は?」


 「私も同じような感じ。名前も思い出せないで、急にアメリーとして転生したわ……」


 そうして、お互いの情報を話し始めたが、いまいち共通点は見つからない。ただ、何かのゲームやアニメ等の作品に入り込んだのは間違いないようだった。

 話しながらアメリーは腕を組み、うんうんと頭を捻っている。眼だけは真剣だが、可愛らしい仕草だ。

 ここでようやくアメリーの容姿が目に入ってきた。私も思っていた以上に焦っていたらしい。

 ショートの茶髪が鮮やかだ。膨らみかけた胸が私よりも大きい。身長は私よりも小さいのに何だそれは。

 ふむ、私の次ぐらいに可愛いとしてやろう。


 「私は、この世界を乙女ゲーだと思ってるわ。今は恋愛シミュレーションにも戦闘要素があったりするし……、でも誰ともフラグが立つような気配がないのよ」


 確かに、この世界は美男美女が多すぎる気がしていた。しかしながら、乙女ゲーであったならば、私が出会う男性は多くなるはずだ。王女だもん。

 もっともこれから幾人かの男性からアプローチを受けるかもしれないが……今はレオだけで充分なんだけどな。充分ってなんだ。心の中でかぶりを振って、アメリーとの話に集中する。


 「ちなみにアメリーのレベルはいくつ?」


 「レベル22よ、それがどうかした?」


 そう、レベルとステータスが設定されているならば、打ち倒すべき敵がいて然るべきでは。

 お互いのステータスを開示する。アメリーの顔が引きつっている、とても淑女には見えない。


 「……げぇ……ちょっと貴方強すぎじゃない? 世界を滅ぼせるわよ」


 「いざとなったらゲームバランスごと破壊できるかもね」


 ここでようやく、お互いに笑いが生まれた。正確には、笑うしかないレベルのテレジアだったと言うべきか。


 「これだけ強かったら何があろうと、死亡エンドはないんじゃない? 呆れるほど強いわよ、貴方」


 「確かに……どんなゲームでも強さは正義だわ、少し気が楽になったわ」


 うんうん、と頷く私。アメリーは、やれやれと言わんばかりにお茶を口にしている。


 「言っておくけど、私……アメリーのステータスは標準より上よ、一般市民には負けないんだからね」


 お、若干悔しがっているのか? 可愛いのう可愛いのう。

 

 「とにかく、私は私でゲームの攻略を頑張るわ、テレジアも何かわかったら教えてちょうだい」


 「もちろんよ、アメリーも気軽に連絡をちょうだい」


 「王妃様をしょっちゅう呼びつけられる訳ないじゃない、そっちから豆に連絡をしてほしいわ」


 確かにそうだ。アメリーは国内随一の商家とは言え、身分は男爵令嬢。私から配慮せねば。

 ずばずばと会話をしてくれるから、つい気安くなってしまった。


 しかし、ここで疑問が一つ。アメリーさえゲームのNPCでないと言い切れないのだ。

 考えすぎかもしれないが、なんだか全てが私にとって都合がよすぎるのだ。

 でも、こんなに自然に会話してくれたアメリーがNPCかなぁ。


 うーむ、謎は深まるばかり……。自分の髪を触り触り、明後日の方向を見るテレジア。深窓の令嬢のように見えるだろう。

 そんな私を尻目に、去り際のアメリーが声をかけてきた。


「そうだ、あんただったら武闘会で優勝しちゃうんじゃない?」


「武闘会?」

 ぴくんと好奇心が跳ねた音がした。


「国外へ武勇を示すための武闘会よ。良くあるじゃない、王族が仮面をつけて密かに出場とか。」


 お、お、お、アメリーよ。ナイスな情報だ。

 ゲームの攻略なんてどこの空。我がエトワールが唸りをあげているような気がした。

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