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王女の日記

 朝食を食べた。身支度も整った。

 いざや、王女の日記。ここからは私のターンよ。


 日常の記述は後で読むとして、私宛のテレジアからのメッセージがあるはず。

 だって、メイドさんまで手配してあるんだもの。用意周到な人物と見た。


 そうして、あっさりと先頭のページに挟まった手紙を見つけた。

 興味と好奇心、そして不安で胸が脈打つなか、そっと大事に手紙を広げた。


 「未来のテレジアへ


 ごきげんよう。

 あなたがこの文章を読めているなら、儀式は成功したのでしょう。

 突然の事態に驚いていることと思われます。混乱もあるでしょうが落ち着いて読んでください。


 私たちは一つの魂から生まれた存在です。

 世界に私たちが生まれ落ちた瞬間、私たちの魂は二つに別れ、違う世界に生き別れたのです。

 その代償として、私は魔力を欠き、あなたは身体が弱く生まれました。

 きっと貴方は病弱な身体で生き辛かったはずです」


 私が病弱で入院を繰り返していたことに意味があったなんて……。

 それに、自分の死による転生ではなかったのか……なぜか少しホッとした。

 と、すると生まれた直後からストーリーは進行していた……?


 「私は長年、魔力がないことに思い悩んできました。

 王女でありながら魔力なしを隠し続けるのも限界でした。


 それでも私は王女、強く生きようと決めていました。

 魔力に興味がないふりをしつつ、剣を振り続けました。

 誰にも見られないように、発動しない魔法の練習を続けました。

 それでも、父と母にも打ち明けられない秘密が、だんだんと私の心をすり減らしていきました」


 なるほど、だから高レベルなのね、この体。毎日、辛い中で鍛錬を続けていたなんて……。

 

 「藁にもすがる思いで自分自身を、そして禁書庫を調べ上げ、遂に見つかった方法が、今回の儀式です。

 どうして、私たちの魂が引き裂かれたのは謎のままでしたが、これが私に与えられた唯一の解決法でした。

 

 私は、遠い地にいる対なる魂を呼び寄せる結魂の儀式を、今日実行します。

 きっと成功するはずです。」

 

 一体どんな儀式だ……テレジア、貴方自身は何処かにいってしまったの?


 「もしもお互いに話せる機会があったらと思いますが、恐らく貴方と私の意識が半分ずつあるような、不思議な状態になるはずです。

 それでも恐れないでください。一つに戻った私たちならどんな困難でも乗り越えられるはずです。


 私たちの明るい未来を祈って。

 

 テレジア・マリー・シャルロット・ド・ヴァロワ」


 ふぅ~……。妙に緊張感を覚えた時間だった。テレジアは私で、私もテレジア。同じ魂とは言え、一度、対面したかったものだ。

 きっと仲良くなって手を取り合える存在になれただろう。テレジア、貴方は今も私の中にいてくれているのかな。


 「それにしても……ゲームのタイトル……教えて欲しかったな……」


 すると自分の意識から、「ゲームとはいったい何のことでしょう?」という声が聞こえたような気がした。

 こんな設定のゲームあったかなぁ。それとも漫画? 小説?

 

 しかし、儀式を見つけた……という文が気になってしょうがない。

 これは、過去にも儀式が行われて、その記録が残っているということ……。

 もしかして、私以外にも転生者っているのでは……?


 禁書庫というキーワードも気になる。普通、困っている人がいるならば対処療法として目につきやすい場所に書物が置かれるはず。

 なぜ儀式の本が書庫に禁じられたか。乱用されては困る、何か不都合な真実がある、実行に危険が伴う……いずれにしても何かマイナスの出来事があったのだろう。


 もっと言うと、別世界である魂を読み取れる人がいたのでは、ということだ。それも魔法の力なのか、それとも転生者が考案した儀式なのか。

 転生者がこの世界に降りたったならばと仮定すると、よくあるストーリーは元の世界に戻ろうと奮闘するのが王道だ。

 

 ……急に母や父、友達の顔が浮かんだ。

 冷静なふりして自分を誤魔化していたのかもしれない。足元がおぼつかなくなるような不安が私を包む。

 もう二度と会えないかもしれない親しい人達、私はこの異世界でやっていけるでしょうか。


 両親は病弱な私にゲームを良く買い与えてくれた。RPG、シミュレーション、アクション、ありとあらゆるゲームを病室で繰り返しプレイした。

 母にゲームクリアを報告すると無邪気に喜んでくれた。父に攻略の難所を相談したら、楽しそうに一緒に悩んでくれた。

 今の私にはセーブデータも、遊びかけのゲームもない。全部あの世界に置いてきてしまった。

 落ち着いたら、禁書庫に向かい、前の世界と連絡が取れるような魔法を探してみよう……。


 いずれにしても、ここは剣と魔法の世界ということは読み取れた。それだけでも受け入れていかねば。

 考えすぎてしまうのは私の悪い癖だ。迷えば敗れる。

 そんな思考に揺れていた私を呼ぶ声がした。


 「テレジア王女様、入室よろしいでしょうか?」


 マリアの声が聞こえた。今日のスケジュールはないと言っていたがいったい何だろう。

 とても嫌な予感がよぎった。こういうときのゲーマーの勘は鋭いのだ。


 「先ぶれのない来客です。婚約者のライオネル様がいらっしゃいました。」

 

 あ~、そうだよね~、王女だから婚約者いるよね~。


 ……ちょっと待ってよ、イベント発生早くない!? 最適解は何処!?

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