武闘会参加へ
デビュタントが終わってから数日後、レオが東国の緑茶を持って訪ねてきてくれた。労いと言っていたが、何かと理由をつけて会いに来てくれるのがおもはゆい。別に理由なんてなくてもいいのだよ、へへ。
「でね、アメリーっていう友達ができたの。本当にデビュタントは良い日になったわ」
「それは良かった。俺も事前準備が上手くいって良かったよ」
「レオが何を準備する必要あったの?」
飲みかけのカップをソーサーに置く。一瞬、思考の渦に飲まれそうになる。何かしらゲーム的なイベント起きる予定だったのだろうか。
「実はトラブルを起こしそうな奴らを先に叩きのめしておいたのだ」
「まさか、そんな~……冗談よね?」
「俺はテレーズに嘘をつかないと決めているよ」
う~む、顔が冗談を言っているように見えない。しかし事もなげに言うので真意がつかめない。もしかしたら見れなかった婚約破棄イベントでもあったのかもしれない。兎角、この世界において初心者な私にはすべての出来事が気になる発生フラグなのだ。
「そう言えば、武闘会に興味あるみたいじゃないか。買い物中に偶然アメリー嬢に出会ってね」
「あら、情報が早いわね。王女が出るのもどうかと思うんだけど、ちょっと自分の実力を確かめたくてね」
そういって、新しいおもちゃを披露するように魔法を実演して見せる。指を振って一呼吸、小さな小さな炎よ出でよ。結果は無事に成功、最初みたいに制御できないテレジアはもういない。
「こんなに小さい炎でも安定できるのよ、すごいでしょ。」
力任せに振るうばかりが魔法ではない、安定・応用すべてに魔力制御が必須である。今の私は繊細な魔力も扱える超テレジア様よ。ふふん、と鼻高々。
「……レオ?」
いつもだったら、大げさに驚いてくれるレオはくしゃっと顔を歪ませ、何かを堪えているようだった。それでもひたすらに視線だけは優しい。
「……いや、なんでもない。凄いな、テレーズは。もう完璧じゃないか」
「へへ、そうでしょ。これなら武闘会でも優勝間違いなしかな」
「いや、それでも俺が優勝するよ。未来の奥さんに格好つけたいからね」
レオったら。未来の奥さんだなんて、そんな。こんなにいい人がそばにいてくれるなんて、出来過ぎて不安になってしまうわ。
「問題は、お父様とお母様が了承してくれるかどうかかな~、今まで大会観覧もさせてくれなかったし」
「大丈夫だよ、テレーズ。王と王妃には根回し済みだ。今度会ったときに話をだしてごらん」
「食えない男ねぇ、レオは。ふふ、でもありがとう」
そうして、武闘会について教えてもらった。128名によるトーナメント戦で予選あり、王国の名物行事であり国内外へ武力を示す大会であること。基本的にどんな武器も魔法も使っていいが、毒は禁止。もちろん番外戦術も禁止。審判がいる中で、武の技術を見せ合う大会と言うのが前提だ。そして、驚くことに前大会の覇者がなんとレオ自身であること! 優勝したレオ、格好良かっただろうなぁ、見たかったなぁ。
「公爵を継承するための条件だったからね、武門を納得させるには実力だよ」
やはり、この人は相当優秀みたいだ。でも、なんでそんなに早く公爵という座に着きたかったのかな。いつか教えてもらおう。
「さて、予選の前に知っておくべきことはこれぐらいかな」
ちょうど緑茶を飲み終えるとレオは帰りの手配を始める。そそくさというべきか、少し急に思えて寂しい。
「さぁ忙しくなるぞ、王女を攻略するには鍛錬を増やさないとな」
なるほど、私対策を始めるのか、ぬかりないのうレオよ。ちょっとだけ「攻略」と言うフレーズが気になった。まさかレオも転生者、と思ったが単純に私を打ち負かそうとしているのだろうと思った。なんでもゲームに結び付けようと考えてしまう癖が抜けない。
「テレーズ、強い好敵手が見つかって嬉しいよ、必ず勝つから覚悟はしておいて」
「それは私の台詞よ、レオ」
ごきげんよう。お茶会に合わせた爽やかな宣戦布告であった。
果たして、自分の実力はどこまで通じるものか。不安はない、駆け出したいような気持ちは止まらない。
この人なら私の全力も受け止めてくれるんじゃないだろうか。淡い期待を持ちながら去り行くレオを見つめた。




