夏の二人 3
そのまま話をしていると、ララとリリがピンク色で可愛いお揃いの水着姿で近付いてきた。こう、全く同じものを身に付けているのを見ると、区別がつかない程ではないけれど改めてとても似ていると感じる。
二人はトリカさんを見て、久しぶりと声をかけていた。すっかり仲良くなっているみたい。この様子を見るとトリカさんは普通の楽しい人。
周りと違うのは怖いものが多分なさそうなところくらいしか思いつかない。それはそれでかなりの違いだという気もするけれど。
きっと、わたしたちが見ているのはリラックスしている時のトリカさん。忙しいと言うよりは本気の彼女を見た人の噂なのだろう。
「トリカさん、あっちでソーチャたちとボール遊びしましょ!」
ララがぴょんぴょんはねながら指をさす。ジードルとソーチャがボールを投げ合って遊んでいた。遊んでと言うより、何かの競技中に見えるくらい本格的だ。ソーチャは運動も得意だと知っていたけど、ジードルもだったのかと驚いた。
ソーチャは魔術騎士団から声をかけられていると聞いている。人材不足で本来騎士団に入れない身分であっても優秀なら規定の穴をついて入団させているらしい。
そんな彼女に肉体面でついていけるジードルは相当なもの。ついていけるどころか五分五分だ。
二人とも文武両道だ。どちらも得意ではないから憧れる。かっこいい。
……トリカさんがこの中に混ざれるイメージがない。このスピードだと逆に危ない気がする。もちろん二人なら手加減をすると思うけれど。
「これ、魔術だめだよね。多分」
当然だめだと思うけど、二対一なら魔術を使ってもちょうどいいかもしれない。二人の総合力で勝つか、トリカさんの一点集中で勝つか。ちょっとだけ気になるかも。
「だめだよ、危ないわ!」
リリが慌てたように言った。トリカさんは冗談だと笑ってごまかす。本当に、ごまかすがぴったりの言い方だった。
「ようし、あたしに任せてよ。学生相手にあたしが負けないって」
確かに魔術なら彼女が負けるイメージがわかない。ソーチャよりも強くて、ジードルよりも繊細なコントロールなのだとわたしですら数回見ただけで分かるほど、彼女は飛びぬけていた。
でも、それとこれとは話が随分違うと思う。さっそく砂に足を取られてよろめいていた。やっぱり、少し心配だ。
***
「二人とも泳がないんだ?」
プールから上がってきて、髪が濡れているキャトラがわたしたちを覗き込むように言った後、ルイカの隣に座る。
さっきと同じようにやっぱり距離を取ろうとして、結果的に自然とわたしと近くなる。きっとそこまで思い至らなかったのだと思う。
キャトラは、普段の彼女の様子にしては不自然なほどにシンプルで飾りもなく、オーソドックスな花柄のワンピースタイプの水着。
「キャトラ、なんだか普通の水着だね。よく似合ってるけど、君が選ぶイメージがなかったな」
「ノイラがね、きびしーく言ってきたのよ。ま、それにこれはダメです。着用禁止ですってなったら悲しいからっていうのもあるけど」
なるほど。確かに、そうなったらもったいない。いつか本気のキャトラの水着姿を見てみたいと思った。ほんの少しだけ。
「で、最初の質問。二人は泳がないの?」
「僕は泳がない」
そう言い切られてしまうと残念だ。いつか気が変わるのを待とう。彼だって水の中に入ったらどうして避けていたのだろうと思うはず。
「わたしは後で泳ごうかなって」
いいわね、とキャトラが言った。プールの方を一度見ると彼女は急に振り返った。
「ほら、あなたたち日焼け対策はした? 後が大変よ、怠ると」
キャトラはどこからか出してきた容器を振る。本当に、どこから出したんだろう。
「もちろんしたよ! ジードルに感謝だね」
日焼けの嫌なところはぴりぴりしたのが続くところらしい。らしい止まりなのは、まだ今のわたしが日焼けをしたことがないから。しないで済むならそれに越したことはない。
「私も普段使ってるやつ変えようかなって。普段塗ってないなら普段も塗りなさいよ」
キャトラの、人にちょっかいをかけたがるところは少し困ったところ。でも本当はなんだかんだで面倒見のいいところが好き。
「で、ルイカは?」
ルイカの方を見る。多分、していないよね。泳がないからなんて言って。
「してない」
やっぱり。大きくキャトラがため息をついた。少しわざとらしい。
「あのね、しなきゃだめよ。見た感じあなたそんなに綺麗に焼けないと思うわ。ピリピリするタイプ」
「それは嫌だけど……」
そしてキャトラの独壇場が始まった。感心する話術。なんだか違和感があるけど、間違っていない気がする。
最初から目論んでいたような準備周到さだ。
***
……そして、キャトラとルイカの話が終わり、ひとまずの合意に至ったあと。わたしの目の前には寝転がったルイカがいた。
どうやら、手が届かないところをわたしが塗ってあげたらどうかという話になったらしい。自分のことだけどぼんやりしている。
話の筋は通っていた気がするけれど、何か目的ありきのようだったような。




