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月と陽 ―欠陥品と化け物達の反逆劇―  作者: 星川宙
第二章ー攻略作戦ー
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ep9 四維のメンバー

 湊は嫌な予感を覚えて目が覚める。夢を見ていた記憶はないが体は汗でびっしょりだ。周りを見回すと|見慣れている(・・・・・・)自分の部屋(・・・・・)じゃない(・・・・)事を確認する。昨日、東條家に泊まった事を思い出す。

 気持ち悪さからシャワーを浴びたくなるも従兄弟の家とはいえ、勝手にシャワーは借りにくい。

 

 客間の1つをもう何年も湊の家として借りている。なので服やタオルなど私物もそれなりの量が置いてある。

 家に帰るよりも東條家に泊まることの方が多いぐらいだ。

 湊はタオルで体を軽く拭いて、制服に着替える。袖に手を通しながら考えるのは昨日の2人組のことだ。


「あの子は何を考えてるんだろう」


 夜神悠と名乗った少女の事を湊は考える。湊とは違い光の、表の世界を生きているような少女だった。近くにいた少年に大切にされている事もわかった。

 そんな子が、闇を、裏の世界を生きるに等しい湊に何の用なのだろうか。

 

 湊は母親の事故から母の信者に命を狙われるようになった。それを返り討ちにしている間に、いつのまにか生ける都市伝説と呼ばれるようになっていた。

 有名になると腕自慢に喧嘩を売られる。それを返り討ちにする事でさらに有名になるという悪循環に陥っていた。気づけば裏社会の住人にさえ喧嘩を売られ始めたのだ。


「湊ー、起きてるか?」


 扉の外からノック音と共に奏兎の声がする。湊は思考をやめて、部屋から出る。扉の外には制服姿で笑顔の奏兎がいた。


「おはよう、湊! 今日もいい朝だぞ」

「朝から本当に元気だよね、かな兄」


 大きな声で挨拶してくる奏兎に慣れたように湊は返事する

。そんな素っ気ない返事にも奏兎は嬉しそうに笑う。本当に元気で自分とは違う、昨日あった少女と同じ表の住人だなとぼんやりと湊は思う。


「もう食事はできてるぞ!」

「そうなんだ、ありがとう」

「作ったのは、母さんだけどな!」


 太陽のような笑顔で答える奏兎に釣られるように湊も小さく笑った。2人は階段を降りてリビングに向かう。


「湊ちゃんおはよう」


 リビングの扉を開けると奏兎の母親である東條(とうじょう)凪沙(なぎさ)が笑顔で挨拶してくる。凪砂は湊の母親の妹に当たる。湊の母親とは違い、まともな人間だ。

 温かい家庭にいると、自分も少しだけまともでいられるような気がする。


「おはよう、なぎさん」


 湊は凪沙に挨拶すると食事が用意してある自分の定位置に座る。湊が座った席の前に奏兎が座る。


「なら、私は仕事に行くから、洗い物はよろしくね」


 凪沙はそういうと、リビングから出ていく。仕事の前に朝食を用意してくれた事に湊はいつも感謝する。用意しないと湊がめんどくさがり、朝食を抜く事を知ってるからの優しさに胸が熱くなる。朝食は白米と味噌汁、焼き魚という昔ながらの和食だ。


「そういえば、昨日湊を探している2人の美男美女がいたとシノから聞いたんだが、会ったか?」

「情報漏洩元は篠宮さんだったか」


 何故2人組が自分の居場所を知っているか不思議だった。しかし、美浪が湊の居そうな場所を伝えたなら納得がいく。


「情報漏洩って」


 奏兎は笑いながら味噌汁を一口啜る。そして、喉を潤してから口を開いた。


「喧嘩を売りにきた様子ではなかったと聞いたぞ? どんな用だったんだ? シノは面白い人達と言っていたが」

「……お菓子食べながら協力して欲しいって言ってきた、変な子だった」


 少し悩んでから湊は昨日の出来事を奏兎にかいつまんで話した。奏兎はその話を聞いて笑った。


「湊を必要としてくれている人か。会ってみたいな」

「絶対に会わないで。かな兄絶対に会ったらあの子の味方する未来しか見えない」

「そうか、実は俺もそう思った!」


 楽しそうに笑う奏兎に湊は頭を抑えたくなった。言葉をご飯と一緒に飲み込む。


「他者との繋がりは大事だと思うぞ? 今、普通に関わってるのは学校でも四維ぐらいとしか話してないだろ」


 六合高校には東西南北の名を冠する苗字を持つ者がいた。


 東條奏兎。

 西宇治湊。

 南(みなみ)あきら。

 北杜(ほくと)七星(ななせ)。


 湊以外の3人は全員3年生だ。そして奏兎経由であきらと七星共知り合い、よく絡まれていた。それを見た誰かが四維と4人の事を呼び始め、有名になった。湊以外の3人の少年は学校でも有名人の人気者だ。

 

 クラスでは人気者の知り合いという事で妬まれ孤立している。しかし、奏兎は原因が自分にあるとは思ってもいない。


「四維も別に私からは話しかけてない。かな兄含めて、何故かみんな絡んでくるだけ」

「うーむ、まぁ、そうとも言うな」


 湊の言葉に痛いところが突かれたというように奏兎は唸る。湊は気にせず、朝食を食べ終えてシンクに向かい、皿を洗う。


「そろそろ、学校行く時間じゃない?」

「おっ、本当だ」


 奏兎は残っているご飯をすぐに平らげて湊と変わるようにして自分の分の皿洗いをして、水切り台に置く。


「なら、学校に行くか!」

「なんで、一緒に行くのが決定事項になってるの」


 奏兎の発言に湊は呆れたようにため息をつく。しかし、結局は一緒に行く事になるのだ。


 2人で家を出て、学校に向かい少し経つと後ろから声をかけられる。


「奏兎に、湊! おはよう」

「はよー」


 振り返ると長身の顔の整った少年と湊より背の低い可愛い顔をした少年がいた。長身が七星、背が低いのがあきらだ。


「おー、2人ともおはよう。相変わらず仲良いな」


 奏兎が2人に声をかける。


「家が隣同士の幼馴染だからな」

「腐れ縁だよ、クラスまで12年間一緒とかもはや呪いだろ」

「ひどーい、あきら。俺ら親友だろ」


 楽しそうに話す2人を湊は無視して歩き出そうとする。しかし、2人にそれぞれの肩を掴まれる。


「何、無視しようとしてんだよ。湊」

「湊ー、無視はひどいよ?」


 あきらと七星にほぼ同時に声をかけられ、湊はため息をつく。


「……おはよう、北杜さん、あきら」

「だから、なんで俺だけ呼び捨てなんだよ!」

「年上に思えないから」

「っんだとぉ!?」


 あきらが吠えるのを無視して、湊は学校に向かった。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、水曜日20時更新予定です。


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