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月と陽 ―欠陥品と化け物達の反逆劇―  作者: 星川宙
第二章ー攻略作戦ー
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ep8 2人の食卓

 朝。太陽が昇り始めた頃、夜神家の食卓で悠は椅子に座りながら、食事を待っていた。悠の視線の先にはエプロン姿で料理をしている柚がいた。


「悠、もうすぐ完成する。他に食べたいものはないか?」

「んー、とりあえず大丈夫かな。起こしちゃってごめんね」

「大丈夫。悠の食べるものは俺が作りたいから」


 自然と目覚め、空腹を感じた悠は柚の部屋を訪れ、お腹が空いたと伝える。悠が部屋に入った気配で目覚めた柚は笑顔で了承した。そして、2人でキッチンに移動して、悠希望のパンケーキを柚が作っていた。

 夜神家のキッチンには燃費の悪い悠の為に大量の食材が買い込まれている。柚は慣れたように小麦粉からパンケーキを作っていく。


 高校入学を機に悠の両親は悠と柚の為に学校の近くに1軒屋を準備した。まだ中学の頃に受験校を決めると、彼女の父親はすぐにその学校近くの土地を買った。そして悠達の意見を聞きながら家の設計を相談し、入学に間に合うように家を完成させていた。

 それだけで夜神家の財力がわかる。

 そんなわけで、今この家では悠と柚が2人暮らしをしている。普通なら親戚とはいえ男女2人と両親がまず止めるだろう。しかし、2人はまるで姉弟のように育っていた為、柚がいるなら安心だと笑顔で送り出されていた。


 そんなわけで、料理担当の柚は2人暮らしが決まった日から夜神家専属の料理人から料理を習いプロ並みの腕前を手に入れた。全ては悠の為に。


「悠、出来たぞ」


 嬉しそうにエプロンを外した柚が悠の前に10段のパンケーキを2皿置く。そして、悠の向かいの席に控えめに2枚乗せた自分用の皿を置いた。

 悠は柚が席に座るのを待つ。そして、柚と一緒に手を合わせた。


「いただきます」


 2人の声がハモったことに笑い合って、それぞれパンケーキを食べ始める。テーブルには生クリームやフルーツが置いてあり、好きにトッピングできる様になっていた。

 まず、何もつけずに悠は1口サイズに切ったパンケーキを口に入れる。


「んー、美味しい。流石柚だね。私もう柚がいないと生きていけないよー」


 口の中のものを咀嚼し終わってから悠は満面の笑みを柚に向ける。その顔を見て柚も嬉しそうに微笑んだ。


「俺はまだまだだよ、料理長の方がまだ美味い。でも悠にそう言ってもらえて嬉しい」


 お互いにニコニコと笑いながらパンケーキを食べ終える。

 トッピング用に置いてあったフルーツも全て悠の腹の中に入る。

 2人で笑い合って手を合わせる。そして、食べ終えたお皿を悠が運ぼうとすると柚が手で制する。


「いつも言ってる。俺が片付けるから、悠は座ってて。食後のコーヒーでも入れようか?」

「もう、そんな執事みたいなことしなくていいって」

「俺がしたくてしてる。悠のためになる事は全部したい」


 悠が頬を膨らませるが、柚はニコリと笑いながらも譲らない。


「本当に私、柚がいないと何もできない人間になっちゃいそうだよー」

「俺はそれでも構わない」

「私が嫌なの! 雪との定期連絡で鼻で笑われる」


 雪という名前を聞いて、柚の笑顔は崩れた。嫌そうな顔をしながら口を開く。皿を洗う手が止まる。


「別にあいつと連絡取らなければいい。そもそも俺はあいつが嫌いだ」

「もぉ、本当に犬猿の仲なんだから。でも雪も私達と同じ"空白の世代"だよ。見捨てられ出来損ないと馬鹿にされているもの同士手は取り合わないと」

「だとしても、俺はあいつが嫌いだ。人の事を化け物と言うし、悠との時間をとる」

「私は2人に仲良くして欲しいんだけどなぁ」


 遠く、御影島にいる同い年の親戚を思い出しながら悠は呟く。柚は雪と直接会ったのは1回だけだ。しかし、とても相性が悪い。同じ出来損ないと括られている以上、仲良くして欲しいなと悠は思っているが、2人とも伝えると嫌そうな顔をする。


 立花(たちばな)雪(ゆき)。悠と柚と同じ夜神家の空白の世代といないものとされている最後の1人だ。悠は『欠陥品』、柚は『化け物』、雪は『悪魔』と親戚ないから笑い物にされている。雪はとある事情で御影島に渡った。以降も定期的に連絡は取り合い、縁は繋いでいる。


「あいつは壊す側だ。いつか悠を傷つけるかもしれない」

「そんな事ないよ。雪は無意識な身内贔屓あるから、身内認定してる私には何もしないって」


 笑いながら答える悠に柚は納得がいかない様子だ。皿を洗いながらも不機嫌な柚に、悠は仕方ないなぁと思いながら椅子から立ち上がり、柚を後ろから抱きしめる。


「ーーっ!! 悠、いきなり何?」


 驚いて落としそうになった皿を持ち前の反射神経で持ち直したのを目の端で捉えた。流石だなぁと悠は思った。

 そして、頭は撫でれないので代わりに柚の背中を撫でる。


「よしよし、心配してくれたんだね。ありがとう、柚。そんな柚が私は大好きだよ」


 悠の言葉に柚のうなじが赤く染まった。可愛いなと悠は思う。柚が皿洗いを終えたのを確認して、悠は柚から離れる。

 さっきの話は終わりだと言う様に明るい声を出す。


「じゃ、今日から西宇治さん攻略作戦頑張ろうね、柚」

「あいつがまだ必要かは理解できないけど、悠が言うならわかった」


 そして2人は時計を確認し、学校へ行くための準備の為にそれぞれ部屋に戻った。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、水曜日20時更新予定です。


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