ep5 校門前で
放課後。有言実行とばかりに悠は柚を連れて六合高校の校門前まで来ていた。もぐもぐと道中買い足した大きなメロンパンを食べながら校門の前で他の生徒が通るのを待っていた。
授業終わりに向かった為、帰宅部の人達は既に帰っており、校庭で運動部が部活活動に励んでいた。
「タイミングよく、誰か通りかからないかな?」
周りの目を気にしない悠は校門に背中を預けながら食べ終えたメロンパンの袋をゴミ袋に入れて、新しいパンを取り出す。今度はジャムパンだった。袋を開けて、幸せそうにパクパクと食べる。その横では同じ様に校門に背中を預けた柚がそんな悠を優しい瞳で見つめていた。
「難しいんじゃないか? いっそのこと中に入る?」
「流石に、制服違うからバレちゃうよ。第一村人来いー」
そんな会話を交わしながら、すでに30分はゆうに超えていた。しかし、悠は諦める気がなかった。
しばらくすると、ショートカットの女学生が校門から出てくる。
「あの……」
悠は彼女の前に立ち塞がり声をかける。
「ん? どうした? その制服は四維高校だよな?」
不思議そうに立ち止まった少女に、悠はいい人と抱きつきたくなったが、今日の休み時間のひと時を思い出して、ぐっと堪える。そして、彼女の目をしっかりと見る。顔は整っており、人懐っこい笑顔を浮かべている。いい人そうだなとまた悠は思った。
「私達、西宇治湊さんに用があるんです。どこにいるか知ってますか? もしくは四方のかたでもいいんですが」
「ん? 西宇治ならまだ校舎にいると思うぞ? そっちの少年が決闘でも挑みにきたか?」
「違います! 噂を聞いて会ってみたくなったんです」
「そうか、よく決闘だなんだと人が来るからそう思ってしまった。お詫びに呼んでこようか?」
「いいんですか! 優しい人!」
思わず抱きしめようとした悠に気付いたのか後ろから柚に持ち上げられる。
「悠、流石に初対面の人を抱きしめるのはよくない」
「はっ! そうだった。柚止めてくれてありがとう」
「ははっ、面白い2人だな。ちょっと西宇治呼んでくるからここで待っていてくれ」
「ありがとうございます」
親切な少女にお礼を言い、悠と柚は先程と同じ体勢で待つ。
「いい人がいて良かったね」
「そうだな。でもその西宇治って奴に何の用なんだ?」
「あれ? 柚に理由話してなかったっけ?」
柚の疑問に悠は首を傾げる。確かに六合高校に行くことは言ったが、理由は話してなかったなと思い当たるとえへっと笑う。
「夜神を潰す。噂がどこまで真実かはわからないけど、そんなにすごい噂をされる人ってことは凄い人なんだよ。だから協力して欲しいなって」
「夜神を潰すのは俺がいればいいだろ。悠が計画を立てて俺が実行それで十分」
「それじゃダメだと思う。外の力も借りないときっと潰されるのは私達になる。例え私達がダメでも外部を巻き込めば夜神の何かが歪むかもしれない。私はそれに期待したいの」
柚の言葉に悠は考えながら自分の考えを伝える。きっと今までも夜神が間違ってると自分達と同じ様に考えた人はいるはずだ。しかし、それでもなおも権力を持てていると言うことは内々に処理されたことになる。
強くて、普通では消されない。そんな外部の存在が夜神という巨大な悪に立ち向かう為には必要だと悠は考えていた。
そのタイミングでの湊の噂だ。悠の直感は当たる。きっと夜神への切り札になる。噂話に聞き耳を立ててる時から悠の直感はそう叫んでいた。
「西宇治湊さん、いい人だといいなぁ」
「俺は、悠とはるさんがいればあとはどうでもいい」
「もう、柚はまたそういうこと言う。外の世界の人と交流するのも大切だよ?」
「……悠がそう言うなら、頑張る」
「うん。いい子だね、柚」
悠は柚の頭を撫でたい衝動に駆られ、柚をじっと見る。その気持ちが伝わったのか、柚はしゃがんでくれた。ちょうど悠の撫でやすい位置に頭がある。
悠は迷わずに柚の頭を撫でるのだった。
少しすると先程の親切な少女が戻ってきた。しかし1人しかいない。不思議に思い首を傾げると、少女は両手を合わせて頭を下げた。
「すまない。私が帰る時はまだいたんだが、用事が終わって裏口から帰ったみたいだ。あいつはよく、裏口から帰るんだよ。代わりに西宇治がいそうな場所を教えるから、許してくれないか?」
少し芝居がかった様な喋り方を少女はする。どうやら素はこちらの様だ。悠は微笑む。
「ありがとうございます、助かります。えっと……」
「ああ、篠宮だ。篠宮美浪だ」
「篠宮さん、ありがとうございます。私は夜神悠です。で、こっちが」
「……八神柚」
美浪と悠が自己紹介をしているのを見て、柚も渋々名乗る。悠はよくできましたと柚に微笑みかけた。
「夜神さんに八神君だな。私の知り合いに西宇治と仲がいい奴がいるから、探していたことを伝えておこう。用件も聞いておこうか?」
「それは大丈夫です。直接会って話したいので」
「そうか。西宇治はよく六合公園にいる。今日もいるかわからないが、確率は高いと思うぞ」
「六合公園ですね、ありがとうございます」
「お役に立てなくて、すまなかったな。出会えることを祈っているよ」
美波はそう言って、その場をさった。
悠は美浪の後ろ姿に頭を下げる。そして柚を振りえった。
「柚、六合公園行こうか。確か大きな公園だったよね?」
「うん。昔はるさんに連れていってもらったことあったよね」
「そうだったね! 私の直感がそこにいると伝えているよ、きっと会える」
嬉しそうに話す悠に柚も笑う。
「悠が嬉しいと俺も嬉しい」
2人は笑い合いながら次なる目的地へと向かった。
運命の出会いがそこにあると悠は直感がそう告げていることに口角を上げた。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、水曜日20時更新予定です。
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