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月と陽 ―欠陥品と化け物達の反逆劇―  作者: 星川宙
第二章ー攻略作戦ー
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ep18 親戚からの忠告

 悠はサンドウィッチを咀嚼しながら、奏兎を確認する。

 第一印象はどこにでもいる明るい少年だったが、今は腹の底が見えない。

 どうしたものかと悠はまた一口、サンドウィッチを頬張る。


「とりあえず、最終目的は夜神を潰すこと。その前に前哨戦として湊の良心の問題を解決しようと思っています」


 駆け引きや嘘は通用しない、ここで初手を間違えたら協力を得られない可能性があると悠の直感が叫んでいた。

 だから、詳しい内容は伏せながらも悠は嘘をつかずに話した。


「ふむ」


 奏兎は考え込むように窓から外を見つめていた。少しの沈黙の後に、アイスコーヒーを口に運ぶ。


「夜神というと、常闇会《とこやみかい》に並ぶ日本の巨悪の2本柱のことか?」

「……えっと、待ってください。なんでそんなこと知ってるの?」


 予想外の角度から飛んできた剛速球に悠は固まる。隣に座る柚も警戒した様子で奏兎を睨み付けている。

 普段なら柚の様子をすぐに諫める悠も奏兎から目を離せない。


「一応、表向きは夜神は善良な富豪だと思うんだけど? それに、常闇会は危険すぎてメディアにも取り上げられてないはず……」

「昔、ストリートチルドレン的なところに入り浸っていたことがあってな。その時に色々日本の勢力図を聞いたんだ」

「……待って、え? ちょっと、あまりの衝撃が……。混乱するってこんな感じなんだ」

「悠、大丈夫か?」


 頭を押さえながら奏兎の言葉を咀嚼している悠に、柚が背中をさすりながら心配そうに問いかける。

 悠は何度か深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、机に隠すようにして携帯を取り出して、雪へとメッセージを送る。


 ――湊の従兄弟、東條奏兎についての情報が欲しい。


 それだけを端的に送信すると携帯はポケットへとしまう。

 これで、タイミングは分からないが情報が入るはずだ。悠は顔を上げて奏兎を見る。


「奏兎さんが知っているってことは、湊も知ってるってこと?」

「いや、湊は知らないぞ。危険なことは情報共有しないことにしているからな」

「……奏兎さん、よく今まで無事でしたね」

「まぁ、常闇会に知り合いがいたりするからな」


 笑顔で奏兎がまた爆弾を落とした。悠はさっきまで湊と仲良くなるための当たりを引いたとのんきに思っていた自分を殴りたくなる。

 表舞台にいながら、裏と繋がりのある、ある意味で夜神を潰すのに利用できる札を引いた。しかし、その札が上手く利用できる保証はないという綱渡り形式だ。


 どうしたものかと考えていると悠の携帯が鳴った。画面を確認すると、珍しいことに雪からの電話だった。

 メールでないことに違和感を覚えながらも、柚を見る。

 それだけで柚には伝わったようで、一度席を立つ。


「すみません、急ぎの電話がかかってきたので少し話してきます」

「わかった。ゆっくりでいいぞ」

「柚、変なことはしないでよ?」

「わかってる」


 悠は2人にそう伝えると、店を出た。柚と奏兎を2人きりにすることに若干の不安を覚えたが、今は電話で情報を得ることが先だ。

 店を出て、人気の少ない路地を曲がるとコンクリート塀に背中を預けながら電話を取る。


「……急に電話してびっくりしたよ、どうしたの?」

『いや、どんな流れで東條奏兎の情報が知りたくなったのか気になって』

「ほら、昨日湊の情報もらったでしょ? もう一押しだから周りの人を巻き込もうとして釣れたのが奏兎さんで」

『悪いことは言わない、疫病神でトラブルメーカーだから、関わらない方がいいと思う』


 電話口の雪はあからさまに嫌そうな声だ。もしかして、奏兎と知り合いなのかと思ったが、余計なことを口出しして電話を切られたら困るため、悠は言葉を飲み込んだ。


「でも、事情を話したら協力するって提案はしてくれてるんだよね、それに裏社会に通じているなら扱い方さえ間違えなければかなり使えると思う」

『……別にそう判断するなら、止めはしないけど。こっちとしてはやめておいた方がいいと思うとだけは言っておく。……で東條奏兎の情報だっけ?』


 雪が呆れたような、どこか諦めたような声で本題に入る。


「メールでもいいよ?」

『わざわざ電話してるのにメールに切り替えるのは面倒』

「それは一理あるね。今、柚と奏兎さんを2人にしていて柚が心配だから早めにお願いしていい?」

『番犬と2人きりか、確かに問題でも起きそうだな』


 電話越しに微かな雪の笑い声が聞こえてきた。


『なら、手短に。一応東條家は老舗の和菓子店の長男。一応上に姉もいるみたいだ。交友関係も比較的良い。中高と部活で弓道部に入っていて全国レベルで雑誌にも取り上げられている一部では有名人だ。西宇治湊のことは妹のようにかわいがっている。特に裏社会との繋がりはないな。幼少期に少しだけ関わっているぐらいだ』

「でも、さっき常闇会に知り合いがいるって言ってたけど?」

『……はぁ』


 悠が疑問を伝えると盛大なため息が聞こえてきた。


『それに関しては、幼少期に知り合った下っ端だった奴とそのまま繋がりを持っているらしい。あんな性格だが、人誑しな一面があるそうだ』

「そっか、追加でまたわかったら教えてね」


 悠は電話を切る。そしてしばらくは通信の切れた携帯を見つめた。

 幼少期から今に至るまで、人誑しの性格があるとしても裏社会の人間との繋がりが途切れていない。

 その肝の据わり方は、夜神の問題に巻き込んでも問題ないのではないかと思えた。修羅場をくぐり抜けてるか否かで、利用価値があるかもしれない。

 悠は雪がトラブルメーカーと称したことすら忘れて、戦略を練りながら店へと戻った。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、水曜日21時更新予定です。


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