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月と陽 ―欠陥品と化け物達の反逆劇―  作者: 星川宙
第二章ー攻略作戦ー
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ep17 喫茶店での探り合い?

 悠は話しかけた奏兎を観察する。やはり昔どこかで見たことがある気がするなと思いながらも、表情には出さずに仮面(笑顔)を貼り付ける。


「ん? 湊の友達か?」

 

 奏兎は周りにいた友達に先に帰ってと声をかけてから悠に向き直ると警戒する様子もなく、笑顔で話しかけてきた。


「はい。まだ友達じゃなくて、友達になりたい……何ですけどね?」

「おおっ、もしかして君達が湊やシノが言っていた、変な子か!」

「おい、悠は変じゃない」


 奏兎と悠の間に柚が割って入り、睨み付ける。奏兎は気にもせずにニコニコと柚に手を差し出す。


「俺は東條奏兎。湊と友達になるのは、大歓迎だ」

「東條さんは、湊とはどういうご関係で?」

「奏兎でいいぞ。それに敬語じゃなくていい、堅苦しいのは苦手なんだ。それと湊とは従兄弟だな」

「従兄弟! ……柚、柚。私達引きがいいよ」


 奏兎の自己紹介を聞き、悠は思わず柚の裾を引っ張って小声で微笑む。


「そうだな」


 柚も嬉しそうに笑い返してきて、悠の笑顔も深くなる。

 

「仲がいいんだな」


 その様子をニコニコと奏兎が見ていた。悠は柚の裾から手を離して、奏兎を見る。


「私達も従兄弟なんだ。小さいときから家族みたいに育ってて……と、違うや。こっちも自己紹介しないとです。私は、夜神悠。で、こっちが八神柚」


 悠は柚の前に移動して奏兎に完璧な作り笑いを向ける。


「私達、湊と仲良くなりたいんだけど、上手くいかなくて、何かいい方法とか知ってます?」

「おっ、湊と仲良くなりたいとは嬉しいな、俺で良ければ相談に乗るぞ」


 2人は自然と固い握手をする。柚はそれを険しい表情で睨み付けた。



 ◇◇◇◇



 校門前でいつまでもだらだらと話すのはよくないなと、自然と近くにある喫茶店へと移動した。

 比較的空いている喫茶店で隅の席を確保するととりあえず、アイスコーヒーを3つ頼む。

 悠はついでとばかりにメニュー表を眺める。柚はその様子を楽しそうに見つめ、奏兎はそんな2人の様子を頬杖をつきながら見つめていた。


「悠、頼むなら呼ぶぞ」

「うん、お願い。……あっ、奏兎さんも何か食べます?」

「いや、俺は飲み物だけでいいぞ」

「わかった。柚」

「うん」


 悠は柚の名前を小さく呼ぶ。それだけで通じたようで、柚は店員を呼んだ。そして、悠は手当たり次第に軽食を頼む。最初は微笑ましそうに見ていた奏兎も3品目当たりから、目を丸くする。

 10品ほど注文し、悠は口を閉じた。店員の復唱を聞きながら、笑顔で頷く。

 去って行った店員を確認してから、奏兎が控えめに声をかけてくる。


「なぁ、あんなに頼んで大丈夫なのか?」

「問題ないよ。私、燃費の悪い胃袋ブラックホールだから」

「いつもより、少ないよな。遠慮したのか?」

「いや、食べて足りなかったらまた頼もうかと」

「そうか」


 若干奏兎が頬杖をつきながら引いた目で悠を見ていたが気にしない。

 少しするとアイスコーヒーと頼んでいた軽食が机の上に並ぶ。

 店員が離れたのを確認すると悠はアイスコーヒーにミルクとガムシロを入れてストローでかき混ぜながら本題を切り出す。


「それで、本題なんですけど」

「急に来たな」


 ストローに口をつけていた奏兎が苦笑する。しかし、悠は気にせずに続ける。


「私は湊と友達になりたい。その思いに嘘偽りも不純な思いも紛れてはいないんですよ。でも、最初は利用する気満々だったので初手を思いっきり間違えちゃったんですよね」

「……それを、俺に言って良いのか? 流石に大事な従兄弟が利用されるとなると話が変わってくるんだが」

「隠す方が正解だってのは分かってますよ? でも、私達にまず必要なのは信頼な気がして……。最低限には誠実な対応をしないと、奏兎さんは協力してくれないですよね?」


 悠は軽食のサンドウィッチを食べながらまっすぐに奏兎を見る。少し呆けたような顔をした奏兎は少しすると声を出して笑った。


「あははっ。なるほどな。さっきから思っていたが悠は俺の昔馴染みと考えが似てるな」

「そうなんですか? 会ってみたいな」

「もう10年以上俺も会ってないからなぁ」


 奏兎は懐かしそうに笑う。どこか寂しそうな瞳に、深く探るのは良くないかと悠はサンドウィッチを食べながら判断する。柚は話に興味がないようで、つまらなそうな顔をしながらアイスコーヒーをちびちびと飲んでいた。


「もう一人も、メールはするんだけど会うのは面倒だと断られてな。まぁ、だいたいの生息地は把握してるから会おうと思えばいつでも会えるんだが」

「……なんというか、面白いですね、奏兎さん」

「仲良くなるとよく言われるんだよな、見てる分には面白いって」

「どこがだ……。ただうるさいだけだろう」


 悠と奏兎が仲良く話しているのが気に入らなかったのか柚がぼそりと呟く。何故か、奏兎の顔が輝いた。


「おっ、その感じも俺の昔馴染みにそっくりだ」

「……なんなんだ、あんた」


 柚が不機嫌さを隠しもせずに奏兎を睨むが、逆に嬉しそうに笑い返され、柚が引いていた。横目でその様子を見ながら、珍しいなと悠はこっそりと笑う。


「君達2人とも、昔馴染み(親友)に似ていてなんか、な。悪い奴ではないと思えてきたよ。……湊を何に利用しようとしているか教えてくれるか? 内容によっては俺も協力しよう」


 笑顔を引っ込めて、真剣な顔で悠と柚を見る奏兎を観察しながら、悠は湊よりも奏兎の方が厄介そうだなと、頭の中で戦略を練りながら次のサンドウィッチに手を伸ばした。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、水曜日20時更新予定です。


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