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月と陽 ―欠陥品と化け物達の反逆劇―  作者: 星川宙
第二章ー攻略作戦ー
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ep13 湊 VS 柚

 湊は下駄箱を出ると、人の流れには乗らずに裏門に向けて歩く。待ち伏せしているのは十中八九、悠だろうと確信出来た。

 校舎の裏へと回り、木々の茂った裏門へと辿り着く。周りを確認し、誰もいないことにホッとしながら、門を通ろうとした瞬間、横から急に殺気を感じ、思わず前に飛び退く。


「……」


 そして、すぐに振り向くと先程まで湊が歩いていた場所にスマホを片手に持った柚が立っていた。


 番犬なら番犬らしく、飼い主から離れるなよと湊は内心で舌打ちした。柚はゆっくりと湊に近付いてくる。逃げるのは難しいと悟った湊は持っていた鞄を横に投げ捨てた。


「アンタは私に用ないよね?」

「ああ。だが、悠に頼まれた。だから、悠が来るまで足止めするのが俺の役目だ」

「本当に、自分の意思ないわけ?」

「悠の為に生きる。それが俺の意思だ」


 柚は一気に湊との距離を詰めると、足止めのためか、腕を取ろうと伸ばしてきた。

 湊は後ろに避けながら、柚の意識を奪おうと、首に目掛けて足を蹴り上げる。


 しかし、柚は上体を後ろにずらして避ける。湊の蹴りは空を切り、風を切る音だけが響いた。

 お互いに相手の出方を伺い、一歩も動けなくなる。


 湊は柚の一挙手一投足を見逃さないように瞬きすら控える。相手も同様のことが空気から伝わる。喧嘩はよく売られるため、買ってはいたが自分と同等の実力者の相手は初めてだ。

 しかし、長引かせれば悠が来る可能性がある。柚は現れた際にスマホを使用していたのを思い出した湊は早く終わらせないとと少し焦った。


 思考を巡らせながらも、視線は動かさない。1m程しかお互いの距離は空いていない。息遣いが自分のものか、柚のものかわからない。

 どうするか、考えながら柚の出方を伺っていると急に追い風が吹く。あまりの強風に向かい風となった柚は一瞬瞳を閉じた。


 その隙を湊は見逃さない。一気に前に出て、柚の右腕を掴むと、そのまま、自分の足を柚に引っ掛けてその勢いを殺さずに、投げ飛ばす。


「ふっ――」


 息を吐きながらすぐに柚の方を向くと、受け身を取ったのか既に立ち上がっていた。


「やるな」


 そう言いながら、柚は両腕を前に構える。無意識に湊はごくりと生唾を飲み込む。

 臨戦態勢に入ったことを把握した。湊もすぐに応戦できるように構える。

 そして、また無言の探り合いが始まる。


 しかし、悠が来るまでの足止めの柚と悠が来るまでに片をつけたい湊だと、モチベーションが違う。

 湊はすぐに姿勢を低くし、柚に向かって走る。そして、地面に両手をつき、脇腹に向かって回し蹴りをお見舞いする。

 柚は間一髪、腕で脇腹をガードする。前へのガードが緩くなったのを確認し、湊はその反動で逆立ちをした状態になり、両足を柚の首の後ろに回す。


 そして両足に力を入れ、絞めながら柚の頭を地面に向けて振り下ろす。


「――っ!!」


 しかし、柚が上体を勢いよく後ろに倒したことにより、湊が今度はバランスを崩す。すぐに地面を押すようにして手を離して腹筋を使い、上体を前に動かす。今度は柚がバランスを崩して、そのまま後ろに倒れる。

 湊は柚の腹の上に座る形になった。湊はニヤリと笑い柚の首から両足を外す。


「私の勝ちみたいだね」

「いや、俺達の勝ち(・・・・・)だ」

「はっ?」


 勝利を確信した湊に対して、柚は湊を見ず、頭を地面につけた状態である一点を見ていた。

 湊も柚の視線の先を見た。


「――っ」


 そして、自分の負けを認めた。そこにはスマホを見ながらゆっくりと湊達の方に歩いてくる悠がいた。

 見事に柚の時間稼ぎに敗北したのだ。

 

 湊はため息をつき、柚の上から退く。すぐに柚は立ち上がると悠に近付く。


「お疲れ様、柚。ありがとね」

「問題ない」


 笑顔で少し屈んだ柚の頭を悠は撫でていた。先程までの戦闘の緊張感は既に柚から消えている。

 湊は先程、投げた鞄を拾うと、土埃をはたく。


「それで、朝の続きでもしにきたわけ?」

「うん、そうだよ?」


 悠は柚を撫でるのをやめて、湊を見る。変わらない笑顔に、思わず1歩後退ってしまう。それに気付いた悠がすぐに間を詰める。

 そして握っていたスマホの画面を覗きながら、口を開く。


「ごめんね、湊。知り合いに頼んで調べさせてもらったんだけど」

「調べた? 何を?」

「湊の過去を」


 優しく話す悠に、湊は恐怖を感じた。過去とはどこまでのことだろうか。


「うちも大概一族はイカれてるけど、湊の両親もヤバいね。私思ったの。うちの問題に巻き込むなら、湊の問題も解決しないといけないって!」

「……な、なにを、言って、いるの?」


 笑顔で言葉を紡ぐ悠が得体の知れないモノに見えて、無意識に体が震える。すぐに右手で左手を押さえて、震えを止めようと湊は必死だ。しかし、そんな湊の心情など知らないというように悠は続ける。


「知り合いに頼んで、湊のお母さんの居場所わかったから、冤罪を晴らしに行こう!」

「――っ」

「ん? 冤罪?」


 言葉も出ない湊に変わり、おとなしく悠の話を後ろで聞いていた柚が首を傾げる。悠は湊から視線を逸らし、柚に湊の過去について説明を始めた。


 母親に実験台にされたこと、そして自分の死を装って今も検証をしていること。


 なんで部外者がそこまで知っているのか、湊は朝とは別の恐怖で動くことができなかった。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、水曜日20時更新予定です。


続きが気になりましたら、ブックマークで応援していただけると非常に励みになります! ぜひ、よろしくお願いします!

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