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月と陽 ―欠陥品と化け物達の反逆劇―  作者: 星川宙
第二章ー攻略作戦ー
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ep11 放課後の待ち伏せ

 5限目の授業が終わり、クラスメイト達は6限目の準備を始めている。そんな中、悠は迷わずに帰り支度を始める。その様子を横目で見ていた柚も悠に倣う。


「夜神さん、具合悪いの?」

「うん、ちょっとね。先生には伝えてあるから大丈夫」

「悠、準備できた」


 前の席の少女に悠は微笑みかけると鞄を持つ。柚も準備が出来たようで悠に笑いかける。悠は頷くと立ち上がり、扉へと向かう。すぐに柚がついてくる気配がした。

 2人は人の少ない廊下を並んで歩く。途中で教室に向かう教師とすれ違って頭を下げる。


 何か言いたげな顔をしていたが、教師は口をつぐんだ。

 夜神に逆らって面倒ごとになる方が嫌だよね、わかると悠は勝手に同意して頷いた。

 そして靴を履き替えると校門を出て、今朝ぶりの六合高校に向かって歩き出した。




◇◇◇◇




 六合高校の校門前に立ち、まだ下校時間になってないことを確認して悠は安堵の息をこぼす。そして前回の反省を踏まえることにした。


「柚、二手に別れるよ。1人はこのまま校門、もう1人が裏口。柚はどっちがいい?」

「――っ! 悠から離れろっていうのか!?」

「うん、そうだよ?」


 この世の終わりのような顔をする柚に悠は首を傾げながら言う。目的のためには離れるのは当たり前だと悠は思っているが、違うのだろうかと不思議に思う。

 悠と柚は一緒にいる時間は長いし、多い。人生の大半を一緒に過ごしてると言っても過言ではない。それでも2人は違う人間だ。考えが全て同じなわけではないと悠は理解している。


 しかし、柚にとっては違うようだ。悠の言葉には全て従うと思っていた柚が嫌がっている。それが驚きだった。

 悠が考え込んでいると、柚は捨てられた仔犬のように瞳を潤ませて真っ直ぐと悠を見つめてくる。普通の人間だったら、罪悪感を覚えるのかなと悠は考えた。

 でも、悠は効率と損得勘定で動く人間だ。どうやって柚を言いくるめるか鞄からパンを取り出し、食べながら考える。


「悠! 外は危険だ。俺が離れている間に何かあったらと思うと気がおかしくなる!」

「流石に大丈夫だと思うよ? ここは大通りで車の通りも多い

。うん、私が校門見張るから、柚は裏門行ってもらっていい?」

「悠!!」


 柚の言葉を適当にいなしながら伝える。悠の中ではもう決定事項となっていた。

 不満そうに頬を膨らます柚に悠は安心させるように笑いかけた。


「大丈夫。危険はないよ。護身グッズは持ってるし」

「でも、遙さんが俺達以外の男は狼だって……」

「その意味でも大丈夫! ……ってかお兄ちゃんは、柚に何教えてるの」


 柚の背中を押して、裏門に向かうようにもう一度伝える。柚は後ろ髪を引かれるように何度も悠を見るも、されるがままに押されている。


「本当に大丈夫だよ、柚。私が存在感消すの得意なこと知ってるでしょ?」


 悠は笑顔で伝えると、柚が無言になる。そして少し迷う素振りを見せてから、不服そうに頷いた。


「ありがとう、柚!」


 悠は笑顔で柚にお礼を言う。


「わかったけど、危ないことあったらすぐに連絡して」

「わかってるよ。柚も裏門から湊出てきたら、すぐに連絡して引き止めてね?」

「うん、最悪武力行使は?」

「……うーん、まあ湊強かったし、お互いに怪我しない程度にならいいかな?」

「わかった。悠も仮にあいつが来たら連絡して」


 悠がパンを咥えながら、親指を立てると柚は何度も悠の姿を確認しながら曲がり角へと消えていった。


「さてと」


 悠はパンを食べ終えるとビニール袋にしまい、鞄に入れる。学校で知り合いに六合高校の造りについて確認してもらい、正門と裏門の2以外で出入りができないことは確かめている。

 悠は校門の壁に背中を預けると、携帯を取り出した。

 そして、どこかに電話をする。数回のコールで相手は出た。


「あっ、雪? お願いがあるんだけど西宇治湊について調べて欲しいんだ。私達と同じ高1で、詳しくはメールで送るね! じゃ、また定期連絡で」


 悠は言いたいことだけ言うと携帯を弄り、メールを作成する。きっと、用件だけ伝えて切ったから怒ってるだろうなともう1人の空白の世代とラベリングされている親戚を思い浮かべて笑う。

 雪の情報網は信用できる。情報は戦略を有利に進めるのに役に立つ。悠は自宅じゃなく夜神の総本山にいる時と同様に気配を消す。


 悠のことを舐めている夜神の人間は気配を消すと悠の存在を気付かない。だから、平気で権力争いや自慢話のノリで裏話をする。それを聞き、悠はよく情報収集をしていた。だから気配を消すことに関してはかなり自信がある。

 

 だから、きっとバレないだろうと悠はメールを打ち終わるとまた鞄からパンを取り出して食べ始める。

 それからなんともなしにボーッと校門を横目で確認する。数人の生徒が門を通り始める。下校時間になったんだと悠は食べかけのパンを数口で食べ終える。


 そして校門に背中を預けながら、湊が通らないから確認をする。

 なんとなく、今朝の宣言から裏門から帰る気がするんだよな。と思いながら、携帯を確認する。そのタイミングで柚から連絡が入った。


「柚、きた?」

『うん。とりあえず足止めするから、ゆっくりこっち来て』


 柚の言葉にクスリと笑い、電話を切ると悠も裏口へと向かった。柚が逃す可能性は1ミリも思わず、ゆっくりと歩いた。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、水曜日20時更新予定です。


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