【37】罪悪感が支配した繊細な素顔。〜オラクル、ハリウッドで動く〜
そして、ハリウッドに向かう飛行機の中で、オラクル一同に、S.A.G.E.ロサンゼルス支局から、シャーロット・アルマンを無事に保護したと連絡があった。
シャーロットは向精神薬を大量に摂取していたが、胃洗浄を行っているという。
イーサンが静かに口を開く。
「不幸中の幸いだったな。
もし、酒で薬を飲んでいたら、危うかった」
チームの皆も頷く。
カリスタが静かに付け加える。
「向精神薬を飲んでいたのね……。
きっと、飲まない日の方が多くて、溜め込んでたんだわ。
今まではお酒に頼っていたから」
「それなんだがなあ……」とベックが腕を組む。
イーサンが「何でも良い。聞かせてくれ」と促すと、ベックが話し出す。
「シャーロットは確かに女王様気質丸出しだったが、カリスタに送ったメッセージは……そうは見えなかった!
俺は刑事時代から、最悪な悪党を嫌と言う程見て来たが、シャーロットのメッセージこそ、本物のシャーロットのような気がするんだよ。
本物のシャーロットは、あのメッセージの様に、大切な“あの子”を失ったことを悔やんで生きて来た繊細な人間だと。
人前では女王様気質丸出しでいなくちゃならない程、繊細なのかもしれん!」
「それはアルコール依存症のせいでもあるわよね」とヴィヴィアンが口を開く。
「アルコールを飲めば、強気でいなくても良い。
でも、シャーロットは元々弁護士で、今はハリウッドのモデル事務所の社長。
そして、アルマン家の直系の人物だもの。
アルコールの匂いをさせて人前に出る訳にはいかないわ。
だから、アルコールを飲んでいる時の自分と、“人前での自分”を制御していると、自然と女王様のような振る舞いになるんじゃない?
彼女がアルマン家の人間で無ければ、『ヒステリックな女性』と言われていたんじゃないかしら?」
「その通りだ」とイーサンの低い声がする。
「問題はシャーロットの抱えている“罪悪感”にある。
犯人に協力する程の“罪悪感”だ。
彼女はその“罪悪感”の原因を、犯人にとことん追い詰められたのだろう。
もしくは、シャーロットはその“罪悪感”の原因で、犯人の心が打ち砕かれるのを見た。
自分の悲しみを越える、悲しみだ。
それに耐えきれず、酒に走った。
問題は、スイスでアルコール依存症の治療を受けても尚、アルコールを飲んでいることだ。
アルコール依存症患者を矯正する病院は生易しくない。
私物は全て、アルコールが入っていないかチェックされる。
化粧水一本でも、牛乳でも例外では無い。
アルコールが一滴でも混ざっていないか、必ずチェックされる。
そして、シャーロットは、矯正病院で指導されたであろう、数億円はする時計の下にゴムを付ける方法を今も実践している」
カリスタがタブレットに映る、シャーロットからのメッセージを見つめて言った。
「つまり――
犯人はアルコールでもシャーロットを支配していたのね。
きっと、ボイラーメーカーを教えたのも犯人だわ」
ベックが怒りを孕んだ声で言う。
「イーサン!
俺たちはどう動く!?」
イーサンの鋭い声が飛行機の中に響く。
「シャーロットのモデル事務所の家宅捜索令状は、S.A.G.E.ロサンゼルス支局とロス市警の連携により、既に取ってある。
彼女はS.A.G.E.の人間と接触中に自殺を図ったからな。
ベックとヴィヴィアンは、モデル事務所の家宅捜索を頼む。
但し、周りに悟られないように秘密裏に動け」
「了解!」とベックとヴィヴィアン。
「カリスタは、シャーロットがいつ目覚めても話せるように、病院で待機を。
シャーロットが目を覚ました時に、一番最初に見る人間が“君”でことが重要だ。
家族よりも先に、だ」
「ええ、了解よ!」とカリスタも即座に答える。
イーサンが、自分の横に立つエレノアに向いた。
「エレノア、君はまず、アルマン家の人間より先に、目覚めたシャーロットをカリスタに会わせるように家族を説得しろ。
カリスタの姿を見せても良い。
マスコミ対応はノーコメントを貫け。
もう、アルマン家が動いているだろうが、万が一に、な」
「了解です」と、エレノアが深く頷く。
イーサンが続ける。
「そして、出来ればシャーロットの自宅の“伝書鳩”を手に入れたい。
シャーロットにメッセージを運んで来た鳩だ。
既に犯人が、証拠隠滅の為に屋敷の人間に飛ばさせたかもしれないが、まだ犯人は、我々が伝書鳩の存在に気付いていないと思っている可能性の方が高い。
鳩は鳩小屋に納められているだけだろう。
だが今は、屋敷の捜索令状は取れない。
アルマン家の人間に、シャーロットからのメッセージを見せても良い。
そして、アルマン家の人間からYESを引き出せ」
「お任せ下さい」とエレノアが答える。
そして、イーサンは飛行機の端に座っているチャールズに目をやった。
チャールズが小さく頷き、エンターキーを押す。
その瞬間――
イーサンのタブレットにのみ、メールが送信された。
オラクル専用ジェットがロサンゼルス空港に降り立つと、ロサンゼルス支局の職員たちが出迎えに来ていた。
イーサンは車に向かいながら、話し出す。
「状況は?」
イーサンの短い問いに、支局員たちは一瞬答えに詰まると、一人の支局員が口早に言った。
「シャーロット・アルマンは無事です!」
イーサンが短く続ける。
「それは知っている。
それで?」
「シャーロット・アルマンは、胃洗浄を終え、現在点滴を受けて眠っています。
医師によると、目覚めるのは6時間から8時間後です!」
「家宅捜索の準備は?」
「完了しています!
あとは主任分析官の命令を待っています!」
イーサンが黒いSUVの後部座席に乗り込む。
慌てて、支局員の一人が運転席に、もう一人が助手席に乗り込んだ。
イーサンは静かに言った。
「今、支局長へ家宅捜索の戦略メールを送った。
支局長は、もちろん自分のデスクにいるな?」
「はい!」と助手席の局員が答える。
「よろしい。
では、今、アルマン家の“誰”にシャーロット・アルマンの“病状”を知らせ、それらの人間たちの“居場所”を全て報告しろ」
車内の空気が一段冷える。
イーサンは局員の報告を聞きながら、タブレットを見ていた。
それは、チャールズが送って来たアルマン家の“シャトー”の薔薇園の全て――
こまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)
次回も読んで下さると嬉しいです☆
毎日17時更新☆
Xはこちら→ https://x.com/himari61290
自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪




