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【完結】最強捜査官イーサン ――完全犯罪を暴く行動分析チーム《オラクル》  作者: 久茉莉himari


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35/41

【35】特別な亡霊を追う連続殺人犯。〜噴水を止めるほどの死〜

イーサンはチャールズの姿を認めると、即座に言った。


「ハーパー!

自分のオフィスに戻れ!」


その低く厳しい声は、イーサンのオフィスの空気を――いや、オフィスそのものをビリビリと震わせる。


ヴィヴィアンも、ベックでさえも――

言葉を失い、呆然とイーサンを見つめているだけだ。


チャールズは脱兎の如く駆け出して、イーサンのオフィスから出て行く。


イーサンは「失礼」とソファに座っている二人に向かって言うと、自分も足早にオフィスを出て行った。





イーサンがチャールズのオフィスに入ると、チャールズはラップトップのパソコンを抱えて、デスクに突っ伏していた。


「ハーパー、何をしている?」


その一言に、チャールズがキッとイーサンを見上げる。


「チーフが言ったんですよね!?

自分のオフィスに戻れと!

だから!

戻りましたッ!」


イーサンが小さく頷く。


「君は情報漏洩をするところだった。

ベックとヴィヴィアンの前で、見せるべきではない情報だ。

それは、彼らの仕事の範疇を越えている。

だから、戻れと言った。

理解出来たか?」


「……はぁ……」


チャールズがため息交じりに答えると、イーサンが続けた。


「……ハーパー……理解出来たのか?出来ないのか?

君は仕事の成果を出し、わざわざ俺のオフィスまで来たのに、なぜ、結果を教えない?」


チャールズがラップトップのパソコンを脇に置くと、何とか姿勢を正し、メインパソコンに向かう。


「理解出来ました!

実は……"シャトー"には一人、里子がいました!

この子です!」


パソコン画面には――

赤ん坊の写真が表示されていた。


イーサンの目が細まる。


「この子は……まだ一歳未満だな?」


チャールズが勢い良く答える。


「はい!

この子は八ヶ月の男の子の赤ちゃんで、アルマン家の門の前に捨てられていたんです。

そして、何とこの子を発見したのは、アルマン家のスーパーヒーロー、トラヴィスくん! 当時6歳!


この子は最終的に、住み込みの使用人で、アルマン兄弟の乳母達の一人、マーサ・グレイの里子になっています。

名前はセリア・グレイと命名されています!」


「成長過程の写真を出せ。

直近のセリアの写真は?」


イーサンの問いに、チャールズがため息を吐く。


「それが〜……何も無いんです!

この写真一枚見つけたのだって、掘って掘って掘り返して、やっと児童保護局の写真から見つけ出したんです!

その時に、先ほど話したセリアくんが里子になった経緯を知りました」


イーサンの鋭い声がする。


「社会保障番号は?

社会保障番号が無ければ、アメリカでは生きては行けない」


チャールズがパソコンキーを叩く。


「社会保障番号は出ます。

でも、写真は出ません。

それに、セリアくんは22歳で亡くなっています」


すると、イーサンが静かに言った。


「亡くなった場所はアルマン家の敷地内。

だが、詳細は非公開、だろ?

君でも追うことは出来ない」


チャールズがガバッと、後ろに立つイーサンに振り返る。


「その通りです……!

この俺でも、掘ったら逮捕されちゃうくらい厳重に情報は守られています!」


イーサンのアイスブルーの瞳が、研ぎ澄まされたナイフのようにギラリと光る。


「だが、これで一本の線に繋がった。


この赤ん坊はハニーブロンドに青い瞳。

シャーロットが8歳の時、トラヴィスは6歳。

その時、捨て子としてセリアをトラヴィスが見つけ出した。

しかも、保護し、アルマン家の使用人の里子にまでした。


一方、同時期に、執事は職を解かれ病院経営に回された。

そして――

シャーロットが30歳の時に、アルマン家の象徴の噴水が止められた。

その時、トラヴィスは28歳。

丁度、メディカルスクールを終えてレジデンシーも終え、正式に外科医になった頃だ。


その時に――

22歳でセリアがアルマン家の敷地内で亡くなっている。


そうなると――

セリアが亡くなった原因は、止められた噴水にある」


チャールズが慌てて口を開く。


「でも、チーフ!

使用人の里子が、噴水が原因で亡くなったからって、あのアルマン家が"シャトー"の象徴の噴水を止めますか!?

それに、噴水に繋がる水道管を撤去までして、水を出せなくしますか!?」


イーサンの口元に小さく笑みが浮かぶ。


その瞬間、チャールズの背中に悪寒が走った。


イーサンが静かに口を開く。


「つまり――

そのセリアは、アルマン家の中で、"シャトー"の噴水を止めるだけの力を持つ、特別な存在だった。


それに、シャーロットが12歳になった時に、修士号を持つ使用人が雇用されている。

この人物は、たぶん教師の資格を持っていた。

教師の殆どは修士号を持っているからな。


その時、セリアは4歳。

幼稚園に入る年頃だ。

アルマン家は、どうやら"使用人の里子"のセリアに、最高の教育を受けさせたかったらしい。


トラヴィスは10歳。

もう、寄宿生活を始めていてもおかしくない。

なんと言っても、彼はアルマン一族の中でも、世の中でも、飛び抜けて優秀だ。

家庭教師も、既に必要なかっただろう」


イーサンはそこで一旦言葉を切ると、厳しい声で続けた。


「連続殺人犯、及び殺人教唆、セシルのストーカーはトラヴィスで間違いないだろう。

そして、彼が追い求めている『理想の相手』は、セリアだ。

彼は"特別な亡霊"を追いかけている。


彼の動機は、セリアの亡霊と一緒に過ごしたいんだ。セリアのように大切にして、な。


だが、セリアという理想から外れるのは我慢ならず、最悪の方法で始末する。

そして、セリアに拘る余り、直接手は下せないから、ヘロイン入りの飲み物で殺害し、死体発見まで早めている。


つまり――

そのセリアには、今までの拉致監禁の末の殺害という犠牲者たちやセシルとは、外見や教養、育ちとは全く違う、トラヴィスが"真に求める何か"が必ずある。

君は、そのセリアと被害者達とセシルとの違いを徹底的に探せ!」


チャールズが「アッ……アイアイサー!」と答えると同時に、イーサンのスマホが鳴った。


「失礼」と言って、イーサンがスマホに出る。


相手はカリスタだ。


カリスタは口早に言った。


「女王様からSOSのサインがあったわ!」


「彼女は何と?」


シャーロットからのメッセージは、次なる予兆の合図――

こまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

次回も読んで下さると嬉しいです☆

毎日17時更新☆


Xはこちら→ https://x.com/himari61290

自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪


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