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【完結】最強捜査官イーサン ――完全犯罪を暴く行動分析チーム《オラクル》  作者: 久茉莉himari


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28/41

【28】ボイラーメイカーを飲む女王と、患者を駒にした男。〜使用人を探る理由〜

ベックが苦笑して、チャールズに答える。


「仕方ねぇだろ。

突然、捜査権がロス市警に移ったんだから。

担当刑事もリストになる情報は持ってたし」


チャールズが悔しそうに言う。


「そう!

あのスイスの病院、ペンタゴン並の厳重さで!

でも、あとちょっとで侵入ってとこでチーフから連絡があって、パーカーの事件に取り掛かる事になったんだよね〜!」


その時、イーサンの鋭い声がした。


「それだ!

ハーパーが調べると意気込んでいたが、スイスのセレブ相手の病院ともなると、ペンタゴン並の厳重さだ。


だから、俺はパソコンのデータより、脇道を使う方が早いかも知れないと関係各所に連絡を入れていた」


ベックが声を上げる。


「確かに!

その後の17時に、イーサンから次の事件へ行くことが決まったと言われたんだ……!」


イーサンの目がナイフのようにギラリと光る。


「あのパーカーの事件で得をしたのは誰だ?

そう――

シャーロット・アルマンだ。


スイス行きの理由を知られなくて済む。

だが、シャーロットは弁護士でモデル事務所の経営者。

精神科医じゃない」


カリスタが静かに言った。


「弟は医者ね。

トラヴィス・アルマン。

外科医にして、精神科医だわ」


ヴィヴィアンが腕を組むと、天井を睨み付けるようにして口を開く。


「つまり、二人はグルなのね。

最後の被害者のランディは、シャーロットの事務所のモデルだった。


シャーロット程のモデル事務所を構えていれば、他の事務所でもトラヴィス好みのモデルを見つけることも出来る」


「だがなあ……」とベック。


「トラヴィスが、連続殺人犯だと仮定して、セシルのストーカーになったのは分かる!

今までの被害者達の容姿、性格、生活スタイル、教養、その全てがセシルという“最高の理想の相手”に繋がるからな。


でも、トラヴィスなら一人で拉致監禁くらい出来るだろ?

現に、あの天才セシルはトラヴィスの指示に従ったんだ。


じゃあ、シャーロットの役割は何だ?

シャーロットは馬鹿じゃない。

しかも、女王様気質の性格だ。


なぜ、弟のトラヴィスの手伝いをするんだ?」


「――つまり、家庭の問題」


その、イーサンの低く厳しい一言に、全員がイーサンを凝視する。


「ランディの追悼の会を思い出せ。

シャーロットは、ボイラーメーカーを飲んだ。


アルコール問題を抱えている人間がいる屋敷に、まず、ボイラーメーカーを作れる酒を置くか?

答えはNOだ。


アルコール依存症患者は、治療を受けても、一滴でも酒を飲めば元に戻る。

それを、トラヴィスが知らない筈が無い。


そして、なぜ、シャーロットがボイラーメーカーを飲むんだ?

上流階級の人間が、ボイラーメーカーというカクテルを選択する意味は?


シャーロットはボイラーメーカーを飲み、セシルの前で、高価な皿を割るという愚行に出た。

つまり、シャーロットのアルコール依存症は克服されていないし、それをトラヴィスは止めていない。


寧ろ、シャーロットの希望からかはまだ分からんが、早く酔えるように、アルマン家の人間が口にすることも無い、ボイラーメーカーを勧めた可能性もある」


すると、カリスタが力強い口調で言った。


「やはり、シャーロットが弁護士を辞め、酒に溺れ、スイスにまで行って治療することになった要因が、この二つの事件の原因ね」


イーサンは凍るようなアイスブルーの瞳で全員を見渡し、告げた。


「いや。

事件は三件になった。


ハリウッドの連続殺人犯。

テリー・パーカーを操っていた真犯人。

――そして、セシルを自ら動かし、手の内に入れたストーカーだ」


静まり返る会議室。


イーサンが続ける。


「シャーロット・アルマンに聴取するのは、不可能だ。

我々のプロファイルだけで、彼女を聴取することは出来ない。

アルマン家のお抱え弁護士団が、シャーロットを守るだろう。


証拠がいる。


そして、トラヴィス・アルマンも同じく。

例え、テリー・パーカーを駒として動かしていたとしても、もはやパーカーの証言だけでは、トラヴィスに事情聴取は出来ない。


セシルのスマホの留守番電話もそうだ。

トラヴィス程の切れ者と、アルマン家の弁護士なら、答えは無数にある。


『自分もボランティアで精神科医の会合に出席していて、偶然アシュリー捜査官のお母様のことを知った。

だが、アシュリー捜査官が隠したがっていることも知ったので、負担にならないように第三者を装った』などな。


それこそ、相手を思いやる“立派な医者”に早変わりという訳だ」


ベックが悔しさを隠そうともせずに言った。


「クソッ……!

じゃあ捜査はどん詰まりか!?」


イーサンが、一言答える。


「ハーパー」


チャールズが椅子から飛び上がるようにして言った。


「ハイッ!チーフ!」


「今朝、オラクル本部に掛かってきた、『宇宙人をあと何人確かめたいか知りたいのなら、今すぐオラクルを辞めて、セレニス国際空港に行け』という声は、繋ぎ合わされていないな?

セシルの最後の留守番電話にあった、フィルターを繰り返し掛けていた声とも違う。

――カフェにそぐわない人物はいたか?」


「特には!

今、顔認証に掛けています!」


「では、それが終わったら、この音声を最優先で解析しろ。

君は、自分のオフィスに戻れ」


「ハイッ!」と言って、チャールズが会議室から出て行く。


ヴィヴィアンが、イーサンを真っ直ぐに見て口を開いた。


「じゃあ、私たちは何をするの?

エレノアが、リッチモンドからパーカーの証拠品の全てをここに運ぶまで。

チャーリーにトラヴィスの行方を追って貰う方が良いんじゃない?」


イーサンの口元が僅かに上がる。


「俺たちだって、パソコンは使える。

ハーパー程では無くとも」


カリスタが瞳を見開く。


「つまり……シャーロットが弁護士を辞めたのと同時期から、スイスに行くまでに、セシルそっくりの人間を喪失した可能性を探るのね……!」


「そういうことだ。


ベック、ヴィヴィアン。

君たちはアルマン家の実家の使用人の雇用状況を調べろ。

アルマン家には、住み込みの使用人もいることを忘れるな」


ベックが首を傾げる。


「使用人?

家族じゃないのか?」


イーサンが即座に答える。


「そうだ。

シャーロットとトラヴィスが、“一緒”に一番長く過ごした場所は?

自宅の屋敷だ。


そして、アルマン家の人間に、不審死などの記録は無い。

消去法で行くと、使用人が絡んでいる可能性がある」


ベックが、ビー玉のような薄いブルーの瞳をグリグリと動かし、言った。


「了解!

ヴィヴィアン、行こうぜ!」


ヴィヴィアンも立ち上がり、「ええ!」と勢い良く言うと、会議室を出て行く。


カリスタが静かに微笑む。


「では、私は?」


イーサンが自分のタブレットの画面を、カリスタに向ける。


カリスタは「あっ……!」と小さく声を出した。


「君は彼女とハリウッドでランチを食べて来てくれ。

場所と時間はタブレットに送った」


イーサンの言葉に、カリスタが「了解!」と答えると、足早に会議室を出て行く。


イーサンは、バッグから衛星電話を取り出すと、短縮ボタンを押す。


「はい!何でしょう!?」


チャールズが直ぐに衛星電話に出る。


イーサンが命じたことは、音声認証よりも、遥かに大事な一手だった――

こまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

次回も読んで下さると嬉しいです☆

毎日17時更新☆


Xはこちら→ https://x.com/himari61290

自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪

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