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【完結】最強捜査官イーサン ――完全犯罪を暴く行動分析チーム《オラクル》  作者: 久茉莉himari


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23/41

【23】46回の電話の意味。〜静かな夜に張り詰める警戒〜

イーサンが足早にリビングに戻ると、セシルはソファに寝転びながら、到着時に図書館から持って来た古書とは別の古書を読んでいた。


ズラリと古書がテーブルに並んでいる。


それを見て、イーサンは図書館のあるこの別荘を選んで正解だと思った。


セシルがイーサンの姿を見ると、ガバッと起き上がる。


イーサンが「そのままで良い」と一言告げると、セシルが言った。


「情報はまだ届かないんでしょうか?」


イーサンはセシルの目を見て答える。


「まだ何も連絡は無かった。

取り引きの時間は、我々には知らされない。

つまり、いつ情報が届くかは分からない。


君は待機することに慣れていないだろうが、現場では"待つ"ことの方が"動く"よりも遥かに多い。

慣れるんだな」


セシルがにっこりと微笑む。


「ここには図書館がある!

僕なら直ぐに慣れます」


イーサンが淡々と告げる。


「そうか。

では、私は仕事を続ける」


そうして、イーサンは一人掛けのソファに座ると言った。


「君はリラックスして、待っていてくれ。

ここに訪問者があれば、どんな形にせよ、書斎からでも分かる。


その時は、まず、俺が外に出て、情報を受け取る。

君は、ここから一歩も出るな。


リビングから出る時は、図書館に行くか、寝室に行くかのどちらかにしろ」


「はい!」


イーサンは、セシルがまた古書を読み始めるのを確認すると、タブレットに向かった。


そして、午後4時。


イーサンは「書斎に行く」とだけセシルに告げると、書斎に入り、鍵を掛けた。


そして、衛星電話の短縮ボタンを押すと、直ぐにチャールズが出た。


「チーフ!

今、電話しようと思ってたんです!」


明らかに焦っているチャールズに、イーサンが冷静に問う。


「何かあったか?」


「あったと言えばあるし、無いと言えば無い!

兎に角不気味で、パンダの赤ちゃん動画が観たくなっちゃう!

もーこの際、パンダの赤ちゃんじゃなくてもキリンの赤ちゃんでも……」


「……ハーパー……」


イーサンの低い一言に、チャールズがハッとした顔になる。


「すみません!

実はあの後、46回もセシルのスマホにあの使い捨て携帯から着信があったんです!

留守番電話に切り替わると、メッセージは残さず切ってますけど!


移動しながら掛け続けていたので現在地は不明ですが、基地局は変わらずミネソタのロチェスターです!」


イーサンの厳しい声が響く。


「46回か……普通の精神状態で、そこまでは出来ない。


それに犯人は、セシルに執着する余り、自分がどう思われても良いと思っている。

いくらセシルの信頼を得ているとはいえ、そんな行動を取れば、セシルの信頼は崩れ、不信感どころか恐怖を抱くだろう。


焦りどころじゃない。

犯人は、セシルが電話を無視していることに怒りを持った。

そして、セシルを手に入れることを諦めていない。

極めて危険な精神状態だ」


すかさずチャールズが口を開く。


「ですよね!

ところが、もっと不気味なのが、この2時間というもの、ピタッと電話が止まったんです!


なりふり構わず電話しまくってたのに!

まさか、別荘の場所を割り出して、そちらに向かってるとかじゃ無いですよね!?」


イーサンがキッパリと答える。


「それは無い。

まず、この別荘の場所は持ち主の関係上、FBIの人間でも割り出せない。


それに、この別荘の場所を割り出せる能力があるなら、とっくに行動に移している筈だ。

46回も電話を掛けるなんて、馬鹿馬鹿しい真似はしないだろう。


問題は、犯人の精神の破綻が進んでいて、次の行動が予測出来ないことだ」


すると、チャールズが不安気に言った。


「セシルを手に入れること、以外は……?」


イーサンが即答する。


「そうだ。


だが、犯人がミネソタのロチェスター近辺に留まっていることは、何かしらの計画をロチェスターで立てているとしか思えない。


犯人にとって、ロチェスターで一番利用価値があるのは、セシルの母親しかいない。


しかし、母親に近付けないことは犯人も分かっているだろうし、支局の潜入捜査員からも不審人物の報告は無い。


そして、犯人の精神破綻が進んでいれば、病院で何らかの無謀な行動を起こす可能性がある。


だから今は、セシルの母親を守り、セシルへの通信記録を地道にチェックするしか無いんだ。

ハーパー、頼んだぞ」


イーサンの確信に満ちた声に、チャールズがホッと息を吐いて答える。


「了解です!

では、また!」


そして、いつもの様にハーパーから通話がブチッと切れた。





イーサンが書斎からリビングに戻ると、セシルの姿も、セシルが図書館から持ち出した古書も無かった。


「セシル!」


イーサンの鋭い声が、リビングに響く。


イーサンはホルスターの銃に手を掛け、音もなくリビングを出ると、まず、図書館に向かった。


そこにもセシルの姿は無い。


そして、二階のセシルの寝室へ。


そこにも、セシルはいない。


イーサンが足早に一階に戻る。


すると――

セシルがキッチンから出て来た。


セシルは丸みがかったアーモンドアイの青い瞳を、まん丸にしている。


「チーフ?

どうかしましたか?」


「君こそ、何をしている?

俺の指示を忘れたか?」


セシルがキョトンとして答える。


「本を図書館に返して……チーフがまだ戻られないから、キッチンに行ってみたんです。

僕が手伝えることがあるんじゃないかと思って」


イーサンの目がギラリと光る。


「君のボスは、誰だ?」


「……え……あの……僕は、ただ……」


しどろもどろになっているセシルに、イーサンが再び言った。


「君のボスは誰だ?」


セシルがポツリと答える。


「……チーフです……」


イーサンが厳しく告げる。


「それが分かっているなら、命令に背くな。

ここにはバカンスに来たわけではない。


食事の用意は俺がする。

君はリビングか、図書館か、寝室にいろ。

二度は言わない」


「……了解です……」


セシルがしょぼんとして、リビングに向かう。


イーサンはセシルと入れ違うように、キッチンへと歩いて行った。





それから二人は静かに食事を取り、セシルは「9時に丁度に一番綺麗な満月と湖の写真が撮れるので、寝室に行きます」と言って、ダイニングルームを出た。


イーサンは、セシルが寝室に入るのを見届けると、セシルの寝室の前に椅子を置き、銃と衛星電話を手に、セシルの寝室の扉の前に座っていた。


そうして、衛星電話は鳴ることも無く、イーサンが銃を抜くことも無く、翌朝になった――

こまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

次回も読んで下さると嬉しいです☆

毎日17時更新☆


Xはこちら→ https://x.com/himari61290

自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪

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