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【完結】最強捜査官イーサン ――完全犯罪を暴く行動分析チーム《オラクル》  作者: 久茉莉himari


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19/41

【19】最強捜査官の周到な布石。〜罠を逆手に取る夜〜

そして終業時刻近くになると、ベックがチャールズのオフィスにやって来た。


もうドアには貼り紙も無いし、鍵も掛かっていない。


ベックがドアをノックすると、チャールズの「どうぞ〜!」というご機嫌な返事が返ってくる。


「よう」と言いながらベックが現れると、チャールズがパチンとウインクして言った。


「どしたの?」


ベックがビー玉のような薄いブルーの瞳で、ギロッとチャールズを睨む。


「無駄にバサバサのまつ毛でウインクするな!

それよりも……セシルのこと!

分かってるんだからな!」


チャールズの笑顔がギクッと固まる。


ベックがフンと鼻を鳴らし、続ける。


「ほらな。

今夜はお前の相談に乗って貰うんじゃ無くて、お前がセシルの相談に乗る気じゃねぇのか?」


チャールズが必死に笑顔を保って答える。


「そんなこと、しませーん!

だいたい、セシルに悩みなんて無いだろ!?」


「いや……お前、朝からずっと挙動不審だぞ?」


ベックにずいっと顔を近付けられて、チャールズが仰け反ると言った。


「はいはい、分かった!

白状します!

実はコミコンの衣装の打ち合わせをしたいんだよ!


毎年セシルに付き合って貰ってるからさ〜。

世界観を合わせたいんだよ!……って分かる?


でも、皆にはナイショだよ!?

セシルはともかく、テクニカルアナリストって直ぐにオタク判定されるから!」


途端にベックがワハハと笑う。


「なるほどなー!

コミコンか!!

じゃあ今夜は良いチャンスってとこか!」


「そうそう!

セシルが嫌がっても、今夜は逃げられない!

だろ?」


「あんまり苛めんなよ。

精々カッコよく決めろよ、"超有能"なマーメイドくん!」


「とーぜん!」


チャールズの答えに、ベックがニカッと笑ってオフィスを出て行く。


ドアが静かに閉まると――

チャールズが「はあぁぁ〜……」と深いため息をついた。





20時。


まだオフィスに居るイーサンのスマホが鳴る。


イーサンは画面を見ると、直ぐに電話に出た。


「ハーパー、セシルはどうだ?」


チャールズが即答する。


「大丈夫です。

何も気付いていません。


今のところ、誰からも連絡はありませんし、食事も手作りにして、誰も部屋に入れていません!」


「そうか。

手数をかけたな」


イーサンの静かな声に、チャールズが明るく答える。


「いえいえ!

昼間買い物しておいた物と、作り置きでちゃちゃっと済ませたので。

打ち合わせ通り、セシルは今バスタイムです」


イーサンの冷静な問いは続く。


「警察のパトロールは確認出来たか?」


「ええ!

これでもかってくらいアパートの前を通ってくれてます!」


「良し。

どんな些細な事でも、危険だと思ったら直ぐに通報しろ。

俺にでも良い」


チャールズがキッパリと答える。


「分かってます!


それから、セシルのスマホに何らかの着信があれば、全て記録すると同時に、チーフのスマホとパソコンに送信する準備も出来ています!


俺のオリジナルの暗号化システムで送信しますから、ハッキングは絶対出来ません!」


「ありがとう、ハーパー」


そう、イーサンは言うと、一拍置いて告げた。


「それと念押しになるが、セシルに不審な行動があったとしても、君は観察するだけにして口出しするな。

自然に行動させるんだ。


但し、俺が迎えに行くまでに、セシルが君の部屋を出ようとしたら、どんな手を使ってもセシルを君の部屋から出すな」


「了解です!

それに、もしセシルが部屋を出ようとしても、絶対に出られない準備はしてありますからご安心下さい!」


イーサンが小さくフッと笑う。


「そうか。

聞くのが怖いな。

方法は君に任せる。

何かあったら連絡を」


「アイアイサー!」


そしてブチッと通話が切れたスマホに向かって、イーサンが「頼んだぞ」と呟いた。





一方、チャールズは――

風呂上がりのセシルに、レモンとライムのスライスとミントの葉が浮かんだ、透明な液体がたっぷり注がれたグラスを差し出していた。


「何これ?」


小首を傾げるセシルに、チャールズが得意満面で答える。


「俺の特製のサングリアブランカ!

美味いぞ〜!

白ワインを炭酸で割ってるからアルコール度数も低いし、ビタミンもたっぷり!」


セシルが感動した面もちでグラスを受け取る。


グラスは冷たくて、火照ったセシルの手の平をひんやりと冷やす。


「チャーリーって本当に料理上手なんだね!

知らなかった!」


「まあな。

お前が知らない俺の魅力は、まだまだあるよ〜♪

聞きたい?」


「……えーと……まず、これ飲んで良い?」


「ど・う・ぞ!」


セシルがストローに口を付ける。


そうして、ごくごくとサングリアを一気に飲み干し、セシルが笑顔で言った。


「美味しい!

初めての味だよ!

どうやって作るの?」


「秘密に決まってるじゃん!

良い男に秘密は付き物なんだよ!」


「おかわりある?」


「あるある!」


セシルから空のグラスを受ける、チャールズの瞳がギラッと光った。





「セシル、8時だよ!

チーフは9時に迎えに来るんだろ!?」


セシルがパチッと瞳を開ける。


セシルはチャールズの部屋のソファで、クッションを枕にして寝ていた。


「……僕……どうしたの?」


セシルがブランケットをモゾモゾと捲る。


チャールズが呆れた様子で、お手上げポーズを取る。


「お前なー!

俺の特製サングリアを、たった三杯飲んだだけで眠っちゃったんだよ!?

コミコンの衣装の打ち合わせしたかったのにー!」


「……え?

そうなの?」


キョトンとしているセシルに、チャールズが勢い良く続ける。


「そうだよ!

それでも心やさしいこのお兄さんが、クッションとブランケットをセットして寝かせてやったの!

よっぽど疲れてたのか?」


セシルがうーんと考える。


「別に疲れてないよ。

元気だし」


「じゃあ頭の中は?」


チャールズの問いに、セシルがぐっと詰まる。


実はセシルは、トラヴィス・アルマンに書類と地図を見せられてから、ずっと脳をフル回転させて『脳内』で解析していたのだ。


ところが、どう解析しても答えが出ないでいた。


それで通常の仕事をしながら解析をし続けていたという訳だが、当然それはチャールズには話せない。


だが、嘘もつけなくて、セシルは「疲れてたかも」と小声で答えた。


チャールズがウンウンと頷きながら言う。


「仕事が忙しいからな〜!

お前、現場に出たの初めてだし!」


「うん、まあ……」


「……ふ〜ん……」


モゴモゴ言っているセシルに、チャールズが腕を組む。


「実はさあ、あのサングリア、神経をリラックスさせるハーブが数種類入ってたんだよね〜!」


「そうなんだ……!」


大きな青い瞳をパチクリとさせるセシル。


「もちろん薬物とかじゃ無いぜ?

ただのハーブ!

でも、ハーブがそれだけ効いちゃうってことは、お前、相当考え事してたんじゃない?


まあ、俺にはお前の脳の機能は理解出来ないけどさ!」


「そ、そうかな……」


セシルはそう言うと、ガバッと立ち上がった。


「そう言えば……!

チャーリー、さっきチーフは9時に迎えに来るって言ったよね?

なんで!?

僕、そんな約束してないよ!?」


チャールズが頭を抱える。


「お前……俺が思ってたより、よっぽど酔ってたんだな……!

スマホを見ろ!」


チャールズがテーブルに置かれたセシルのスマホを渡す。


そこには、イーサンからのメッセージがあった。


『丁官からの要請により、明日、君と私で急遽出張になった。

朝、9時にハーパーのアパートメントに迎えに行く。

君の出張バッグを私が持って行くから、特に用意する物はない』と。


そして、セシルが返信している。


『了解しました』と。


「えー……全然覚えてないよ……」


不思議顔になっているセシルに、チャールズがビシッと指を差す。


「お前さあ……俺にも言ってたよ?

明日からチーフと出張だー、朝9時に迎えに来るーって!

この酔っぱらい!


シャワー浴びて来いよ!

着替えはお泊りセットにあるから!」


セシルが「ありがとう!チャーリー!」と言いながら、バタバタと浴室に走って行く。


チャールズはセシルの姿が見えなくなると、力が抜けてへなへなとソファに座った。


そして、9時丁度に、チャールズのアパートメントのインターフォンが鳴った。

こまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

次回も読んで下さると嬉しいです☆

毎日17時更新☆


Xはこちら→ https://x.com/himari61290

自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪

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