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【完結】最強捜査官イーサン ――完全犯罪を暴く行動分析チーム《オラクル》  作者: 久茉莉himari


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16/41

【16】封印された記録の中にいた、宇宙人を探す男。〜妄想を正当化する理由〜

「セシル、座れ。

それで?」


イーサンにそう言われ、セシルがシートにすとんと座ると、早口で話し出す。


「まだ検死結果を見てみないと断定は出来ないけど、きっと母親は20ヶ所も刺されていない。

母親は巻き添えです。


今までの被害者達は、玄関の鍵を自分で開けて家に入ろうとした時、犯人が一緒に家に入ったんだ!」


カリスタが目を見張る。


「だから……侵入経路の痕跡がないのね……!」


セシルはコクンと頷くと、話を続ける。


「そう!

ここまで重度の無秩序型の犯人なら、どんな手段を使ってでも家に入る筈だ。


でも、『玄関の鍵を一人で開けて家に入る子供』がターゲットだったら?


今回は母親が居たので巻き添えになった。

つまり、計画を立てていない。


きっと使命感に駆られて近所を車で流し、『玄関の鍵を一人で開けて家に入る子供』を見れば、犯人は犯行を実行に移すんです」


イーサンが立ち上がる。


「よし。

警察から、狙われている子供の特徴を住民に大至急伝えてもらおう。

検死結果が出たら、プロファイルの発表だ」





オラクルがリッチモンド警察に到着すると同時に、検死報告書が届いた。


母親は心臓を一突きされていただけで、子供は20ヶ所以上刺されていた。


死因は失血死。


オラクルは直ぐ様、プロファイルを発表した。





『犯人は20代半ばから30代半ばの白人男性。

10代前半から精神疾患を患っており、何らかのストレス要因が起こり、今回の犯行に及んだ。


この犯人は無秩序型に分類される。

犯人は犯行を隠しておらず、計画性は無く、突発的だ。


その証拠の一つに、犯行現場に同じ車で人目の付く場所に停車させている。

そして、血の付いた靴で、乗って来た車に戻っている。


それと犯人は、自分自身の妄想に当てはまる子供が居れば、直ぐに犯行を行うことから、突発的と言える。


犯人の妄想を満たす相手は『玄関の鍵を一人で開けて家に入る子供』だ。

そして、子供が家の玄関を開いた時、子供と共に家に侵入し、犯行を行う。


4件目の母親が殺害された件は、犯人にとっても予想外だっただろう。

だが、犯人の妄想に母親は含まれていないので、一発で仕留めた。


指紋やDNAが発見されなかったのは、犯人の妄想に、手袋や帽子、パーカーを被ること等が含まれている可能性が高い。

スキンヘッドの可能性もある。


長年抱いていた妄想を短時間で実行に移していることから、強迫性障害も考えられる。


そして、これ程深刻な精神障害を患った人間が仕事に就く事は不可能だ。

よって犯人は無職。


だが、このような人間と一緒に暮らせる人間はいないに等しい。

つまり、近しい血縁者と暮らしているか、一人暮らしだ。


住居は犯行現場から30キロ以内と推定される。


この犯人は、逮捕されるまで殺し続ける。

以上を踏まえて犯人確保に当たってくれ。


それから、この犯人は血で汚れる事を気にしない。

ただ、20ヶ所以上刺せば犯人も血塗れになる。

だから着替えはしただろうが、完全に血痕を消すことには無関心だ。


犯人の車の中もゴミだらけだろう。

ホットラインを設置して、20代半ばから30代半ばの白人男性で、血の付着した状態の人物を目撃した場合、直ぐに連絡をしてもらうように、マスコミを使って住民に呼びかける。


マスコミ対応は、オラクルのグラントが全てを仕切る。

以上だ』


ホットラインの電話が、途切れる事無く鳴り響く。


だが殆どは、恐怖に駆られた地元住人からの問い合わせだ。


リッチモンド警察署は、24時間体制でパトロールを強化しているが、怪しい人物が居ないどころか、人通りも殆ど無い状態だ。


それに、プロファイルに合う人物も見付からない。


次の子供の死を告げる電話が鳴るのを待つしか無いのかと、リッチモンド警察とオラクルのメンバーが絶望しかけた時、チャールズの『超有能を証明する』が実現したのだった。





オラクルのメンバーだけしかいない会議室に、チャールズの声が響く。


「皆、よーく聞いて!

リッチモンドに、プロファイルに当てはまる人物がいた!


『前歴の無い20代半ばから30代半ばの無職の白人男性』の中に、一人怪しい人物がいたんです。


名前はテリー・パーカー。

年齢は28歳。


彼の母親は弁護士。

彼は一人息子です。

父親は、彼が生まれて直ぐに交通事故で亡くなった。


そこからが、この俺の超有能なところの見せ所なんですけど、テリーはなんと少年院に入ってたんですよ!」


「まさか!

そんな記録はどこにもねぇぞ!」


ベックが声を上げると、チャールズが余裕たっぷりに答える。


「でっかいベビーフェイス!

俺の超有能さを証明しろって言ったのは、そっちだろ?

黙って聞いて!


それで、その理由が12才の時、同級生をナイフで刺したからなんです。

しかも、二人!


一人目は工作の授業中で、被害者は肩を浅く刺されただけで、かすり傷みたいなものだったから示談で済んだ。


でも二人目は、傷こそ浅かったけど、被害者を三ヶ所も刺してる。

しかも放課後、被害者の家の敷地で待ち伏せしていた。


それで前歴もあるって事で少年院送りになったんだけど、たった一ヶ月で出所しています!

理由は精神疾患の治療の為。


一件目の事件の示談や、少年院からたった一ヶ月で出られたのは、母親が弁護士としてフルに立ち回ったから!


そしてテリーが18才になった時、母親は全ての記録を抹消させるべく上院議員に働き掛けて、それが大成功!

裁判所の記録は抹消された。


でも、ここからですよ!

少年院に入っていた時も、テリーは精神的に危険人物と言うことで、精神科病棟に移されていた期間があったんです。


その記録は抹消されずに『封印』されていた。

そして俺の超有能さで、封印を解いて情報を得たってワケです!」


イーサンが鋭い声で問う。


「その中身が、今回の事件に結び付くんだな?」


チャールズがパソコン画面の中で、大きく頷く。


「そうです!


まずテリーは極度の潔癖症。

少年院に入るまでは、母親の言いなりの、いわゆるアメリカンな少年だったけど、少年院に入ると、頭を不潔だからと丸刈りにした。


それから精神科病棟に移されると、頭と全身の体毛を剃りたいと言い出し、その上、使い捨ての手袋を嵌めたいと何度も医師に訴えています。


どれも認められませんでしたけど、1日に平均13回も訴えていたと記録にあります。


それで医師が、少年院に来るまではどうやって生活していたのか本人に訊いたところ、テリーはアルコール消毒薬を手放さなかったと答えています。


そして、なぜ同級生を刺したのかという問いには、同級生が宇宙人と入れ替わっているから、排除しなくてはならないと、父親が天国から命令しているという独特過ぎる持論を展開しています。


ナイフを使うのも、赤い血が流れるか確認する為だと。


では宇宙人をどうやって見分けるかという問いには、子供なのに一人で家に帰る人間だと答えています。


正確には、

『ママが教えてくれたんだ。子供を一人で家に帰すなんて宇宙人でもしないわって。つまりその子が宇宙人だから一人で家に帰るんだ。』

です。


それを受けて医師が母親にその件を訊いたところ、テリーには仲良しの幼馴染が二人近所にいて、その二人はスクールバスを利用していたんですが、テリーもスクールバスを利用したいと母親にしつこく訴えたけど、母親は危険だからと拒否したくて、学校からの帰り道で一人で鍵を開けている子供を車の中から見た時に言ったそうです。


まさか真に受けるとは思わなかったとも。


テリーは最後まで認めませんでしたが、医師によると、テリーは幼少期に小動物を虐待していたと推測されています。


但し、幼すぎて、何故自分がそのような行動を取るかは理解していなかった。


しかし成長し、思春期に差し掛かり、そんな自分が汚らわしいと自覚すると同時に、小動物を虐待していた時の快感を自覚した時から潔癖症が始まった。


そうして精神疾患が進行して行く途中で、母親という絶対的な存在から、『人を傷つける為の絶好の理由』を貰ったと診断されています。


ですが、この医師のお陰で、テリーは薬を服用し、カウンセリングを受けながら大学も順調に卒業して、電気科学の分野の研究員として大手家電メーカーに就職もしています。


ですが三ヶ月前に母親が事故死し、それ以来休職しています」


すると、ヴィヴィアンが口を開いた。


「父親と同じ交通事故なのね……。

それがストレス要因だわ!」


ベックが「テリーは実家を出たことは有るのか?」とチャールズに訊く。


チャールズが即答する。


「無い!

学生寮にすら入ってない!」


イーサンが厳しい声を出す。


「ストレス要因だけじゃ無い。


それまで薬の管理や、カウンセリングに送り出していた母親も居なくなった。

テリー程の妄想を抑えて普通の社会生活を送らせる為に、母親は何でもしていた筈だ。

裁判所の記録を揉み消したくらいだからな。


母親の事故死のストレス要因と、治療を止めた事で、テリーは一気に妄想の世界に戻ったんだ。


テリーの家は何処だ?」


「今、送りました!」とチャールズが再び即答する。


イーサンが全員を見渡し、告げる。


「良し。

俺とカリスタとヴィヴィアンとベックは、警察と共にテリーの家へ。


セシルは此処でチャールズの報告を纏めろ。

追加のプロファイルがあれば、直ぐに俺に連絡を」


その瞬間、全員が立ち上がった。

こまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

次回も読んで下さると嬉しいです☆

毎日17時更新☆


Xはこちら→ https://x.com/himari61290

自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪

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